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日本ユニセフ協会

お知らせ

ユニセフ「日本型CFCI実践自治体」紹介
Vol.03 東京都町田市
~「子どもの意見を聴いて推進する」子どもにやさしいまちづくり~

2022年3月1日発

5回に渡り、自治体のご担当者へインタビュー形式でユニセフ「日本型CFCI実践自治体」をご紹介しています。第3回目は東京都町田市です。町田市でCFCIを担当されている、子ども生活部児童青少年課の浅井泰博さんと和久田友紀さんのお二人にお話をうかがいました。

町田市にとっての「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」とは

Q. なぜ町田市でCFCIに取り組もうとされたのですか?

和久田さん:町田市で重点的に実施している子ども施策について、客観的に評価できると考え、日本ユニセフ協会からの呼びかけもあり参加することにしました。「子どもにやさしいまち」をつくることは、子どものみならず、高齢者や障がい者を含むすべての住民に配慮したまちづくりを行うことにつながります。CFCIを実行することで、国際基準により新たな視点を取り入れて庁内のあらゆる施策をブラッシュアップすることができると考えます。また、ユニセフの理念に沿った施策を展開し、国際的な評価を得ることができるため、「このまちに住み続けたい」という子どもを含めた市民の誇りや愛着、定住意欲の醸成に繋がるものと考えています。

浅井さん:そうですね、ユニセフの理念に沿って子どもにとって住みやすい、子育て世帯にとって子どもを産み育てやすいまちづくりが実行されることがもっとも重要だと考えています。これはあくまで付帯効果として期待すべきものと考えますが、シティプロモーション的にも効果があるのではないかと考えています。実態として「子どもにやさしいまち」であることが市内外に発信されることで、結果的に市民満足度の向上や定住促進、人口減少対策の大きな要素にもなればよいと思います。

Q. 新たな視点で庁内のあらゆる施策をブラッシュアップということですが、CFCI以外の施策について教えてください。

子ども生活部児童青少年課 和久田友紀さん 写真提供:町田市

和久田さん:町田市では1993年に「町田市福祉のまちづくり総合推進条例」を制定しており、高齢者、障がい者、妊婦や子どもといったすべての人にとって住みやすいまちづくりを推進し、全国的な福祉のまちづくりのモデルとなってきました。また、地域や地球環境を守るために「ゴミになるものを作らない、燃やさない、埋め立てない」を基本理念としてゴミ減量に取り組んでいますが、それでも出てしまうゴミは、新たに建造したバイオエネルギーセンターで資源化します。現代将来のつけを将来の子どもに残さず、より良い環境を子どもに残し、持続可能な社会を創るための取り組みであると考えています。

子どもにやさしいまちを作るということは、「すべての人にとって住みやすいまちづくり」を目指すことにつながると思いますし、「より良い環境を子どもに残す」ということも同様に、広い意味でCFCIと一体性のある取り組みだと考えています。自治体において「優先順位の高い取り組み」は、他にも教育、保育、防災、衛生などが挙げられますが、このいずれもが、結果的に子どもをはじめすべての住民が住みやすいまちづくりにつながる取り組みとなる訳ですから、CFCIは全分野に共通する、最上位に位置する取り組みにあたるのではないかと考えています。

Q. 町田市ならではのCFCIの取り組みを教えてください。

子ども生活部児童青少年課 浅井泰博さん 写真提供:町田市

浅井さん:CFCIに関する事業で、町田市が特に力を入れているものは「子どもの居場所づくり」と「子どもの参画の推進」です。子どもの居場所づくりは、0~18歳の子ども達が自宅や学校以外に過ごせる場所を確保する取り組みで、子どもが放課後や休みの日に、その日の気分で過ごす場所を選べるような充実した内容を目指しています。
「子どもの居場所」には、子どもセンター、子どもクラブ、子ども創造キャンパスひなた村、放課後子ども教室、冒険遊び場などがあり、みんなで盛り上がりたいとき、室内で過ごしたいとき、自然の中で好きなことをしたいとき、それぞれに適した居場所(遊び場)を選べるようにしています。町田市では、これらの居場所の確保が子どもの過ごしやすさを高める上で非常に重要な取り組みであると考えており、CFCIの構成要素10を「屋内や屋外で子どもが自ら自由に選び、過ごせる居場所づくりの推進」としました。
「子どもの参画」では、例えば、市内の児童館に、利用者である子どもたちが館運営のルールを考える「子ども委員会」という組織があって、子どもたちの多くが、子ども委員会で「子どもの参画」の基礎を学び、その他の取り組みにも参画することで、活動範囲を拡大するといった好循環を生み出しています。その他の取り組みとしては、児童館を利用する子どもや若者が市長と語り合う「若者が市長と語る会」や、市の事業評価に高校生評価人が参加する取り組み、市政を考える子ども・若者グループ(名称:町田創造プロジェクト、略称「MSP」*)などが存在します。町田市ではこれらの取組を「子どもの参画の推進」として経営計画の重点事業に位置付けています。

