2022年4月7日アンマン(ヨルダン)発
ウクライナで紛争が激化して6週間、中東・北アフリカ地域の子どもたちの栄養状態の悪化が懸念されています。
栄養危機が深刻化
イスラム教徒がラマダンを迎えた同地域では、ウクライナ紛争により輸入が滞り、小麦、食用油、燃料などの必需品の価格が高騰する中で、食料不足が起こっています。このような状況が続けば、特にエジプト、レバノン、リビア、スーダン、シリア、イエメンの子どもたちが深刻な影響を受けます。ウクライナ危機以前に実施された最近の評価によると、これらの国はすでに紛争や経済危機、特に2021年に起きた世界的な食料価格の急上昇に悩まされており、飢餓が頻発する地域(hunger hotspot)とされています。
ユニセフ(国連児童基金)中東・北アフリカ地域事務所代表のアデル・ホドルは、「ウクライナ危機や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に加え、同地域においては紛争と政情不安が続いており、かつてない食料価格の高騰に直面しています。これにより、栄養不良の子どもの数は激増する可能性があります」と述べています。
ウクライナ紛争が打撃
ウクライナで激化した紛争は、2年にわたるCOVID-19による影響と相まって、食料の90%以上を輸入している中東・北アフリカ地域の経済、雇用を圧迫し、貧困問題を悪化させています。
- イエメンでは、子どもの45%が発育阻害(慢性的な栄養不良により、年齢に対して身長が低く、身体的、認知的発達が阻害される)、86%以上が貧血となっています。
- スーダンでは、子どもの6%が消耗症(急激に体重が減少するなど、命の危険にさらされることもある重度の栄養不良)、36.4%が発育阻害となっており、約半数が貧血に苦しんでいます。
- レバノンでは、幼い子どもの94%が必要な食事をとれておらず、女性と5歳未満の子どものうち40%以上が貧血となっています。
- シリアでは、幼い子どもの75%が健康に成長するのに必要な食事をとれていません。平均的な食料品の価格は、2021年だけで約2倍になりました。
ユニセフはパートナーと連携して、栄養不良の早期発見に取り組みつつ、重度の消耗症に苦しむ子どもに命を守る治療を提供しています。同時に、パートナーとともに予防的栄養サービスを提供しています。このサービスには、微量栄養素の提供、成長モニタリング、母乳育児や年齢に応じた栄養補助に関するカウンセリングや支援などが含まれています。
「私たちは、この地域における栄養対策の見直しを進めています。支援を必要としているより多くの子どもたちに栄養支援を届けるために、農業、社会的保護、教育、水と衛生の各セクターとの連携をさらに強化していきます」(ホドル)
■ 注記
- シリア、レバノン、スーダン、イエメンでは、5歳未満児910万人以上を含む、合計約1,380万人の子どもや女性が栄養支援を必要としています。
- 昨年だけでも、ユニセフは以下の支援を実施しました。
- 5歳未満の子どもたち約350万人に微量栄養素サプリメントを提供
- 1,100万人以上の子どもを対象とし、消耗症のスクリーニング検査を実施
- 重度の消耗症や急性栄養不良に苦しむ約65万人の子どもたちに治療サービスを提供
- 女性や並びに子どものケアをする人600万人以上に、乳幼児の栄養補給に関するカウンセリングを実施
- 国連世界食糧計画(国連WFP)によると、食用油の価格がイエメンでは36%、シリアでは39%、それぞれ高騰しています。また、小麦粉の価格はレバノンで47%、リビアで15%、パレスチナで14%高騰しています。