【2019年6月3日 ニューヨーク/バンクーバー発】
ユニセフ(国連児童基金)は本日発表した報告書「周産期ケアの実態調査:健康な母親と赤ちゃんのために(原題:Healthy Mothers, Healthy Babies: Taking stock of maternal health)」の中で、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ・カリブ海諸国に暮らす500万以上の世帯が毎年、食品以外の生活費の40%以上を周産期ケアに費やしていると述べています。
© UNICEF/UN0155822/Zammit |
そのうち、約3分の2にあたる約300万世帯がアジアで暮らし、約190万世帯がアフリカで暮らしています。報告書によれば、出産前のケアや出産時ケアにかかる費用が、妊婦を医療ケアから遠ざける要因となり、母子の命を危険に晒しています。
「あまりに多くの家族にとって、出産にかかる費用は悲劇的なものになりかねません。しかし、家族が費用を負担できなければ、さらに致命的な結果につながる可能性があります」とユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは述べました。「家族が生活費のために周産期ケアの費用を削減することによって、母親と新生児の両方が苦しむことになるのです」
報告書によれば、世界の女性たちが周産期ケアを受けられる状態は改善しているものの、いまでも毎日800人以上の女性が妊娠に関連した合併症で命を落としています。
最も貧しい女性が置かれている現実は、極めて厳しいものです。南アジアでは、出産前のケアを4回以上受ける裕福な世帯の女性の割合は、貧しい世帯の女性の3倍に上ります。西部・中部アフリカでは、保健施設で出産する裕福な世帯の女性の割合は、貧しい世帯の女性の2倍以上です。
医師、看護師、助産師は母親の命を守るために重要な役割を担っていますが、毎年数百万件もの出産はこれら専門技能者の付き添いがない中で行われています。報告書によれば、2010年から2017年の間に、多くの国で保健分野の専門技能者の割合(人口1万人あたり)は増加しています。しかし、妊産婦死亡率と新生児死亡率の高い最も貧しい国々における割合の増加はわずかなものに過ぎません。例えば、2010年から2017年の間に、モザンビークで、人口1万人あたりの保健専門技能者の割合は4人から5人に、エチオピアでは3人から9人に微増しました。一方、同時期のノルウェーの割合は213人から228人に増えています。
© UNICEF/UN0288016/Viet Hung |
報告書はさらに、妊娠に関連する合併症が世界の15歳から19歳の女の子の最大の死因であると指摘しています。10代後半の女の子はまだ成長過程にあるために、妊娠した場合に合併症を発症のリスクが高いのです。また、彼女たちの子どもは5歳の誕生日を迎える前に亡くなるリスクがより高くなります。しかし、児童婚(18歳未満での結婚)をした女の子が妊娠した際に適切な医療ケアを受けたり、保健施設で出産する確率は、おとなになって結婚した女性と比べて低いことを、報告書は述べています。
一般的に児童婚をした女の子は、おとなになって結婚した女性よりも多くの子どもを産み育てるために、家族の経済的負担が増え、本人の人生の可能性も奪われていきます。カメルーン、チャド、およびガンビアの20歳から24歳の女性が3人以上の子どもを持っている割合は、15歳になる前に結婚した場合は60%を超えますが、おとなになってから結婚した場合は10%を下回ります。
「最も貧しく、最も弱い立場にある母親たちに、私たちは質の高いケアを提供できていません」とフォアは言います。「あまりに多くの母親たちが、特に出産時において、そして生涯にわたり苦痛に悩まされています。私たちが、専門技能者、機能的な保健施設、そしてより質の高い周産期ケアを提供することで、彼女たちの苦痛を終わらせ、何百万もの命を守ることができるのです」
© UNICEF/UN0288725/Viet Hung |
世界の新生児に代わって解決法とその実現要求する、ユニセフの世界キャンペーン「Every Child ALIVE」は、各国政府、保健ケア従事者、ドナー、民間セクター、家庭や経済界に対して、すべての母子の命を守るために次のことを求めます。
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