「ネットいじめについて知りたいことは何ですか?」
この質問を若い世代の人々に投げかけたところ、世界中から何千という回答が寄せられました。ユニセフはこれらの質問に答えるため、ユニセフの専門家、ネットいじめや子どもの保護分野の国際的な専門家を集め、さらにFacebook、Instagram、Twitterとも連携して、ネットいじめに対処する方法について、アドバイスをもらいました。
ネットいじめとは?
ネットいじめとは、デジタル技術を利用したいじめのことで、SNS(ソーシャルメディア)、メッセージアプリ、ゲームアプリ、携帯電話上でのやり取りなどで起きています。他の人を怖がらせたり、怒らせたり、恥をかかせたりすることを目的として繰り返される行動のことをさします。例としては、以下のようなものがあります。
- ソーシャルメディア上で、誰かを傷つける言葉や嘘の情報を拡散させたり、恥ずかしい写真を投稿する
- メッセージ・プラットフォーム上で、誰かを傷つけたり脅迫するようなメッセージを送る
- 特定の人になりすまして、悪質なメッセージを他の誰かに送る
実生活でのいじめとネットいじめは、しばしば同時に起こります。しかし、ネットいじめは対面の場合とは異なり、デジタルな足跡が残ります。この記録こそが、ネットいじめを止めるのに役立つ証拠となりうるのです。
若者から寄せられた質問と、専門家の回答
- .これってネットいじめ?冗談といじめは、どう見分けるの?>>
- .ネットいじめの影響って?>>
- .ネットいじめにあったら、誰に相談すればいい?>>
- .ネットいじめにあっていることを親に話すのが怖い…どう伝えたらいいの?>>
- .友達がネットいじめを報告したがらない場合、どう助けてあげられる?>>
- .インターネットを利用し続けながら、ネットいじめをなくすには?>>
- .ソーシャルメディア上で、個人情報の悪用を防ぐには?>>
- .子どもや若者がネット上で利用できる、いじめ防止ツールは?>>
1.これってネットいじめ?冗談といじめは、どう見分けるの?
友達なら、誰だって冗談を言い合うものです。しかし、特にネット上では、相手がただふざけているのか、それともあなたを傷つけようとしているのか、わからないことがあります。「冗談だよ」「まじめに受け取らないで」と笑い飛ばされることもあるでしょう。
けれども、もしあなたが傷ついていたり、他の人が「あなた『と』笑っている」のではなく、「あなた『を』笑っている」と感じたりする場合は、その冗談は度が過ぎているということになります。やめてほしいと頼んでもそのような行為が続き、あなたが嫌な思いをし続けるのであれば、それはいじめの可能性があります。
あなたが嫌な思いをし続けているのなら、我慢する必要はありません。信頼できる周囲の人に助けを求めましょう。ネット上であっても現実の生活であっても、誰もが互いに尊重されなければなりません。そのことをみんなが認識することが、ネットいじめをなくすことにもつながります。
2.ネットいじめの影響って?
ネットいじめにあうと、あらゆる場所で、自分の家にいる時ですら、誰かに攻撃されていると感じてしまうことがあります。逃げ場がないように思えることもあります。
ネットいじめで受けた心の傷は深く、長期間にわたって、さまざまな面に影響が及ぶ可能性があります。たとえば、精神的な面では、動揺、恥ずかしさ、愚かさ、怒りを感じたりします。情緒面では、自尊心や好きなことに対する興味を失ってしまったり、また身体面では、睡眠不足からの疲労、胃痛、頭痛などの症状が出たりします。他人から笑われたり嫌がらせを受けたりすることで、いじめのことを口に出せなくなったり、その問題と向き合いづらくなることもあります。さらに、命にかかわる問題につながることもあります。
このように、ネットいじめはさまざまな形で、心身ともに深刻な影響を及ぼします。
3.ネットいじめにあったら、誰に相談すればいい?
いじめられている、嫌がらせをされていると思ったらまず、両親や身近な家族、普段から信頼関係がある大人など、あなたが信じて頼れる人に助けを求めることが大切です。学校で起きているのであれば、スクールカウンセラー、部活の顧問の先生、話しやすい先生などに相談するのもいいでしょう。知り合いに相談しづらい場合は、国のヘルプラインにも相談窓口があります。
いじめがSNS上で起きている場合は、フォローを解除する、ブロックする、など相手から距離をとることを考えてください。また、いじめや不愉快な投稿を報告する機能を使うことも検討してください。ソーシャルメディア企業には、ユーザーの安全を守る義務があります。
テキストメッセージやSNS投稿のスクリーンショットなどを保存して、状況証拠を集めておくことも有効です。いじめをなくすには、いじめの存在を特定する必要があり、そのためには報告することが重要な鍵になります。実際に身の危険を感じたときは、警察や緊急サービスに連絡しましょう。
■国の相談窓口
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):電話(24時間)・SNS・窓口の無料相談
- 子どもの人権110番(法務省):電話・メールの無料相談
- 都道府県警察の少年相談窓口(警察庁)
■関連情報
- オンライン上の嫌がらせについて(Twitter)
- Facebook上で利用者からいじめ、嫌がらせ、または攻撃を受けた場合、どうすればよいですか(Facebook)
4.ネットいじめにあっていることを親に話すのが怖い…どう伝えたらいいの?
