【2020年1月20日 ダボス/ジュネーブ/ニューヨーク発】
ロンドンの世界教育フォーラム(1月19-22日)で教育大臣が一堂に会し、ダボスの世界経済フォーラム年次総会(1月21-24日)で指導者が招集されるなか、ユニセフ(国連児童基金)は本日発表した報告書の中で、世界の最貧困層の10代の少女*の約3人に1人が学校に1度も行ったことがないと指摘しました。
© UNICEF/UN0335755/Bindra |
貧困、ジェンダーや障がい、民族または教育言語による差別、学校までの距離、インフラの未整備など、最も貧しい子どもたちが質の高い教育を受けることを妨げる障壁となっています。あらゆる段階で教育機会を失うことは、貧困の永続を招き、世界的な教育危機の主な原因となっています。
報告書『教育危機:最貧困層の子どもたちのための教育資金調達の緊急の必要性』は、教育への公的支出の分配において大きな格差があることを強調しています。資金が限定的かつ不公平に分配されると、1クラスあたりの生徒数が増え、教師への研修が不十分になり、教材が不足し、学校のインフラ設備が不十分になります。これは、出席、入学、学習に悪影響を及ぼします。
「どこの国でも、最も貧しい子どもたちを置き去りにしています。そうすることで、自らをも置き去りにしているのです」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。「教育への公的支出の対象が最も裕福な家庭の子どもに偏っている限りは、最貧困層が貧困から抜け出し、今日の世界で競争し成功するために必要なスキルを学び、自国の経済に貢献する望みはほとんどないでしょう」
© UNICEF/UN0264213/Brembati |
本報告書では、42カ国の入手可能なデータに基づき、最も裕福な20パーセントの世帯の子どもの教育に対し、最も貧しい20パーセントの世帯の子どものほぼ2倍の教育資金が割り当てられていることを指摘しています。
教育支出の格差は、アフリカ10カ国**が最も大きく、最貧困層の子どもの4倍の資金が最富裕層の子どもに割り当てられています。また、学校に通えない子どもの割合が世界で最も高い国のひとつであるギニアや中央アフリカ共和国では、最富裕層の子どもは、最貧困層の子どもよりも割り当てられる公教育資金がそれぞれ9倍と6倍になっています。
調査対象国のうち、五分位階級別に見た所得が最富裕層と最貧困層の子どもに対し教育資金が均等に分配されていたのは、バルバドス、デンマーク、アイルランド、ノルウェー、スウェーデンのみです。
本報告書では、最貧困層の子どもたちを対象とした教育資金が不足しているために、学校が生徒に対し質の高い教育を提供できず、教育危機が悪化していると指摘しています。世界銀行によると、低・中所得国に住む子どもの半数以上は、小学校を卒業するまでに、簡単な物語すら読んだり理解したりできるようになりません。
© UNICEF/UNI233449/Kanobana |
本報告書は、各国政府に対し明確な指針を示しています。
「私たちはいま、重要な岐路に立っています。子どもたちの教育に賢明かつ公平に投資すれば、子どもたちが機会を得たり、自ら機会をつくり出すために必要なスキルを得ることができ、子どもたちを貧困から救う可能性を最大限に高めることができるでしょう」(フォア)
*最貧困層の10代の少女に関するデータは、五分位階級別に見た所得が最貧困層に属し、学校に行ったことがない10-19歳の少女を指す。
**教育への公的支出の格差が最も大きいアフリカ10カ国は以下の国:ギニア、中央アフリカ共和国、セネガル、カメルーン、ベナン、ニジェール、ルワンダ、ガーナ、トーゴ、チュニジア。
* * *
■ 関連報告会のご案内
(公財)日本ユニセフ協会は、本報告書の発表の機会をとらえ、シリア難民のユニセフ親善大使として緊急人道支援の現場における教育支援の高い重要性を訴え続けているマズーン・メレハン氏をゲストスピーカーに迎えて、報告書の概要紹介、メレハン大使の講演等を通じて、日本の官民による教育分野への一層の支援を訴える報告会を開催いたします。詳しくは、こちらからご覧いただけます。
シェアする