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日本ユニセフ協会
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シリア危機
紛争の駆け引きに使われる“水”
アレッポの浄水施設が48日ぶりに再開

【2016年3月6日  ダマスカス(シリア)発】

シリア東部のアレッポの200万人以上の命と健康のために不可欠なアルカフセ(al-Khafseh)の浄水施設が、3月4日に運用を再開しました。

浄水施設が48日ぶりに再開

給水タンクから水を飲む、家族のために水を汲みに来た少年。(2014年撮影)

© UNICEF/UNI168531/Khabieh

給水タンクから水を飲む、家族のために水を汲みに来た少年。(2014年撮影)

シリアで最も重要な施設の一つであるこの浄水施設は、ユーフラテス川の原水を取水し、1日に平均4億リットルの飲み水をつくっています。アレッポの市全体と県の東部地域に暮らす200万人以上にとって唯一の飲み水の供給源であるこの施設は、今年1月16日に意図的に運用を停止されていました。

「アレッポの人々が再びきれいな水を入手できるようになることで、命が守られます」とユニセフ・シリア事務所代表のハナア・シンガーは言います。「100万人の子どもたちが、この施設の安全な飲み水を頼りにしています。安全な飲み水は、感染すると時には命を落とすことさえある水を媒介する感染症から、子どもたちを守るために不可欠なのです」

紛争の駆け引きに使われる水

水は、シリアの紛争に関わるすべての勢力によって、駆け引きの手段にされています。数百万人の市民が、飲料用および生活用のきれいな水を奪われています。水源における水供給の遮断、水関連施設を標的にした空爆や地上攻撃、施設の保守や修繕、運用を担う民間の労働者に対するアクセス妨害などが駆け引きの例です。ユニセフ(国連児童基金)は、アレッポやダマスカス、ダマスカス郊外県、ダラア、ハマなどの地域において、これらが実行されていることを確認しました。2015年だけで500万人以上のシリア人が、命に関わる恐れのある水不足に直面しました。

きれいな水を手にできるように

アレッポ東部で水を汲んで自宅に運ぶ男の子たち。(2015年撮影)

©UNICEF Syria/2015/Baraa Al Halabi

アレッポ東部で水を汲んで自宅に運ぶ男の子たち。(2015年撮影)

「紛争に関わる勢力は、人々の生存に必要不可欠な水供給を標的にした攻撃や、意図的な妨害をやめなければなりません。浄水施設や水供給システム、パイプライン、水関連施設の補修を行う人員を、保護すべきなのです。シリアの子どもたちとその家族は、安全な飲み水と、衛生や健康のためのきれいな水を手にする権利があります」(シンガー代表)

ユニセフは、アレッポのすべての人々がきれいな水を入手できるよう、過去数週間にわたって、水のトラック輸送や水供給インフラの緊急補修、復旧作業といった支援活動を、パートナー団体と緊密に協力しながら実施しています。

* * *

参考情報

ユニセフが2015年に確認した、シリア紛争に関わる勢力が水を駆け引きの手段にしている具体的なケースは以下の通り。

  • 2015年夏、アレッポ市において、反体制派が水の供給を40回以上遮断し、約150万人が水道水を使えなくなった。断水は最長で2週間以上に及んだ。
  • 2015年11月、アルカフセの浄水場が空爆を受けた。これにより水を供給していたパイプが切断され、アレッポ県の200万人以上に影響が出た。
  • 2016年1月16日、アルカフセの浄水場が運用を停止された。人々は、不十分で、時に安全でない地下水に頼らざるを得なくなり、アレッポ県の200万人以上に影響が出た。
  • シリア南部の都市ダラアでは、水源を支配していた武装勢力により2015年に複数回にわたり水の供給が断たれ、20万人以上に影響が出た。
  • 約430万人が暮らすダマスカスとダマスカス郊外県で、特に2015年半ば以降、反体制派が複数の水源で水の供給を遮断している。
  • ハマのサラミーヤでは、武装勢力が水の供給を断ち、18万5,000人以上に影響が出た。

ユニセフはシリアの人道支援における水と衛生(WASH)部門を指揮しており、人々へ水と衛生のサービス提供に向け、パートナー団体との協力のもと活動しています。ユニセフのWASHプログラムは、シリア全土で暮らす人々に対し、以下の3つを中心とした支援を届けています。

  • 水のトラック輸送や緊急衛生キットなどの緊急配送 -240万人を支援
  • 攻撃により損傷したシステムを含めたインフラの復旧 -780万人に水を供給
  • ポンプ施設向けに水の浄水剤を提供 -シリア全土の1,200万人に、きれいな水を供給

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