【2019年3月21日 ベトナム・アンザン省発】
安全な水と清潔な環境は、子どもたちや家族の健康に欠かせません。ユニセフがベトナムで行っている水と衛生の取り組みについて、ユニセフ・ベトナム事務所の水と衛生専門官Nguyen Thanh Hienによる報告です。
©UNICEF Viet Nam/Truong Viet Hung |
多くの人にとっては当たり前のことのような話かもしれませんが、ベトナム南部メコンデルタ地方の奥地に位置するアンザン省に暮らすバオくんとカーくん兄弟は、誇らしそうに自分たちの話をしてくれました。
簡素な家ですが、今回新しく設置されたトイレと手洗い場を指差して笑みを浮かべます。彼ら兄弟だけでなく、妹や祖父母にとってもトイレと手洗い場は非常に意味のあるものです。家族は今、病気の脅威に晒されることなく、安全な水と清潔な衛生設備を利用して健康的な生活を送っています。
同省アンフー県フックフン村に住むバオくん家族は、最近まで家にトイレがなかったため、草むらや用水路といった屋外での排泄を余儀なくされていました。家にトイレがあることは劇的な変化です。
バオくんとカーくんは、ユニセフが支援する、子どもたちに正しい手洗いと衛生習慣を定着させることを目的としたトリガリングと呼ばれる「衛生への気づきの授業」に二人で参加しました。それ以来、家族の生活は変わりました。家を離れ、ホーチミンで働いている両親に代わり一緒に暮らしている祖父母に対して、二人はトイレと手洗い場を設置するよう頼みました。建設費用の1,100万ベトナムドン(約500米ドル)は、祖父母の退職年金と両親からのわずかな援助でまかないました。
©UNICEF Viet Nam/Truong Viet Hung |
兄弟はユニセフが2016年からアンザン省の40校で実施している学校衛生改善の支援を受けている15,000名の生徒のうちの2名です。この支援活動は日本の花王株式会社様から寄せられた資金をもとに実施されています。これまで不衛生であった18校の設備を改良し、40校の教員170名を対象に衛生設備の運営や維持管理、学校での衛生活動について研修を実施しました。さらに、正しいトイレの使用方法と石けんを使った手洗いの指導の一環として、子ども同士が休憩時間の行動を確認しあう衛生促進チームが結成されました。そのおかげで、子どもたちが学校で習慣を定着させ、水と衛生のチャンピョンと呼ぶ役になり子どもから地域の家庭へと衛生的な行動を普及しています。
©UNICEF Viet Nam/Truong Viet Hung |
そして、実際にこういった活動の成果があらわれはじめています。
2017年末時点で、140の村が保健省の定める基準を満たし、屋外排泄根絶を達成し、22万人もの住民が恩恵を受けています。またアンザン省で実施した学校衛生プロジェクトと屋外排泄根絶のモデルは、ユニセフが活動の重点省とする別の地域にも応用されています。中央政府は学校の衛生環境の整備と、国全体の屋外排泄根絶に向けてより一層努力を重ねています。
ベトナムでは80%以上の学校に衛生施設が備え付けられています。しかし、完璧な状態で利用されているものは少なく、少数民族が多く暮らす農村部の遠隔地では激しく破損しているものが多くあります。そのため、手洗いと衛生習慣の普及が妨げられており、なかでも月経を迎える女の子がその影響を強く受けています。
ベトナムは、ここ数十年でめざましい経済成長を遂げましたが、2,600万人の子どもすべてがその恩恵を受けられているわけではありません。2011年時点で1,500万人以上が屋外排泄をしていた、もしくは、不衛生なトイレを利用していました。また2014年には、重要なタイミングで石けんを使って手を洗う人の割合はわずか13%しかいないという衝撃的なデータが明らかになりました。貧しい家庭や少数民族ではさらに低い割合であることも分かっています。
こうした課題に取り組むために推定70%の人が衛生設備にアクセスしていないとされている北部の山岳地域ディエンビエン省に活動を広げました。同省は少数民族が多く暮らす地域です。花王株式会社様からの協力を得て5年間で両地域の60校、35,000名の子どもたちに支援を届ける活動を計画しています。
「KAOのサポートによって、アンザン省の学校やコミュニティの水と衛生状況が明らかに改善されています。ディエンビエン省に活動の幅を広げることで、支援を必要とするより多くの子どもがプログラムから恩恵を受けます。ベトナムの子どもたちに代わって、子どもと家族の生活の質の向上へあたたかい協力を寄せていただき、心から感謝しています。」Nguen Thanh Hen 水と衛生専門官は言います。
©UNICEF Viet Nam/Truong Viet Hung |
本文の原文(英語)は、ユニセフ・べトナム事務所ホームページでご覧いただけます。
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