メニューをスキップ
日本ユニセフ協会

お知らせ

ユニセフ「日本型CFCI実践自治体」紹介
Vol.02 北海道ニセコ町
~子どもの力を借りて、社会を元気にする~

2022年2月15日発

5回に渡り、自治体のご担当者へインタビュー形式でユニセフ「日本型CFCI実践自治体」をご紹介しています。
第2回目は北海道ニセコ町です。ニセコ町でCFCIを担当されている、教育委員会こども未来課の淵野伸隆さんにお話をうかがいました。

ニセコ町にとっての「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」とは

Q. なぜニセコ町ではCFCIに取り組もうとされたのですか?

ニセコ町教育委員会こども未来課 淵野伸隆さん 写真提供:ニセコ町

ニセコ町では、まちづくり基本条例(平成13年4月施行)に子どものまちづくり参加を規定(第11条)して、この間いろいろな取り組みをしてきました。ただどうしても「子どもの人権」というと、大切だと分かっていても「条約レベルの話だ」いうことで縁遠いと感じる部分が、担当職員も含めてあったのではないかと思います。そうした中で、子どもの人権を守るにためはどうやって進めるかを考えるきっかけになると捉えてCFCIに参加したというのが経緯です。

ニセコ町は、開拓からの歴史的な経過から見ても、CFCIの考え方が町のまちづくりの理念と合っていると感じています。これまで町が進めてきた事業や考え方を、CFCIが後押し、裏打ちしてくれる、そんな風に考えて取り組みをスタートしています。

Q. ニセコ町の持続可能性を図るためにCFCI以外の取り組みはありますか?CFCIとはどう関係しますか?

ニセコ町はSDGs未来都市ということで指定をいただいています。その中でいろいろな取り組みをしていますが、CFCIも含めて、まちの取り組みのほとんどすべてがSDGsにつながるのではないかと思っています。町民向けに作成している予算説明資料「もっと知りたいことしの仕事」の中にも、「町の取り組みとつながっているSDGs」という図があります。SDGsの目標と町の施策との関係性を円の中にまとめて表現しています。これを見ていただいてもわかるように、町の仕事はほとんど、SDGsと何らかの関係があって、CFCIもSDGsの取り組みの一つです。

また、CFCIに取り組むことで、子どもの育つ環境が良くなっていけば、人口の問題にも有効なのかなと思います。例えばニセコ町には、町が誘致したインターナショナルスクールがありますが、そういった教育環境が整っているとか、子どもの多様性が認められているとか、そういった点を評価されて移住を決められる方もいらっしゃいます。そういう意味で、子どものための施策が人口施策にもつながっているのではないかなと思います。

「町の取り組みとつながっているSDGs」(ニセコ町webサイトより)

Q. ニセコ町では、CFCIに取り組まれるにあたって、教育委員会の中にこども未来課を新設して進められています。なぜ教育委員会だったのでしょう?

教育というのは、単に学校で学ぶことだけではなく、生まれてから亡くなるまでずっと成長していくこと、学んでいくことすべてが教育だととらえています。ニセコ町では、平成19年度に保育所と幼稚園を一元化した幼児センターを整備したのですが、それも当初から教育委員会の運営でやってきました。つまり、子どもの育ちや学び、そういうことはすべて教育なのだと。学校も家庭も地域もみんなで子どもを育むという意味で、CFCIを主管するこども未来課も教育委員会に位置付けられたということです。中でも行政が縦割りになっていた未就学の子どもの分野は、今後、力を入れていくということを明確にして強化していくために、独立した新しい課をスタートさせました。

ともすれば社会の中に「子どもを育てる役割は学校」という認識があるのではと思います。大切なことは、CFCIを地域のみなさんやNPO等の団体のみなさん等、みんな一緒になって取り組み、地域全体で子どもを育てること。学校もその一部だし、その全体が教育だという感覚で子どもの育ちを見ていけるといいなと思います。

CFCIの難しさと成果

Q. CFCIは子どもの権利を地方自治体が訴求する取り組みです。この点に関し難しさはないですか?

特に私たちのように小規模自治体の場合、地域の人と身近に顔が見えて、人と人との関係が近いところで仕事をしている現場です。リアリティがないと施策として受け入れてもらえないところがあると思います。単に子どもの権利というだけだと、抽象的、理念的で理解を得るのが難しい。子どもの権利を訴求して何が生まれるのか、どういうものを目指していて、具体的にどんなことができるのかというのを見せていく必要があると思います。そのあたりが難しさです。

