【2019年7月19日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)は本日、子育て支援策(“家族にやさしい政策”)に関する最新の根拠と新たな提言を発表し、企業と政府は、貧困を削減し、子どもの健康な発達およびおとなの仕事上の成功を支えるために、家族に直ちに投資する必要があると指摘しました。
今回発表した『家族にやさしい政策:未来の職場の再設計(原題:Family-Friendly Policies: Redesigning the Workplace of the Future)』によれば、世界中の大多数の親は、有給の(給付が受けられる)育児休業制度、母乳育児休憩、子どものための手当、安価なかつアクセス可能で質の高い就学前教育・保育などの施策を、まだ利用できません。
ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは述べています。「子どもたちの人生において幼年期に勝る重要な時期は他にありません。だからこそ、企業と政府の育児政策や施策に関する、変革が必要なのです。それらは子どもの脳の健康的な発達を支えるだけでなく、親子の絆を強固にし、大きな経済的および社会的利益をもたらします」
『家族にやさしい政策』は、子育て支援策の健康面、教育面および経済面の利益に関する根拠に基づき、以下の4つを提言しています。
1. 給付のある育児休業: 政府と企業は、給付が受けられる、最低18週間の母親の産前産後休業、最低6カ月間の育児休業(両親)を保障し、さらに12カ月までの育児休業制度を整備するよう努力すべきです。
世界中の労働者の3分の2近くがインフォーマル・セクターで働いており、育児休業や支援に関する権利に影響を及ぼしています。
© UNICEF/UN0315710/Sokol |
低中所得国では、産前産後休業を1ヵ月間延長すれば、乳児死亡率が13%減少することがわかっています。高所得国では、給付のある育児休業が1週間追加されれば、シングルマザーが貧困の中で生活する可能性が4%以上も引き下げられます。また、完全母乳育児の促進も支えます。
育児休業はまた、従業員の離職率の低下、採用と研修費用の削減、および経験豊富な従業員の維持にも役立ちます。過去数十年の間にこれらの政策を実施してきた国々では、女性の雇用の増加が一人当たり国内総生産(GDP)の伸びを10%から20%押し上げてきました。
2. 母乳育児支援: 授乳や搾乳の時間を就業時間中に定期的にとれることや、適切な設備を含む支援的な環境があれば、母親が復職してから完全あるいは補完母乳育児を継続する手助けとなります。最新のデータによれば、6カ月未満の子どもたちの40%のみが、推奨されているとおり母乳育児されていました。職場は母乳育児に対する障壁となっており、約16%の職場には母乳育児を支援する法的要件がありません。
母乳育児は、乳児期の急性疾患および慢性の小児疾患の発症率の低下に加え、認知や教育の成果を向上させます。母親の健康についても、産後うつ発症の低下、身体的健康の改善および乳がんの生涯リスクの低下が見込まれます。最適な母乳育児の実践は、1米ドルの投資に対して35米ドルの収益があるとの推計があるなど、社会的利益を生み出します。
3. 普遍的な就学前教育・保育: 育児休業の終わりから小学校入学までの、安価で質の高い教育・保育への普遍的なアクセス。質の高い就学前教育・保育を受けた子どもたちは、より健康でよりよく学び、より長く学校に通い、おとなになった時により高い収入を得ています。女性のエンパワーメントに不可欠な育児施策は、育児と仕事上の義務や希望を満たすことの両立を可能にします。
4. 子どもを対象とする手当: 最年少の子どもから始めて、普遍的な給付に向けて取り組むことで、すべての子どもへの現金給付を拡大します。そのような手当はあらゆる国で幼児を対象とする社会保障の一部であるべきです。
最近の分析によれば、欧州と中央アジアの88%からアジア太平洋地域の28%、そしてアフリカの16%と幅があるものの、全世界の3世帯のうち1世帯のみが子ども/家族を対象とする手当を受け取っています。これは貧しい国の大半の子どもたちは、最も貧しい層の世帯に住んでいても、彼らの発達を支える手当の恩恵にあずかれていないことを意味しています。
© UNICEF/UN0312696/Sokol |
フォア事務局長は、「健康状態の改善、貧困の削減、生産性の向上、経済成長など、家族にやさしい政策で得られる成果は実行のコストをはるかに上回ります。家族への投資は賢い社会政策であるだけでなく、賢い経済政策でもあるのです」と述べました。
この政策提言は19日、ニューヨークの国連で、ビジネスリーダー、政策立案者、市民社会および国連機関が参加するサミットにて発表されました。
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