*動画)まちテレvol.185「町田とユニセフの子どもにやさしいまちづくり」

Q.町田市ではCFCIの予算はどのようになっていますか?

和久田さん:現在は主に「調査等委託料」を計上しています。具体的には、「子どもにやさしいまちチェックリスト」(CFCIの基準。以下チェックリスト)を用いた子ども関連施策の評価(評価結果集計)や改善策の検討、関係部署との会議等に、外部の知見を取り入れながら検討を進めています。

Q.CFCIに取り組むのに緊急時と平時では違いはありますか?

浅井さん:新型コロナウイルス感染拡大防止のため、子どもの居場所を制限しなければならず、子どもにとって最善の利益を確保できているとは言えない状況がありました。緊急時は特におとなの都合が優先され、子どもの都合は軽視されがちですが、町田市では、子どもにやさしいまちをつくる観点から、この居場所づくりについては、最大限、事業の再開に努めました。たとえ緊急時であっても子どもの立場を包含した形で方針を決めるべきだと思います。平時でも緊急時でもCFCIのスタンスに違いはありません。

CFCIの難しさと成果

Q. CFCIは子どもの権利を地方自治体が訴求する取り組みです。この点に関し難しさはないですか?

浅井さん:どういうことをすると「子どもにやさしいまちづくり」をしたことになるのか、ということがまず分からないと、この取り組みは広がっていかないと思います。「この事業を遂行するとユニセフのこの理念が達成されるんだよ」というユニセフの理念や考えと市の事業の関係性を明らかできれば「なるほど、この事業を取り組めばよいのか」と自治体の担当者は理解でき、CFCIに自分が取り組んでいる実感を持てると思います。

和久田さん:町田市では、既存の施策のうちユニセフの理念に合致するものをピックアップし、足りない点は今後取り組むべき課題として整理しました。そして、まずはチェックリストの存在を知ってもらい、少しずつユニセフの理念を全庁に浸透させ、改善・実行に移してもらう。今年度ですとまずは子ども生活部内での実施、そして今後全庁展開というような、段階的な調整を行っています。CFCIでは、「子ども」に関する分野以外にも、「福祉」「環境」「都市整備」など、子どもを取り巻く様々な事柄について子ども達の意見を取り入れる必要があります。「子どもにやさしいまちづくり事業」というと、「子ども所管部だけが取り組む事業」というイメージが強いですが、他部署にも当事者意識を持っていただき事業を推進しなくてはならない点は、難しさだと思います。

浅井さん:また、子どもの分野でも教育と福祉は所管省庁や部局が異なるため、足並みを揃えることが難しいこともあります。ただ、例えば放課後児童対策などでは、文科省と厚生省が共管する計画として「放課後子ども総合プラン」を定めていて、自治体レベルでも、その計画の実行に向けて教育部門と福祉部門が力を合わせている訳ですから、部局間の相克を克服する努力がされているといえると思います。また、町田市では、ほかにも「新・町田市子どもマスタープラン」という子ども部門の部門計画を定めており、この計画には児童福祉に関する取り組みだけでなく教育委員会の取り組みも掲げていますので、両部局が連携して計画を推進する体制をとることで、縦割り行政の克服に努めています。