Q. CFCIでは、分野横断的に取り組んでほしいと言っていますが、この点で苦労されたことはないですか?

ニセコ町では、まちづくり基本条例の規定を受けて、子ども議会や子どもまちづくり委員会といった事業を行ってきています。子ども議会は、開始当初から、本当の議会と同じ対応で実施してきました。20年近くやってきていますので、子どもの意見も聴かなければならないという意識が、役場全体に共通認識としてあると思います。ですので、CFCIについても比較的スムーズに受け入れられたのではないでしょうか。また、このくらいの人口規模の自治体の強みだと思うのですが、自分の担当以外の仕事であっても、ある程度は他の部署の仕事のことも知っていないと、全体の仕事が進んでいかないという面があります。新しい課題や取り組みにも全員でやるという風土があるのです。こうしたこともあって、CFCIの取り組みもそれほどハードルが高くなかったと思います。CFCIに参加した当初から、毎月開催される管理職が集まる会議をうまく活用してCFCIのPDCAをうまく回していこうと考えて進めました。役場全体で共通理解を図りながらこの事業も進めてきましたので、縦割りをあまり意識せずに進められたのかなと考えています。

一方で、かなり難しい面もあります。子ども議会で子どもの意見を聴いていますが、毎年同じような意見が出ることもあります。ということは、意見をきちんと反映できていない面があるということだと思うのです。例えば、「通学路で車の量が多くて怖い思いをした」とか、「町の中にもっとお店が欲しい」とか。子どもに対して「聴いてるよ」だけで終わらせないで、全庁的に真剣に受け止めて、実現につなげて、「君たちの意見がまちづくりに生きているんだよ」ということをしっかり伝えていかないといけないと思っています。そこがいちばん大事なことだろうと思っています。そしてさらに、子どもから出る意見の反映は、きっと子どもだけでなく、お年寄りも含めたみんなが暮らし社会につながるのだと思います。

子ども議会の様子  写真提供:ニセコ町

Q. CFCIに関わる、ニセコならではの取り組みや成果はありますか?

ニセコ町というのは、常に新しい取り組みを吸収しながら成長しているまちで、そこが魅力だと思っています。都市部や世界中から様々な人がこのまちに魅力を感じて来てくださって、そういうことがまちの成長につながっているのかなと思います。ですから、CFCIも早い段階から手を挙げて参加してきたことが、まずは「ニセコならでは」ではないかと思います。

また、縁遠いと思っていた子どもの人権というのも、身近なことに置き換えれば、結構自分たちも今までやってきたなということを改めて実感しています。CFCIの評価はルーブリック評価を使っていますが、自治体で指標を設定し進めることができるのはありがたいです。決められた何かをしなければならないということだとなかなか難しかったと思いますが、小さい自治体なら小さい自治体なりに、子どもの人権にもきちんと取り組めるということをしっかり認識できたことは一つの成果です。

今後の展望と取り組みを検討している自治体へのメッセージ

Q. CFCIの今後に取り組みたい計画について、短期的なものと長期的なものを教えてください。

町の執行方針では「子どもの笑顔が輝くまちづくりに努めていく」と打ち出しています。現在の町の総合計画にCFCIという言葉は入っていませんが、次期改定の際には、子どもの人権という言葉も含めて位置付けることができたらと思います。計画ということではないのですが、この事業の成果が明確に出るまでにはかなり時間はかかるでしょう。しかし、やり続けることが大事なのだと思います。やり続けていけば、時代の感覚というのが変わっていくということを期待したいと思います。

Q. これから取り組もうとする他の自治体に伝えたいことはありますか?

仕事の合間に幼児センター園児と触れ合うのが楽しみ、と話す淵野さん  写真提供:ニセコ町

「子どもは社会の宝」とか「子どもはかけがいのない存在」とか、そういうことをもう一度社会全体で確認していくということが必要なのではないかと思っています。そういう理念を社会全体で共有するためにも、他の自治体でも取り組んでいただけるといいと思っています。

大切なことは、いかに子どもたちの力を借りて、まちをよくしていくかということです。もしかすると私たちは勘違いをしていて、「子どもたちのために」と言って事業をすることがありますが、実はそうではなくて、子どもたちの持っている力を借りて社会を良くしていくことが今求められていると思います。CFCIをきっかけに、子どもたちの力を借りて、持続可能なまちをつくっていきませんか!

 

ニセコ町CFCI関連ページ>> 子どもにやさしいまちづくり(CFCI) - ニセコ町

 


 

ニセコ町基本情報(令和3年12月現在)

人口:4,938人(うち18歳未満 766人)

世帯:2,528世帯

面積:197.1k㎡

 

 

第3回目は東京都町田市です。

関連ページ