いじめられていることを親に話すのは、誰にとっても簡単なことではありません。その話を打ち明ける時は、親にあなたの話を聞く十分な時間がある時を選んで話すことが一つの方法です。あなたにとって、その問題がどれほど深刻なのかを説明してください。親はあなたほど、ネットやSNSについて詳しくない可能性もあるので、親が理解できるように説明をするということも忘れないでください。
親が即座に解決策を出してくれることは難しいかもしれませんが、きっとあなたの助けになりたいと思ってくれ、一緒に解決する方法を考えてくれるでしょう。それでもどうしたらいいかわからない時は、信頼できる他の人に相談することも考えてみましょう。あなたのことを心配し、助けてくれる人は、あなたが思っている以上にたくさんいます。
5.友達がネットいじめを報告したがらない場合、どう助けてあげられる?
誰もが、ネットいじめの被害者になる可能性はあります。もし、知り合いが被害にあっているのを見かけたら、支えになってあげてください。なぜいじめられたことを報告したくないのか?どんな気持ちなのか?など、友達の話に耳を傾けることが大切です。公に報告する必要はなくても、助けてくれる人に相談することはとても重要だということを伝えましょう。
友達の心はボロボロになってしまっているかもしれないということを、決して忘れないでください。どうか優しくしてあげてください。誰に何を言うべきか、よく考える手助けをしてあげてください。いじめを誰かに報告することを決めたのなら、一緒に行くことを提案してあげてください。一番重要なことは、あなたがそばにいること、そしてあなたが助けになりたいと思っていることを伝えることです。
それでも友達が報告したくないと言う場合は、その状況を助けてくれる信頼できる大人を、一緒に見つけてあげましょう。場合によっては、ネットいじめは命にかかわる問題に発展しかねないことを、忘れてはいけません。何もしないでいると、その人は「誰もが自分の敵だ」「誰も気にかけてくれない」と感じてしまうこともあるかもしれません。あなたの声かけで、きっと何かが変わります。
6.インターネットを利用し続けながら、ネットいじめをなくすには?
ネットいじめにあった時は、特定のアプリを削除したり、しばらくオフラインにして、心が回復するための時間をつくってみるのもいいでしょう。けれども、インターネットを利用しながら、ネットいじめをなくすためには、ネットいじめの存在を明らかにするために、勇気を出して報告をすることが重要です。
さらに、安全で理想的なインターネット世界の実現のためには、私たちみんなが、ネット上で発信をしたり、他人の投稿をシェアする前に、それらが他人を傷つける可能性がないかを、注意深く考えるようにならなければいけません。ネット上でも実生活でも、互いを思いやることが必要です。それは、私たち一人ひとりの行動にかかっています。
7.ソーシャルメディア上で、個人情報の悪用を防ぐには?
オンライン上に何かを投稿したりシェアしたりする前に、もう一度考えてください。それは永遠にオンライン上に残り、後々あなたを害するために利用される可能性もあります。住所、電話番号、学校名などの個人的な情報は決して公開してはいけません。
また、お気に入りのSNSのアプリのプライバシー設定について知っておきましょう。ここでは、多くのアプリで可能なことを紹介します。ほとんどのソーシャルメディアでは、あなたがブロック、閲覧制限、報告などをしても、相手に通知がいくことはありません。
- アカウントのプライバシー設定で、誰があなたのプロフィールを見たり、ダイレクトメッセージを送ったり、あなたの投稿にコメントしたりできるかを決める
- 悪意のあるコメント、メッセージ、写真を報告し、削除を依頼する
- 「友だちから外す」だけでなく、相手を完全にブロックして、あなたのプロフィールを見たり、あなたに連絡したりできないようにする
- 完全にブロックしなくても、特定の人のコメントがその人本人だけに表示されるように設定する
- プロフィールの投稿を削除したり、特定の人に見せないようにする
8.子どもや若者がネット上で利用できる、いじめ防止ツールは?
