2021年10月11日ニューヨーク/パナマシティ発
コロンビアとパナマを隔てるジャングルであり、北米を目指す移民にとって最も危険な場所の一つであるダリエン地峡(Darien Gap)を徒歩で横断する移民の子どもの数が過去最多になったと、ユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしました。
1万9,000人の子どもが通過
今年はこれまでに約1万9,000人の子どもたちがダリエン地峡を通過しており、これは過去5年間に登録された合計人数の約3倍にあたります。コロンビアとパナマの国境を越える移民の5人に1人以上は子どもです。そのうち半数は5歳未満です。
草木が生い茂る熱帯林の中で、子どもを連れた移民家族は特に、犯罪組織からの性的虐待、人身売買、恐喝などの暴力に晒されます。ダリエン地峡を渡る子どもたちは、下痢、呼吸器系疾患、脱水症状など、すぐに処置が必要な病気にかかる危険性もあります。
ユニセフ・ラテンアメリカ・カリブ海諸国地域事務所代表のジーン・ゴフは、「ダリエン地峡を徒歩で横断する子どもたちはみな、苦難を生き延びた子どもたちです」と語ります。「ジャングルの奥深くでは、野生動物や昆虫、安全な飲料水がなくなることと同じくらい、強盗、レイプ、人身売買の危険があります。毎週のように、この危険な旅の途中で命を落としたり、親を失ったり、親戚とはぐれたりする子どもたちが増えています。犯罪グループは、そうした最も弱い立場に陥った子どもたちに付け込むのです」
ジャングルでの被害も
今年、少なくとも5人の子どもがジャングルで亡くなっているのが発見されました。また今年に入ってから、生まれたばかりの赤ちゃんを含む150人以上の子どもたちが親のいない状態でパナマに到着しており、昨年に比べて20倍近くに増えています。
ダリエンのジャングルでは、犯罪組織が人々を脅す道具として性的暴力を意図的に利用するケースが増えています。ユニセフが2021年1月から9月の間に記録した、ジャングルを渡る10代の女の子への性的虐待は29件。さらに多くの女性が同様の被害を報告しています。
「現地で活動するユニセフのチームは、これほど多くの幼い子どもたちがダリエン地峡を横断しているのを、これまで見たことがありません。南米から北米へ向かう子どもたちがこれほど急増していることは、パナマだけでなく、地域全体で深刻な人道的危機と捉え、早急に対処しなければなりません」(ゴフ)
家族と離ればなれになった子を支援
アフリカや南アジアなど、50以上の国籍の移民たちが、このルートを使って米国を目指しています。半数はハイチ出身で、その多くはチリやブラジルで生まれた子どもを連れています。
コロンビアでは、ユニセフとパートナーは、ネコクリ(Necocli)の波止場のある地域で、水と衛生サービスの提供を支援しています。その地域では、特に子どもを含む1,000人以上の人々がパナマへ渡る輸送手段を待っています。また、地方自治体と協力し、移動チームを通じて、同伴者のいない子どもや家族と離ればなれになった子どもたちを確認しています。
パナマでは、移民の子どもたち、特に親と離れ離れになってしまった子どもたちに、心理社会的支援と保健サービスを提供しています。また、暴力を受けた子どもたちを地域の保護サービスにつなぐ支援も行っています。
さらにユニセフはパナマ政府とともに、バホ・チキート、ラハス・ブランカス、サン・ビセンテの3つの移民受け入れセンターで、毎日1,000人に安全な水を、そして移民の女性や10代の女の子たちに衛生キットを配布しています。
移動している子どもの保護を
ダリエン地峡にいる移民の子どもたちや家族の数が、今後数週間から数カ月の間にさらに増えることが予想されており、ユニセフはパナマとコロンビアの間を移動する子どもたちや家族の緊急のニーズに対応するため、人道支援の規模を拡大しています。
米国国務省人口難民移民局(PRM)および欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)の支援を受け、現地にいるユニセフのチームとパートナーは、保健、水、衛生、保護、心理社会的支援、栄養など不可欠なサービスの提供を強化しています。
ユニセフは各国政府に対し、移動している子どもたちの保護を徹底し、より強固な人道的対応を関係各国で展開するよう求めています。受け入れコミュニティへの移民家族の統合を促進すると同時に、彼らが移住に至った根本的な原因に対処しなければなりません。