2021年11月18日ニューヨーク発
ユニセフ(国連児童基金)とギャラップ社が11月20日の「世界子どもの日」を前に発表した新しい国際調査によると、世界は世代を追うごとにより良い場所になっていると考える子どもと若者の割合は、年上の世代(ここでは40歳以上)と比較して約50%も高いことが分かりました。
若者の意識調査結果発表
今回の調査『変わりゆく子ども時代プロジェクト(原題:The Changing Childhood Project)』では、子どもや若者は、子ども時代そのものは改善されたと考える傾向が強く、現代の子どもたちにとって、保健・医療や教育、身体的安全性は、親の世代と比較して向上したと考える人が圧倒的に多いことが明らかになりました。
しかし、楽観的な考え方をしているとはいえ、彼らは決して考えが甘いわけではなく、気候変動への対応に焦燥感を表したり、ソーシャルメディアで入手した情報に対して懐疑的な見方をしたり、憂うつ感や不安感に悩まされたりしています。また、彼らは年上の世代に比べて、自分を地球市民として捉え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのような脅威に対処するための国際協力を重視する傾向にあります。
この調査は、複数の世代に、世界に対する見方や現代の子ども時代とはどのようなものかを問う初めての試みです。21カ国に住む2万1,000人以上を2つの年齢群(15〜24歳および40歳以上)に分けて、調査が行われました。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカのすべての地域、およびすべての所得水準の国で、全国的な調査が実施されました。
<本調査対象21カ国>
アルゼンチン、バングラデシュ、ブラジル、カメルーン、エチオピア、フランス、ドイツ、日本*、インド、インドネシア、ケニア、レバノン、マリ、モロッコ、ナイジェリア、ペルー、スペイン、英国、ウクライナ、米国、ジンバブエ
*日本の調査結果は、本記事一番下の<日本の調査結果抜粋>をご参照ください
そのデータは全体的に、若い世代がグローバル化の影響を強く受けていることを表しています。例えば、若者(39%)は、年上世代(22%)と比較して約2倍の割合で、国や地域の一員というよりも、国際社会の一員であるという認識をしています。年齢が1歳上がるごとに、地球市民であると認識する割合は約1%低くなります。
声に耳を傾けることを望む若者
また、パンデミック中に実施されたこの調査では、子どもや若者は全般に、正確な情報源として各国政府や科学者、国際的な報道機関をより信頼していることが分かりました。なおかつ、最近の若者は、世界が直面している様々な問題も認識していることが明らかになっています。
- 若者の大多数は、オンライン上には、暴力的または性的に露骨なコンテンツを目にする(78%)、いじめに遭う(79%)といった子どもたちにとって深刻なリスクがあると考えています。
- 正確な情報を提供してくれるものとしてSNSを「とても信頼している」と答えた若者は、わずか17%です。
- 低・中所得国に住む若者の64%が、自国の子どもたちは親世代よりも経済的に恵まれた生活を送ることができるだろうと考えている一方で、高所得国に住む若者たちは今後の経済発展をほとんど信じていません。高所得国において、現代の子どもたちがおとなになった時に親世代よりも恵まれているだろうと答えた若者は3分の1にも達していません。
- 3分の1以上の若者が、緊張や不安を感じることが多いと回答しており、約5人に1人が、しばしば憂鬱な気分になったり、何かをする気が起きなくなったりすると回答しています。
- 平均で59%の若者が、現代の子どもたちは親よりも成功しなければならないというプレッシャーに直面していると回答しています。
またこの調査によると、若者たちは、差別撤廃に向けたより迅速な取り組み、各国間の協力関係の強化、そして意思決定者が彼らの声に耳を傾けることを望んでいます。
- 気候変動について認識している若者の約4分の3が、各国政府は気候変動に対応するためのしっかりとした行動をとるべきだと考えています。この割合は、気候変動の影響が最も大きいと予想される低・中所得国でさらに高くなっています(83%)。
- ほぼすべての調査対象国で、若者の大多数が、各国政府が単独ではなく他国と協力して活動すれば、COVID-19のような脅威から自国を守ることができると回答しています。
- 若者はLGBTQ+の権利をより強く支持しており、若い女性たちは平等のための戦いを主導しています。
- 平均して15歳~24歳の若者の約58%が、政治家が子どもの声に耳を傾けることは非常に重要であると考えています。
世界をより良い場所に
今回の調査はまた、特に気候変動、教育の重要性、グローバルな協力関係、子どもの主体性などいくつかの分野では、若者と年上世代の間で一致する部分があることも示しています。反対に、楽観主義、グローバルマインド、歴史的進歩の認識などについては、世代間に最も深い溝が生じています。
「子どもや若者は、おとなのように暗いレンズを通して世界を見ようとはしません。年上の世代と比べて、世界の若者は希望を持ち続け、よりグローバルな視点を持ち、世界をより良い場所にしようと決意しています。今日を生きる彼らは、将来への不安を抱えながらも、自分たちが解決策の一部であると考えています。来月のユニセフ創立75周年、そして世界子どもの日を目前に控え、彼らの幸福や生活がどのように変化しているかについて、彼らの声に直接耳を傾けることが重要です」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。
毎年11月20日は世界子どもの日です。適切な保健・医療、栄養、教育、保護を受ける権利を否定されている何百万人もの子どもたちへの認識を高め、彼らの将来を議論する上で重要となる若者の声をもっと取り入れていくことを目指す日です。
<日本の調査結果抜粋>
- 毎日インターネットを使うと答えた子ども・若者の割合と年上の世代の割合の差が、21カ国の中で最大(子ども・若者が96%、おとな世代は58%)。
- 年上世代の75%が、子どもたちがオンラインで知り合った人と実際に会うことは危険だと考えているのに対し、子ども・若者世代でも66%がそのように考えている。
- 子どもと若者の23%が、しばしば心配、緊張や不安を感じると回答したのに対し、年上の世代ではその割合は18%。
- 世界は世代を追うごとに良くなっていると考える割合は、子ども・若者で63%、年上世代で26%、その差が21カ国中で最大。
- 今の子どもたちが日本でおとなになった時に、親世代より経済状況がよくなっていると考えている割合は子ども・若者で28%(21カ国中最も低い)、年上世代で22%。
- 自分がどこの一員と考えるかの質問で、子ども・若者の23%が「地域」、54%が「国」、22%が「世界」と回答。世界への帰属意識はバングラデシュ、インド、インドネシア、マリに次いで低い方から5番目。
- LGBTQ+の人々が公平に扱われることがとても重要だと答えた割合が子ども・若者で76%、年上世代で45%。その差は21カ国中最大。子ども・若者ではスペイン、米、独、英、ブラジルに次いで高い方から6番目。
- 国際ニュースメディアを正確な情報源として「とても信頼する」と答えた割合が子ども・若者で28%、年上世代で13%。世代間の差が最も大きい3カ国の一つ(ほかはエチオピア、インドネシア)。
■ 調査と報告書のデータ一式を記録したインタラクティブ・プラットフォーム(英文)は、こちらからご覧いただけます。