各SNSでは、自分の投稿の閲覧・コメントできる人や、友達申請をできる人を制限したり、いじめを報告したりするためのさまざまなツールを提供しています。ブロック、ミュート、いじめの報告といった簡単なものが大半ですので、ぜひ一度調べてみてください。SNS各社は、子ども、保護者、教員が、インターネットのリスクや安全な使い方について学ぶための教育ツールやガイダンスも提供しています。
Facebook/Instagram
FacebookやInstagramを安全でポジティブな自己表現の場にすることは、重要なことです。安全だと感じられなければ、安心して情報をシェアできないからです。それを妨げるネットいじめとは徹底的に闘わなければなりません。FacebookやInstagramでは、若者の安全を守るためのさまざまなツールが用意されています。
■ポリシー
Facebookでは「コミュニティ・スタンダード」、Instagramでは「コミュニティ・ガイドライン」を定めています。いじめや嫌がらせなど、これらのポリシーに違反するコンテンツを発見した場合、それらは削除されます。コンテンツが誤って削除されたと思われる場合は、不服申し立てができるようになっています。
■設定
- あなたの投稿に対するコメントの設定(非表示など)を管理できます。
- あなたにDMを送れる人を、あなたがフォローしている人だけに限定することもできます。
- 相手をブロックするのは気が引けるという人は、Instagramの「制限」と呼ばれるツールを使うと、ブロックすることなく、その人に気づかれないように自分のアカウントを保護することができます。
- 人工知能(AI)技術を利用して、嫌がらせや悪意のあるコメントを自動的にフィルタリングして非表示にする設定をオンにすることができます。
■報告
FacebookやInstagramにいじめの内容を報告することで、プラットフォーム上であなたの安全をより良く守ることができます。いじめや嫌がらせは非常に個人的なものなので、多くの場合、運営側がその行為を特定したり削除したりする前に、いじめの存在が誰かから報告されることが必要になります。いじめの報告は常に匿名で行われるため、あなたが報告をしたという事実が誰かに知られることはありません。
報告は、投稿、コメント、ストーリーからいつでも行うことができます。専門チームによってこうした報告は24時間365日確認され、悪質なコンテンツやアカウントは削除されます。また、自分自身のいじめを報告するのと同様に、いじめられている友達のためにも、簡単にアプリ内で直接報告することができます。報告方法についての詳細情報は、Facebook /Instagramのヘルプセンターにあります。
■ガイド
Facebookでは、いじめに対処するためのプロセスや、誰かがいじめられているのを見たときにどうすればよいかを紹介するガイドを用意しています。Instagramでは、保護者や大人の方向けに、いじめに対処する方法を紹介する「保護者の方向けガイド」を提供しています。
Twitter上では、何億人もの人が自分の考えをシェアしているので、全員がすべてに同意することができないのは当然です。敬意をもって、意見の相違や議論から学ぶことができるのもTwitterの利点の1つではありますが、相手が表現する権利を持っているからといって、あなたが必ずそれに耳を傾けなければいけないということではありません。
■ポリシー
すべての人が自由かつ安全に参加できるよう、ルールが定められています。これらのルールは、暴力、児童の性的搾取、虐待・ハラスメント、悪意のある行為、自殺または自傷行為、写実的な暴力描写を含むセンシティブな内容が含まれるメディアなど、多くの領域に対応しています。
このルールの一環として、コンテンツに違反があった場合、さまざまな強制措置がとられます。強制措置は、特定のコンテンツ(例:個々のツイートやダイレクトメッセージ)またはアカウントそのものに対して行われます。
■設定
- ミュートにすると、フォローを外したりブロックしたりせずに、タイムラインからそのアカウントのツイートを削除することができます。
- ブロックすると、特定のアカウントからの連絡、ツイートの閲覧、フォローを制限できます。
■報告
Twitterのルールに違反している可能性のある悪質な行為やアカウントは、ヘルプセンターのサポートページ、もしくはツイート内の「ツイートを報告する」をクリックして報告してください。個人情報の悪用やなりすましの通報も行うことができます。詳しくはこちら
本記事は、ユニセフ本部公式ホームぺージに掲載の記事を、翻訳・一部編集したものです。原文はこちらをご覧ください。下記は、英語原文記事の公開にあたってユニセフ本部にご協力をいただいた、専門家、企業の一覧です。
Expert contributions from: Sonia Livingstone, OBE, Professor Social Psychology, Department of Media and Communications, London School of Economics; Professor Amanda Third, Professorial Research Fellow, Institute for Culture and Society, Western Sydney University.
With special thanks to: Facebook, Instagram and Twitter.
UNICEF contributions: Mercy Agbai, Stephen Blight, Anjan Bose, Alix Cabral, Rocio Aznar Daban, Siobhan Devine, Emma Ferguson, Nicole Foster, Nelson Leoni, Supreet Mahanti, Clarice Da Silva e Paula, Michael Sidwell, Daniel Kardefelt Winther.