【2016年1月22日 フリータウン(シエラレオネ)発】
結婚や妊娠で学校を辞めざるを得ない女の子たちの物語は、シエラレオネの女子教育における課題を浮き彫りにしています。
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© UNICEF Sierra Leone/2015/Kassaye |
ハジャー・コンテ*さんは、学校を辞めることなど考えたことがありませんでした。しかし、絶望的な状況に置かれ、“学校に通い続けたい”という強い想いから取った最後の手段が、教育の道を閉ざすことになってしまったのです。
「学校に通い続けるつもりでした。母が学費や勉強にかかる費用を払ってくれていました」と、ハジャーさんが語ります。「でも、母は学費を賄えないようになり、お昼ご飯にも苦労するようになりました。そのとき、私のことをサポートしてくれると言う男の人に出会ったのです。彼は、私が学校を卒業できるようにサポートすることを約束してくれました。そして、卒業後に結婚をする予定でした。しかし、卒業前に妊娠してしまったのです」
現在15歳のハジャーさんは、妊娠が分かったとき、結婚以外の選択肢は考えられなかったと話します。学び続けることへの強い想いが男性との関係の始まりでしたが、それが教育の中断をせざるを得ない状況へと追いやってしまったのです。
ハジャーさんのような脆弱な立場の子どもたちは、貧困により、自身の夢をはるか遠くへと追いやることになる、とても耐え難い人生の選択を迫られるのです。
「妊娠が分かり、学校に通うのを止めました。妊娠した女の子は、学校に通うことが許されていないからです」と、ハジャーさんが語ります。
© UNICEF Sierra Leone/2015/Kassaye |
2010年の調査によると、シエラレオネの15歳~49歳の女性の50%が18歳未満で結婚しています。そして、15歳~19歳の少女の26%が出産を経験しています。また、エボラ出血熱で学校が8カ月間閉鎖に追いやられ、この数値が悪化していることを示唆する調査も出ています。
シエラレオネ政府はすべての子どもたちへの初等教育の実施を約束する一方、現在の政策では、妊娠した女の子たちが学校に通うことが禁じられています。ユニセフは国連人口基金(UNFPA)や英国国際開発省(DFID)、アイルランド政府開発プログラム(Irish Aid)などのパートナー団体と協力し、妊娠中の女の子を含む、すべての子どもたちが教育の機会を手にすることができるように支援を行っています。
エボラ出血熱後の復興を支える取り組みとして、ユニセフと教育科学技術省は2015年10月、妊婦や妊娠初期の10代の女の子1万1,000人の教育を支援するためのイニシアチブを開始しました。このイニシアチブでは、授業後に学校や地域の学習センターで行われる学習クラスや、自宅でのラジオ教育プログラムが実施されます。
結婚や妊娠で学校を退学した多くの子どもたちは、再び学校に戻ってくることはありません。そのため、このようなプログラムを通して、子どもたちがいつか再び教育の場へと戻ってくることができるようになることが期待されています。妊婦や妊娠初期の子どもたちが教育を続けることができるようにするためのこのイニシアチブでは、技術訓練やITへのアクセスの支援も行われています。
政府は子どもたちの出席を促進させるため、今後2年間の学費を無償にすることを決定しています。
ユニセフは児童婚や10代の妊娠、女性性器切除(FGM)への支援のため、政府内の保健や教育のパートナーと協同すると同時に、多面的なアプローチを行っています。また、NGOなどのパートナー団体を通して、ユニセフは1万4,000人の青少年の男の子や女の子に安全な場所を提供し、ライフスキルやお金の管理方法などの知識を伝えています。
10代での妊娠は、より大きな合併症を引き起こす危険が高くなります。現在、シエラレオネは妊産婦死亡率が世界で最も高く、出生10万人あたり1,360人に上っています。また、乳幼児死亡率も最も高い国の一つで、出生1,000人あたり87人が死亡しています。
「妊娠してから、一度も妊産婦健診を受けませんでした。出産も自宅でした。母が手伝ってくれましたが、赤ちゃんは亡くなってしまいました」とハジャーさんが語ります。
「結婚して学校を退学したことは、残念でなりません。もう一度チャンスがあるなら、勉強を続けたいです」
シエラレオネ全土でこの教育イニシアチブが展開され、ハジャーさんが暮らすモヤンバ地区でも支援が実施されるようになれば、ハジャーさんにも、もう一度教育を受ける機会が訪れることでしょう。
「将来の夢は、服を作る裁縫士です。結婚を考えている女の子たちには、勉強に集中するべきだと伝えたいです。教育はとても大切です。結婚は、まだ幼いうちにすべきではないと思います」(ハジャーさん)
*名前は仮名です
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