【2016年3月31日 ラオス発】
ラオスのサラヤン州で暮らすポウンバさんとマニボンさんは、仕事が大好きだと話します。じめじめした気候の中、今日もふたりは小さな村を一軒一軒歩いて回り、幼い子どもを持つ母親や妊婦のもとを訪れます。ふたりは、ラオス女性連合の訓練を受けたボランティアとして、命を守る情報を各家庭に届けるという重要な仕事を担っているのです。
© UNICEF Laos/2014/B. Verweij |
サラヤン州はラオスの中でも特に保健指数の数値が低く、10人に1人の乳幼児が1歳の誕生日を迎える前に命を失っています。また、発育阻害の割合は世界でも最も高いレベルです。この状況に対応するため、ユニセフと欧州連合(EU)は、ラオス女性連合と協力して母親たちへの支援を行っています。
ポウンバさんやマニボンさんのような女性連合のボランティアは、母親たちに母乳育児に関するアドバイスや支援を行うための研修を受けており、必要な教材も提供されます。ボランティアの人々が母親に伝えるアドバイスは、子どもたちの生存と成長を守る重要な役割を果たします。
この日の戸別訪問は、20歳で2児の母親のパさんの家から始まりました。パさんは、教わった母乳育児の効果は明らかだと語ります。「6カ月の赤ちゃんを完全母乳育児で育てていますよ」と、赤ちゃんを抱きながらパさんが話してくれました。そして、その赤ちゃんとほぼ同じぐらいの身長の2歳の子どもに目を向け、「この子のときには、母乳育児をしませんでした」と語りました。
年齢差にも関わらず、2人はほとんど同じ背格好をしているのです。
「より多くの母親たちが母乳育児をするようになりました」と、子どもたちの健康的な食事の与え方をパさんに説明したマニボンさんが語ります。「子どもたちにどのようなよい効果が出るのか、母親たち自身が目にしています」
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ユニセフとASEAN(東南アジア諸国連合)、WHO(世界保健機関)による共同報告書は、ラオスの5歳未満の子どもの約半数が、年齢に比べて身長があまりにも低い状態である発育阻害に陥っている、と明らかにしています。貧しい栄養や不十分な母乳育児は、子どもたちが栄養不良に陥る重要な要素のうちの一つです。ラオスの子どもたちは発育阻害や消耗症、貧血などのレベルが高く、低栄養に関連する多くの問題に苦しんでいます。
パさんと話を終えると、ふたりは他の母親たちの元を訪れるため、村を歩いて回りました。気候が暖かくなった日中、住民は畑仕事に精を出しているか、日陰で休んでいます。聞こえてくるのは、牛の鈴の音、あるいはコウロギの鳴き声だけです。
ウィエさんとロウニーさんは高床式住居の下に座り、ボランティアのふたりを歓迎しました。「ふたりのサポートのおかげで、赤ちゃんへの適切な食事の与え方について学びました」と、ウィエさんが語ります。「それに、自分の健康を保つ方法についても学びました。これも、とても大切なことですよね」
しかし、まだ課題も残されているとロウニーさんが語ります。母親たちのなかには、赤ちゃんを泣き止ませるためにお米を与えている人もいるのです。ロウニーさんの隣の家で赤ちゃんが生まれたときは、生まれて2時間後には、赤ちゃんにお米を食べさせていたといいます。
生後6カ月間の完全母乳育児とその後の離乳食は、子どもがかかりやすい病気から子どもたちを守るだけでなく、成長後、他の病気から子どもたちを守ることができます。しかしラオスでは、生後6カ月間の完全母乳育児を行っている母親は40%だけです。
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ユニセフがラオス全土で完全母乳育児と適切な離乳食の促進、支援を行うためのパートナー団体を検討していた際、ラオス女性連合はまさにぴったりの相手でした。
「できる限り多くの女性や養育者に辿り着くため、コミュニティで広く支援を行うためには、現地のコミュニティで信頼され、活発に活動する団体が必要でした」と、ユニセフ・ラオス事務所のヴィオリカ・ベルダーガ保健栄養チーフが語ります。「ラオス女性連合と力を合わせることで、すべてのコミュニティで支援を行うことができるようになったのです」
ラオス女性連合はすべての村で活動を行っており、60万人のメンバーがいます。そして、多くの異なる言語や民族グループにわたって女性に支援を届けることができます。
「コミュニティを基盤としたボランティアの人たちの力は、とても重要です」と、ラオス保健省のチャンダボーン・ポーサイ医師が説明しました。「2通りのボランティアの人々が活動を進めています。まずは、地域レベルで活動する村の保健ボランティアの人たちです。栄養に関する教育だけでなく、行動変容や健康促進のための訓練を1カ月受けています。そして、ラオス女性連合も重要な役割を担っています。女性連合のメンバーのなかには、村の保健ボランティアになった人もいます」
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ユニセフは赤ちゃんや幼い子どもたちへの適切な食事と妊産婦への適切な栄養の摂取を促進させるため、研修や教材の提供などを通してラオス女性連合を支援しています。また、現地で入手可能な食材を用いた栄養のある食事の作り方を、女性や子どもを養育する人たちに伝えるため、調理方法の実演のための資金援助も行いました。
書き言葉を持たない民族でも理解できるよう、そして、口頭での説明が過多にならないよう、内容が絵で描かれた視覚教材も作られました。
「文字を使って研修ができないときは、クリエイティブな考えを持たなくてはいけません」と、ベラダガ医師が語ります。ユニセフは保健や栄養の情報を、現地の言葉に通訳するため、スマートフォンの試験運用も行っています。ラオスでは、乳児や子どもの栄養に大きな前進が出ています。ユニセフやEUの協力のもと、ラオス女性連合などのパートナー団体の支援で、より多くの改善がみられています。
「栄養はとても複雑な問題です」と、駐ラオス欧州連合代表部のコーエン・エイバラート氏が語ります。「部門間、ステークホルダー間のアプローチが必要です。国レベル、地域レベル、そして最も大切なことに、草の根レベルで正しい構造を築いていくことが必要です。今の最大の目標は、これらの取り組みを拡大させ、展開していくことです」
今日も、ポウンバさんとマニボンさんは、母親たちのもとへと足を運びます。
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