【2019年6月10日 イエメン発】
イエメンは、4年以上にわたって紛争状態が続いており、出産に臨む女性と赤ちゃんをめぐる状況は、悪化の一途をたどっています。2015年に紛争が勃発する以前から、イエメンは中東の最貧国で、世界でも最も貧しい国々のひとつでした。今年、世界は子どもの権利条約採択30周年を迎えますが、イエメンの子どもたちは今この瞬間も、紛争によって多大な犠牲を強いられています。
© UNICEF/UN0318249/Baholis |
今日、イエメンで起きている残忍な紛争によって、子どもたちは権利と命を奪われています。また生き延びている人々も、質の高い保健ケアを受けることができません。これは母親が出産前後の適切なケアを受けられない、ということも意味しています。紛争による影響の一つは、こうした出産・養育に対して現れています。
母親と赤ちゃんは、イエメンでもっとも弱い存在です。妊娠中や出産時の合併症が原因で、母親は2時間に1人、新生児は1時間に3人の割合で、命を落としています。
(2015年-2018年の統計)
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母親と出産をサポートする保健ケアを含む、必要不可欠な公共サービスは、崩壊寸前です。国内の保健施設のうち、全面的に機能しているのはわずか51%で、さらに機能している施設においても、医薬品、設備、スタッフの不足が深刻です。
イエメンは、人道危機の深刻な影響を受けているうえ、コレラの流行や飢餓などの緊急事態への対応も迫られています。そのため、日常のプライマリ・ヘルスケア・サービスの提供も難しくなっており、このことが、出産前後のケアや産科緊急ケアを含む、広範な母子健康サービスへのアクセスを制限しています。
サヌア、タイズ、アデンで実施した、女性たちへのインタビューによる保健ケアサービスの調査によると、自宅出産は増加傾向にあります。家族は日に日に貧しくなっており、過去に合併症を経験している場合を除いて、医療ケアを受けずに自宅での出産を選ぶ女性が増加していることが、明らかになりました。
カイザランさんは、2018年12月、助産師の付き添いなく、自宅で出産しました。そして産後5時間もたたずに、大量出血が原因で、生まれたばかりのアリくんを残し、亡くなりました。母親を亡くした赤ちゃんにとってはもちろん、家族全員にとって悲劇でした。
夫であるヤヒヤさんは、カイザランさんの陣痛が始まっても、病院や保健センターに連れて行くための手段も治療にかけるお金も、ありませんでした。ヤヒヤさん夫婦の状況はイエメンではごく一般的で、保健施設で生まれる赤ちゃんはわずか3分の1未満です。
産科緊急ケアのタイミングで、もしヤヒヤさんが妻を病院に連れて行くことができていたら、カイザランさんの命は助かっていたことでしょう。しかし、交通手段を見つけることもできず、カイザランさんは、ヤヒヤさんの腕の中で命を落としました。
© UNICEF/UN0318206/Alahmadi |
アリくんは現在、叔母と暮らしています。3歳の子どもがいる叔母は、アリくんも自分の子どもと同じように育てようとしていますが、アリくんが無事に成長できるかどうかは定かではありません。アリくんには他に7人の兄姉がいますが、みんな16歳未満で、母親の死によって、学校を中退せざるを得なくなりました。
子どもの生存と、母親の生存は、密接に関わっています。母親が亡くなったとき、子どもの死のリスクが著しく増加します。もし女性が、妊娠前後や出産時に、家族計画や質の高い保健ケアへのアクセスがあれば、ほとんどの母親の死は防げる可能性があります。
妊娠中、出産時、あるいは出産直後に、質の高いサービスにアクセスできることは、新生児と母親の命を守るためのカギです。出産にまつわるケアは非常に重要で、サービスを受けられるかどうかが、母親と赤ちゃんの生死を分けることも少なくありません。
© UNICEF/UN0318227/Alahmadi |
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