【2016年8月3日 サヌア(イエメン)発】
イエメン北部に位置する首都サヌアでは、住民150万人が出した汚水の処理は、たった一つの汚水処理施設に依存しています。しかし、紛争の激化により施設が被害を受け、未処理の汚水がバニ・アル・ハレス(Bani-Al-Hareth)地域に溢れ出し、地域住民は、有害な汚水や汚物による公衆衛生の危機に晒されました。
© UNICEF Yemen/2015/Al-Asaad |
2015年3月にイエメンで紛争が激化したことにより、インフラ施設が被害を受け、人間の排泄物を農地用の無害な肥料に再生していた汚水処理施設への電力の供給が停止しました。汚水処理施設の運転停止により、未処理の汚水が首都サヌアのバニ・アル・ハレス(Bani-Al-Hreth)地域に氾濫しました。そして、この地域では、排泄物の混じった汚水から放たれる強烈な異臭が蔓延し、ハエの大群が発生しました。
この地域に住むアブド・アリ・タンマさんは、汚水が流れる光景と異臭は、暴力的な紛争の影響による悲惨な状況に拍車をかけている、と語ります。「どうすれば良いか分かりませんでした。おびただしい数のハエや他の虫が、未処理の汚水に群がっていました。私たちの農作物も被害を免れられず、死んでしまいました」(タンマさん)
© UNICEF Yemen/2015/Al-Asaad |
この状況は、紛争の影響をさらに悪化させるとともに、公衆衛生の危機に発展する可能性もありました。安全な水と衛生サービスへのアクセスが不十分なことに加え、適切な衛生習慣が欠如していることで、世界の何千人もの子どもたちが命を落とし、病気になり、さらに多くの子どもたちが貧困や機会の喪失といった状況に直面しています。
サヌアの北部地域は、汚水の安全な処理を、この処理施設に頼っています。この施設は当初、住民50万人分に対応する目的で建設されましたが、現在では150万人に増加した住民の汚水を処理しています。
「汚水の流出による劣悪な衛生状況により、私たちは病気の危険に直面しており、特に子どもたちへの影響を憂慮しています」とタンマさんは言います。
「未処理の汚水は、バニ・アル・ハレス地域を流れ、地域の住民によって農耕用に使用されています。この土地に栽培されているなす、じゃがいも、レタスなどの野菜は、サナア市内や周辺の住民が消費しているため、人々の健康や環境が非常に脅かされています」と汚水処理施設の副代表アブドゥルワハブ・サラさんが語りました。
汚水を処理するための電力もなく、ジェネレーターを動かす燃料もない状態で、バニ・アル・ハレス地域の当局やタンマさんたち住民には、なすすべがありませんでした。
© UNICEF Yemen/2015/Al-Asaadi |
イエメンが直面しているような緊急事態において、安全な水と衛生は最優先されるべき支援です。緊急的状況に直面している子どもたちと家族は、適切な水と衛生サービスが早急に提供されなければ、病気や死に至ります。このことは、自然災害や、複雑な要素が絡み合って起こる紛争など、あらゆる緊急事態においての事実なのです。
2015年7月、ユニセフは、有害な汚水や汚物を処理できるよう、汚水処理施設に電力を供給するための燃料の提供を開始しました。100万リットル以上の燃料が提供されたことにより、2015年8月より、施設の運転が可能となりました。
これは、タンマさんを始めとするバニ・アル・ハレス地域の住民や、健康リスクに直面していた人々にとって大きな安堵となりました。「私たちは正常な生活に戻れました。命が守られたのです」とタンマさんは喜びました。
水と衛生に関わる地元の当局は、汚染処理施設を運転するためのユニセフからの支援が、病気の蔓延を回避する手助けになった、と語っています。
しかしながら、こうした支援に依存する燃料補給は、持続的ではありません。イエメンでは、1,900万人以上が、安全な水と衛生への日常的なアクセスを切実に必要としています。
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