【2016年4月14日 サヌア(イエメン)発】
イエメンで続く紛争は、子どもたちに大きな影響を与えています。学校では、劇やスポーツ、生徒同士の支え合いを通して、子どもたちが紛争や暴力を乗り越えることができるようにする方法を伝えています。ユニセフのビスマルク・スワンジン広報官がイエメンの学校を訪れたときの様子を伝えています。
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© UNICEF Yemen/2015 |
「ボン!ボン!」女の子が大声で叫びます。すると、4人の女の子たちが一斉に校庭に駆け込んできます。爆弾の音を聞いて悲鳴を上げる少女に他の生徒たちが駆け寄り、「大丈夫。どこも怪我をしていないよ」と話しかけました。落ち着いた少女の姿を見て、他の生徒たちも胸を撫で下ろします。
イエメンの首都サヌアにあるアルファドヒーラ基礎学校では、朝の集会が行われていました。集会では、生徒たちが劇を演じていました。この劇には、生徒たちが置かれている現状が映し出されています。生徒たちは劇に夢中になっている様子です。しかし、イエメンの子どもたちは実際に、非常に危険な状況に置かれているのです。
「これは、子どもたちが苦しい状況を乗り越えるための取り組みの一つです」と、サヌアの教育長官のモハメド・エルファディリ氏が語ります。「子どもたちが劇を観て、笑ったり手を叩いたり姿を目にすることができますよね。このような子どもたちの行動を駆り立てる活動やスポーツは、一時的ではあるかもしれませんが、紛争のことを忘れ、学習に集中する手助けとなります」
校長室に向かっている途中、エルファディリ教育長官に肩を叩かれて振り返りました。そして長官が指を指す方向に目をやると、地面にガラスの破片が散乱していました。
「昨年11月に被害調査に訪れたときは、辺り一面、ガラスでいっぱいでした」と、エルファディリ長官が語ります。
昨年、イエメンでは絶え間ない爆撃や地上戦が続いていました。学校を含め、一般市民のインフラも攻撃を受け、子どもたちが命を落としたり、重傷を負ったりしています。学校に向かう途中で被害に遭った子どもたちもいます。
激化する紛争で3,600校近くの学校が閉鎖に追いやられ、180万人の子どもたちが教育の中断を余儀なくされました。改善もみられていますが、破損や情勢不安により、依然として1,600校以上が閉校しています。そして、38万7,000人の子どもたちが教育を受けられないままとなっています。
イエメンの1,000校以上の学校と同じように、アルファディーラ基礎学校も、直接的ではないものの、被害を受けています。近くの丘への絶え間ない爆撃による振動で、学校の窓ガラスが割れてしまったと、近隣の住民が語っています。ユニセフの支援を受け、子どもたちが再び学ぶことができるように窓ガラスを交換し、割れたガラスの破片の清掃を行いました。
ユニセフはイエメン全土で学校の修繕を支援し、子どもたちが紛争の恐怖を乗り越えることができるようにするため、教員や生徒への研修も行っています。教師たちは子どもたちが学習に集中できるよう、子どもたちの感情の変化を早期に発見する方法などを学んでいます。一方、生徒たちも、子どもたちに笑顔をもたらした集会の劇のように、生徒たち同士で支え合えるようにするためのスキルを学んでいます。
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朝礼後、生徒たちは授業を受けるために教室に向かいました。授業後には、ゲームやスポーツの時間、バレーボールやフラフープ、縄跳びなどをする心のケアの活動を行っています。ごく普通のことのように思えるかもしれませんが、とても大切なことなのです。
9年生のクラスで勉強する13歳のガーディアさんは、爆撃や銃弾の音で授業に集中するのがとても難しいと語ります。
「授業中に時々、“ボン!”という音が聞こえます。するとどうなると思いますか?」と、ガーディアさんが尋ねます。「叫び出す人や、教室から逃げ出す人もいます」
ガーディアさんは、将来お医者さんになりたいと語ります。紛争で教育を続けることも大変ななか、ガーディアさんは、紛争が起こっているときだからこそ、一刻も早く、この大きな夢を叶えたいと考えています。
「傷を負っている人も病気の人も、みんな治療できるようになりたいです。クラスメイト全員が、将来への夢や計画があるのです。それが、学校で勉強を続けること、そして生き続けていくことに、大きな力となっているのです」
「絶望のなかも、明るい未来への希望が失われることはありません」
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