Q. 町田市でCFCIに取り組まれて3年程になりますが、成果はありましたか?

和久田さん:まず、チェックリストとの関連事業を明らかにし、事業所管課の理解を得る基礎ができました。次に、チェックリスト改善に向けた新たな取り組みとして「新規採用職員向け研修の実施」や「保育士向け研修」を実施したことで、複数の部署が連携する難しさや調整の手順、課題などを整理することができました。また、子どもの権利を題材として卒業論文を制作している市内の学生等が市ホームページを見て「ユニセフの取り組みについて教えてほしい」といった問い合わせをしてくることがありました。

「町田市市民参加型事業評価の様子」。市内在住の高校生が評価委員となり、有識者と共に市の事業評価を行っています。   写真提供:町田市

今後の展望と取り組みを検討している自治体へのメッセージ

Q. CFCIの今後に取り組みたい計画について、短期的なものと長期的なものを教えてください。

和久田さん:短期的な取り組みとしては、各課で対応可能な施策・事業の改善、新規事業実施を。そして、長期的な取り組みでは、複数の部署にまたがる施策・事業の改善、新規事業実施を検討しています。そのためにはまず、対象事業の洗い出しを行うことが必要であると考えます。

浅井さん:庁内理解の推進のためには、現在職員向けの研修を実施していますが、推進体制の構築としては今後、副市長をトップとした庁内横断的な推進会議を立ち上げる予定です。総合計画との融合にあたっては、2022年からスタートする「町田市5カ年計画22-26」において重点的に取り組むプランとして位置付けました。単に現状の取り組みを評価して終わりとならないように、これらを粘り強く実行することで、継続的な改善活動として定着させていくことが必要と考えています。

Q. CFCIを実践した結果、50年後、100年後の町田市はどうなっていると考えますか?他の自治体にはどのような影響を与えると思いますか?

浅井さん:子どもの権利条約がすでに履行され、子どもの権利が守られることが当たり前の社会となっているんではないでしょうか。当たり前すぎて「子どもの権利」という言葉自体が特に話題にあがることもなくなっているかもしれません。ユニセフの理念や考えが、自治体をはじめ子どもが育つ現場にしっかりと定着し、子どもたちがもともともっている能力や考えが大切にされ、子どもは「自分が社会の構成員として認められているんだ」という実感を持てる、それによってその社会やまちを好きになりオーナーシップを持つことができて、まちはより活性化する、そういった好循環を生み出している状態が望ましい姿だと思います。

和久田さん:CFCIの普及により、子どもへの理解が深まることで、市民の意識が変わり、男性の育児参加も広がり、男女共同参画が推進されると思います。例えば、テレワークや男性の育児参加の推進等は、男女共同参画事業とCFCIにおいて同時に成果を生むと考えられます。子どもにとって最善の利益は、その家庭あるいはそれに相当する組織の構成員として、共に過ごせる時間を持てる(居場所がある)ことだと思うためです。現在、町田市を含む5自治体が実施しているCFCIの取り組みは、個々には小さいものかもしれませんが、50年後、100年後には、その取り組みが全国に波及し、ユニセフと共に日本全体で子どもにやさしいまちづくりに取り組むというような大きな流れに町田市が寄与できれば、大変幸いです。

Q. これから取り組もうとする他の自治体に伝えたいことはありますか?

浅井さん:CFCI事業に取り組むことで、子どもに関する施策や事業を改善することができますし、他の自治体が子どもの権利を高めるためにどういう事業を展開しているのか、自治体同士で情報共有を図ることもできます。また、子どもの権利を具体化するには、やはり子どもに直接接している基礎自治体の協力無くしては進めることができないと思います。ぜひ一緒にこのCFCI事業に取り組んでいただけたらと思います。

和久田さん:子どもにとって直接的なサービスを提供する主体は地方自治体であるため、CFCIの理念の具体化にあたっては地方自治体の協力なくしては実行することができません。CFCIの推進に協力することは地方自治体の使命であると考えます。また、「子どもにやさしいまち」をつくるということは、子どものみならず、高齢者や障がい者を含むすべての住民に配慮したまちづくりを行うことにつながるため、取り組むべき事業であると思います。

町田市関連ページ>> 子どもにやさしいまちづくり(CFCI)-町田市


 

町田市基本情報(令和4年2月現在)

人口:430,215人(うち、18歳未満63,426人)

世帯:202,954戸

面積:71.55k㎡

 

第4回目は、奈良県奈良市です。

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