【2016年10月25日 バンギ発】
中央アフリカ共和国では、2013年12月に武装勢力間の衝突が激化して以来、不安定な情勢が続いています。ユニセフ・中央アフリカ共和国事務所の小川 亮子・子どもの保護専門官による報告です。
* * *
© UNICEF CAR/2016 |
「子どもを兵士として徴用する」という子どもに対する最も残酷な所業のひとつと、今まさに向き合って戦っている中央アフリカ共和国。その首都バンギで10月18日から3日間にわたり、国境を越えて、子ども兵士を解放し、社会復帰できるよう支援し、二度と武装勢力に徴用させないために、どのように立ち向かえば良いか学びあうワークショップが開催されました。この会議には、中央アフリカ共和国大統領や首相等の政府要員や国際機関はもとより、国際・現地NGO職員、これまでに紛争を経験した国々の子ども兵士解放に関わった専門家が多数参加し、経験やそこからの学びを共有し、熱い議論を交わしました。
© UNICEF/UNI142243/Matas |
ひと言で「子どもの兵士」と言っても、その内容は実に様々です。中央アフリカでこれまでにユニセフとそのパートナーによって解放された子どもたちは、年齢、性別、どのようにして武装組織に徴用されたのか、動機はなんだったのか、武装組織の中での役割は、またどのように扱われたかなど、一人ひとり全く違ったストーリーを背負っています。また、中央アフリカの中でも、どの地域でどういった武装組織のどのグループに徴用されたのかによっても、彼らの経験は全く違ったものになります。
例えば、イスラム系と言われるセレカという武装組織はある程度「軍隊」の体を成していることが多く、徴用された子どもの多くは戦闘員として銃の使い方を教えられ、一般の村落とは隔離された「基地」で軍隊の一員として生活することが多い一方、セレカに対抗するために「自衛の民兵組織」として生まれたアンチ・バラカにおいては、子どもたちも武装組織自体もコミュニティに溶け込んでいることが多く、役割も小さい子どもを使った敵状視察(スパイ)を含め、戦闘員以外に多様な使われ方をしていることがわかっています。
一方で、子どもを武装組織に徴用する行為は新しいことではなく、多くの国で行われ、現在でも残念ながら続けられている状況です。これらの国・地域でこれまでに行われてきた「子どもの兵士」の解放と社会復帰の試みが、中央アフリカ共和国や、他の国・地域において重要な学びとなります。
© UNICEF CAR/2016 |
例えば、国連組織やそのパートナーがどのように政府と連携したか、政府がどの程度のオーナーシップを取ることができたかは、中央アフリカ共和国のような未だ政権が安定せず、予算や人員にも相当な限りがある状況では、とても参考になります。
「子どもの兵士」に限らず、紛争自体を解決し、武装解除するプログラムの一部として取り入れていくことも重要になります。解放された子どもたちが、どのような道を経て社会復帰することができたのかについて学ぶことも出来ます。
このワークショップでは、隣国コンゴ民主共和国の子どもの兵士解放のプロジェクトに携わる政府職員、シエラレオネから来た専門家、大湖地域のプログラムに携わった専門家(ブルンジより)、ユニセフの子どもの兵士解放専門家(ニューヨーク本部より)、コートジボワールで武装解除に携わった現MINUSCA職員等が参加し、それぞれの経験を分かち合いました。
© UNICEF CAR/2016 |
中央アフリカ共和国では、現在も紛争の火種が各地で潜み、いつどこでどのような戦闘や大きな避難民の波が起こるかもしれないといった状況にあります。つい最近も9月中旬に中央部のカガ・バンドローで大規模な戦闘が起こり、本会議の4日後には首都バンギで戦闘や略奪行為が起こり、2日間にわたり機能停止に陥る状況となりました。いまだに数千人の子どもたちが、いまや更に複雑化・多様化した武装組織に徴用されていると見られています。
新政権はまだ武装解除や子どもの保護にリーダーシップを取れる体制になく、ユニセフをはじめとする国際機関やパートナーであるNGOが、流動的な状況の中で試行錯誤しながら柔軟に対応している同国での状況は、翻って他の子どもの兵士の状況に苦しむ国・地域にとって、多くの学びを発信しています。
子どもの兵士解放とその社会復帰は、個々のプロジェクトはその地域の状況によって異なってくるものの、国際社会がひとつになってなくしていかなくてはならない地球規模の課題です。現在進行形として子どもの兵士解放と社会復帰を進めている中央アフリカの現場で、こういった国際ワークショップが実施されたことは、現場に近い視点が国際社会に還元された、画期的な例となりました。
シェアする