【2018年11月27日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)は本日発表した報告書の中で、世界の4カ国に1カ国※1は、都市部に暮らす最も貧しい子どもたちが、農村部の最も貧しい子どもたちよりも5歳の誕生日を迎える前に命を落とす可能性が高い状況にあり、6カ国に1カ国は、都市部に暮らす最も貧しい子どもたちが、農村部に暮らす最も貧しい子どもたちよりも初等教育を修了する可能性が低い状況であると指摘しています。
報告書『優位かパラドックスか:都市部に暮らす子どもたちと若者の苦難(原題:Advantage or Paradox: The Challenge for children and young people growing up urban)』は、都市部に暮らすすべての子どもが、都会に暮らすことでより高い収入、より良い社会インフラ、より身近な社会サービスを受けられるとする「都市の優位」の恩恵を受けられるわけではないと指摘しています。反対に、都市での格差や排除、都市で暮らすことによる環境や健康被害などにより、子どもを含む多くの都市住民が、農村部の住民よりも受けられるはずのものが受けらずにより深刻な搾取に苦しむ「都市のパラドックス」に陥る可能性があります。
「農村部に暮らす親にとって、都市に移住する理由は明らかです。より良い職の可能性、子どもたちへの保健ケアと教育の機会を求めているのです」とユニセフ統計・調査・政策局長 ローレンス・ シャンディ(Laurence Chandy)は述べました。「しかし、すべての子どもたちが公平に恩恵を受けているわけではありません。私たちは、都市部に暮らす何百万人もの子どもたちが、農村に暮らす子どもたちより状況が悪いということを示すデータを見つけました」
報告書は、都市部に暮らす貧しい子ども430万人は、農村部の子どもたちと比べて、5歳の誕生日を迎える前に亡くなる可能性が高いことを示しています。また、都市部に暮らす1,340万人の子どもたちは、農村部の子どもたちと比べて、初等教育を修了する可能性が低いことも明らかにしています。
© UNICEF/UN060147/Noorani |
報告書は、主に低・中所得国77カ国における子どもの幸福度を測る10の指標を分析しています※2。報告書は、大多数の国では、都市部に暮らす子どもたちは、概して農村部に暮らす子どもたちより良い状況にあることを確認しています。しかし、こうした平均値は、都市部に広がる不平等を隠してしまいます。さらに、同じ程度の経済状態の都市部世帯の子どもと、農村部世帯の子どもを比較した場合、「都市優位」は見られなくなります。
「都市計画は子どもたちに重点を置くべきですが、多くの都市では、子どもたちは忘れ去られ、都市部のスラムや非公式な居住地では、何百万人もの子どもが社会サービスから切り離され、密集した生活による環境や健康被害に晒されています」とシャンディは加えました。「このような社会経済的格差を止めるためには、都市開発・計画への解決策の適用が必要不可欠です」
スラムに暮らす人の数は10億人とも推測され、そのうち数億人は子どもです。中でもアフリカとアジアでは都市化が急激に進んでいます。2030年には、世界最大10都市のうち7都市がアジアに集まり、また、アフリカの都市部の人口増加は世界で最も高く、年に3.7%の割合で増えています。
報告書は、基礎的社会サービスへの限られたアクセスとも関係する、子ども時代の成長に現れる都市部の中の格差にも光をあてています。例えば、分析した半数の国では、都市部の最も貧しい子どもたちは、都市部の最も豊かな世帯の子どもたちと比べて、基本的な衛生サービスを受けられない可能性が2倍になります。
都市部の貧困層を支援するための革新的な方法がない中、子ども時代の成長の格差は拡大し、より多くの都市部の子どもたちが全体的な進歩から取り残される可能性があります。
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■報告書のデータに関して
※1 都市部の最も貧しい子どもは、富の分配が最も低い20%の世帯に暮らす子ども。子どもの死亡率の分析は、世界人口の28%を占める56カ国が対象。初等教育修了率は、世界人口の51%を占める77カ国が対象。
※2 10の指標に含まれるもの:水、衛生、技術の備えた助産師、出生登録、DTP3予防接種、初等教育の修了、15歳から24歳の男性・女性のHIV/エイズに関する知識、発育阻害、子どもの死亡率。
報告書は、2011年から2016年の間に77カ国で実施された80の調査(Demographic and Health Survey, DHS, and Multiple Indicator Cluster Surveys, MICS)を分析したもの。これら77カ国は2018年の世界人口の51%を占める。対象の77カ国のうち、低所得国が31%(世界の14%)、中所得国が40%(世界の24%)、高所得国が27%(世界の36%)。分析に含まれる国の数は、データの入手可能性および質によって、指標ごとに変動する。
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