【2016年3月1日 ホムス(シリア)発】
ユニセフ事務局長アンソニー・レークは、シリア訪問を終えて、以下の声明を発表しました。
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© UNICEF/UN011695/El Ouerchefani |
シリア紛争が始まってまもなく丸5年となるにあたって、私はユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のピーター・サラマと共にシリアを訪問しました。前回の訪問は、紛争から3年となる直前だったので、あれからさらに2年間苦しみが続いたことになります。いま、停戦によって、シリアの人々のもとに平和の可能性が訪れています。
私が訪問したダマスカス、ホムス、ハマ、サラミーヤのいずれの場所でも、人々は希望を口にしていました。平和がやって来ることを、外交上の紙切れの上の平和ではなく、日々の生活に平和が戻ってくることを期待しているのです。学校で出会った子どもたちは、医者やエンジニア、教師など、自分たちの将来についての希望を語ってくれました。
© UNICEF/UNI200625/Sanadiki |
周囲を包囲されていたワエル地域に足を踏み入れると、2年前には目にすることのなかった光景-商店が店を開け、人々が通りを自由に行き来し、子どもたちが狙撃兵を恐れて地下室で身を寄せ合うのではなく、教室で勉強をしている光景に出会いました。破壊されてしまったホムス旧市街においても、戦闘から逃れ町を去っていた人々が戻り始めていました。
そして重要なことには、ダマスカスの政府高官が、ユニセフがWHOや保健省などと共に、シリア全土で子どもたちへの予防接種事業を直ちに進めることに合意しました。その実現には、包囲された地域や辿り着くのが困難な地域すべてに継続してアクセスできることが必要であり、政府と反政府勢力の双方が、シリアのすべての子どもたちが支援を受けられるために協力することが求められます。
ホムスでは、医師たちに連れられて外科病棟を訪ねました。狙撃兵によって顔を撃たれた人が治療を受けていました。医師たちは、古い手術器具を用いて、砕けた顎骨を取り除かなければなりませんでした。麻酔薬は使用期限を過ぎていました。希望が見える一方で、街全体の荒廃した様子や、2年前の迫撃砲による攻撃で子ども8人が命を落とし30人以上が怪我をした元孤児院のワエル地域の子ども用センターなど、今も、混乱の跡と子どもが戦闘の犠牲になってきたことを示す酷い証拠がありました。
医師、看護師、そして特に患者の父親は、この地域への医療物資支援を拒み続けている政府だけでなく、国連や国際社会に対しても怒りをあらわにしました。しかし、彼をとがめることはできません。国際社会は、この悲劇が5年もの長きにわたって続くのを、見過ごしてきたのですから。
© UNICEF Syria/2016/Yasmine Saker |
今回の訪問で出会ったすべての人々に、ユニセフはあらゆる手を尽くしてシリアを支援し続けること、緊急の人道支援のみならず、復興と開発の支援を続けることを、ユニセフ・シリア事務所代表のハナア・シンガーと共に固く約束してきました。
事実、開発支援は現在も行われています。シリアの子ども一人ひとりに教育の機会を届けるたびに、私たちはシリアの将来をつくる手助けをしているのです。
この5年間、ユニセフはパートナー団体と共に1,000万人以上のシリアの人々、多くは子どもたちに対し、水や保健、栄養、教育、心のケアなどの支援を行ってきました。
しかし、手を差し伸べなければいけない子どもたちはさらに多くいます。シリア国内の600万人と戦闘から逃れ隣国に避難した200万人、合計800万人以上の子どもたちが、いまも支援を必要としています。
彼らを支えるため、ユニセフは全力を尽くします。
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