【2016年7月20日 アデン(イエメン)発】
2015年5月、イエメンで戦闘が激化する中、16歳のアーメッドさんは、紛争に関わる勢力の一つに強制的に徴用され、戦闘に参加させられました。戦闘の最前線で数カ月を過ごした後、逃亡し、自宅に戻ることができました。アーメッドさんは今、学校に再び通い、受けられなかった授業を取り戻そうと一生懸命勉強しています。
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© UNICE Yemen/2016/Rasheed |
アーメッドさん*(16歳)が静かな暗い部屋で、本を読んでいます。部屋には、充電式の電灯の明かりが灯っているだけです。2015年3月にイエメンが激しい戦闘に陥って以来、国内の電力システムは深刻な影響を受けています。アーメッドさんが暮らす南部アデン州のクレーター地区も例外ではありません。
アーメッドさんは床に座り、前かがみになって本を読んでいます。年度末試験のために勉強しているのです。紛争のために学校に通えなかった失われた時間を取り戻そうと、懸命に勉強するアーメッドさんを助けるために、母親が充電式の電灯を調達してきました。アーメッドさんは、教育を続ける決心をしたと言います。
紛争はアーメッドさんから、教育だけでなく、命まで奪いかけました。アデンで戦闘が激化した2015年5月のある夜、若い男たちのグループが、アーメッドさんの自宅のドアを叩きました。アーメッドさんがドアを開けると、男たちはアーメッドさんに銃を投げつけ、男らしく振る舞い、後をついてくるように、と言いました。アーメッドさんは困惑し、憤りを感じましたが、選択の余地はありませんでした。そこには、学校に通う代わりに、自分が始めてもいない戦闘に駆り出され、銃弾を逃れながら戦っている自分の姿がありました。
戦闘の中で目撃した恐ろしい光景について、アーメッドさんはあまり記憶がありませんでした。あるいは、思い出したくもなかったのかもしれません。重火器の音、四方八方に飛び交う銃弾、胃が空っぽのなかで歩いた遠い道のり。ぽつりと話したこれらの光景は、アーメッドさんが経験したほんの一部なのです。
© UNICEF Yemen/2016/Yassir Abdulbaki |
アーメッドさんはずっと、日常の暮らしに戻って再び学校に通うという夢をあきらめていませんでした。2015年12月、武装勢力のキャンプからこっそりと逃げ出し、家族の元に戻りました。自宅までの道のりでアーメッドさんは、戦闘員とまだ行動を共にしている幼い男の子たちのことを思い出していました。
「自分と同じか、自分よりも幼い年齢の痩せた男の子たちが配置されたセキュリティー・チェックポイントをいくつか通過しました。みんな自分の体重よりも重い武器を持ち、目には恐怖が浮かんでいました」と、アーメッドさんは言います。「僕はその恐怖が意味するもの、その恐怖がどんなものかを、よく知っています」
© UNICEF Yemen/2016/Rasheed |
両親は、アーメッドさんの支えです。自宅に戻ってきたアーメッドさんを、両手を広げて迎え入れた両親は、アーメッドさんが教育を続けることを応援しています。
母親は、息子が強制的に徴用されて、連れ去られていた間、泣きながら彼の帰りを祈っていたと言います。今は、アーメッドさんが学業を続け、夢を叶えるための支えとなるよう、全力を尽くすつもりです。
アーメッドさんは、前回の学校での成績を誇らしげに見せながら、学校で一所懸命やっていることを示しました。アーメッドさんを教えている教師のひとり、アデル先生も、アーメッドさんの優秀な成績を認めています。アデル先生は、アーメッドさんが再び学校に通っていることを誇りに思っており、「勉強熱心で、礼儀正しい生徒ですよ」と述べています。
自宅に戻り、落ち着いたアーメッドさんには、戦闘に戻ることなど、もはや想像できません。「僕たちは、戦争に”NO”と言わなければならないのです」と、アーメッドさんは言います。「もう、たくさんです」
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国連によると、2015年3月にイエメンで紛争が激化して以来、子ども1,000人以上が紛争に関わる勢力によって徴用されたと報告されています。子どもたちが再び学校に通えるよう、そして、通い続けられるように、ユニセフは教育省と協力し、イエメン全土で学校の再建、学習教材の提供などの教育支援を行っています。
*名前は仮名です。
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