【2015年12月14日 ガオ(マリ)発】
©UNICEF |
紛争で両親を失い、通っていた学校が閉鎖されたマリ北部で暮らす女の子。3年間もの長い間を失っていた女の子が、ユニセフが支援する学習プログラムを通して、再び学びの場に戻ることができました。ユニセフ・マリ事務所の井本直歩子教育担当官が、現地の子どもたちの様子を報告します。
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マリ北部、ガオの町にある自宅に爆弾が落とされたとき、アダウラちゃんはたった8歳でした。爆発で両親を失ってからというもの、長い間、アダウラちゃんは誰とも言葉を交わすことができませんでした。
マリ北部で政府と分離独立派グループとの紛争が起こった2012年、アダウラちゃんが通っていた学校は休校に追いやられました。この紛争で何万人もの人々が自宅からの避難を強いられ、以前から食糧不足や栄養不良、疫病、干ばつ、慢性的な貧困に苦しんでいたコミュニティの状況は更に悪化しました。
その後学校は再開されましたが、アダウラちゃんは再び学校に戻ることができませんでした。両親の代わりにアダウラちゃんの面倒をみているおばあさんには、勉強を続けるための費用を工面することができなかったのです。アダウラちゃんは学校に通う代わりに、自宅で家事を手伝っていました。
「学校に行きたいと、いつも思っていました」と、アダウラちゃんが話します。
© UNICEF Mali/2015/Dicko |
数カ月前、村長がアダウラちゃんのおばあさんの元を訪れ、9カ月間参加することのできる学習コースを紹介しました。コース修了後には、再び学校に通う道も開かれています。
アダウラちゃんにとって、これ以上に嬉しいことはありませんでした。
現在11歳になるアダウラちゃんは、いつも教室の後ろの方に座って授業を受けています。「あまり口数が多い生徒ではありませんが、学校にいられるだけで幸せだということが伝わってきます」と先生が話します。「アダウラちゃんの両親を以前から知っていましたから、アダウラちゃんが学校できちんと勉強をできるようにしてあげたいのです。とても頭がいい子なので、いい成績を取ってくれることでしょう」
ユニセフの『Every Child Counts (だれもが大切な“ひとり”)』キャンペーンの一環として行われたこの学習プログラムには、紛争の影響を受けた地域で暮らす4,500人の学校に通うことができない子どもたちが参加しています。
このプログラムで、8歳~12歳の子どもたちが再び学校に通う機会を得ています。
アダウラちゃんのクラスメイトのアラケイトちゃん(10歳)は、ナイル川を丸太船で渡って学校に通っている12人の生徒のうちの一人です。
「アラケイトは病気で何年も学校に通うことができませんでした」と、アラケイトちゃんの母親が話します。「それに不安定な治安のなか、川を渡って学校に通わせるなど、怖くてできませんでした」
学校に再び戻ることは、長い間学校に通うことができなかったアダウラちゃんやアラケイトちゃんにとって、非常に大きな意味を持ちます。それは“日常”の感覚を取り戻すことであり、安全な環境に身を置くこと、そして、より明るい将来への機会を手にすることでもあるのです。教育は子どもたちにとって新しい世界であり、すべての子どもが手にするべき機会なのです。
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2012年マリ北部で発生した戦闘で治安状況が悪化してから4年近くが経ち、新学年度が開始されて3カ月が過ぎるなか、ユニセフは2015年12月、情勢が不安定な地域において、7歳~15歳の子ども38万人が未だ学校に通えていないことを明らかにしました。
当時、戦闘と政情不安により急速に食糧不足と栄養危機が広がり、学校が閉鎖に追い込まれました。避難を余儀なくされた国内避難民の数は、少なくとも約22万8,000人。国外へ避難し、難民となった人の数は、15万2,000人以上に上りました。
現在も、最大140万人の子どもたち(6人に1人の子ども)がこの危機の影響を受けており、約6万2,000人が国内避難民に、約13万9,000人が隣国に避難しています。ユニセフは、子どもたちに保健や水と衛生、保護、教育の必要最低限のサービスを確保するための支援を続けています。
© UNICEF/UNI203041/Diakite |
また、地域にある、280校以上の学校(6校に1校)が閉鎖されています。そしてその多くは、被害を受け、破壊され、紛争関係者たちによる略奪や占拠後、3年以上にわたって門を閉ざしたままとなっているのです。最も甚大な被害を受けた地域の一つであるキダルでは、79%の学校が依然として閉鎖しています。地雷や爆発性戦争残存物が残る学校までの道のりには、依然として危険が伴います。そのため、親たちは学校から子どもたちを遠ざけざるを得ません。
暴力の影響により、教員も不足しています。600人近い教師が、紛争地域から避難したか、または情勢不安により学校に行くことができずにいます。
ユニセフはマリ北部のガオやキダル、トンブクトゥ、中部のセグーなどの地域を中心に、子どもたちが再び教育の機会を取り戻すことができるようにするため、2015年10月から2年間の教育キャンペーン、『Every Child Counts (だれもが大切な“ひとり”)』キャンペーンを実施しています。
莫大なニーズにも関わらず、資金不足やアクセスの制限により、支援活動に遅れが出ています。教育や保護、保健、栄養、水と衛生プログラムのために必要な資金3,700万米ドルのうち、これまでに寄せられた資金はその3分の1未満に留まっています。
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