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日本ユニセフ協会

お知らせ

こども大綱に向けた中間整理
日本ユニセフ協会も意見提出

2023年10月25日東京

日本ユニセフ協会は、こども家庭庁が9月29日から10月22日かけて実施した「こども大綱」の策定に向けたパブリック・コメント(意見公募)に対し、ユニセフの知見等に基づいた意見を提出しました。

今年4月に施行されたこども基本法では、こども政策を総合的に推進するため、政府全体のこども施策の基本的な方針等を定めるこども大綱を策定するとされています。このこども大綱の策定に向けては、これまでこども家庭審議会において議論が重ねられてきました。本パブリック・コメントは、このたび取りまとめられた「中間整理」に対する意見を広く募集したものです。

パブリック・コメント募集にあたっては、子ども向けの「やさしい版」の資料も公開されたほか、一般向け、子育て当事者向け、そして、子どもや若者向けの公聴会も開催されました。

日本ユニセフ協会は、190の国と地域で活動するユニセフの知見や国連子どもの権利委員会の最終見解の内容などを元に、こども大綱に向けた中間整理に加え、同時にパブリック・コメントが実施されていた2つの文書についても以下の通り意見を提出しました。

≪関連リンク≫
★ 意見公募手続(パブリック・コメント) 出典:こども家庭庁(参照 2023-10-22)
★ こども大綱の策定に向けた意見募集について 出典:こども家庭庁(参照 2023-10-22)

今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等〜こども大綱の策定に向けて〜(中間整理)に対する意見公募について

本案において、こどもの権利を基盤とした施策の推進、こどもが権利の主体であること、こどもの意見の尊重・反映、すべてのこども・若者や社会全体へのこどもの権利条約の周知、学校教育においてこどもが権利を学ぶこと、様々な困難な状況にあるこどもの支援、ウェルビーイング指標の検討を含めたデータの整備、こどもの権利条約の遵守、総括所見への対応、ユニセフ等の国際機関の取組への貢献・連携強化等が掲げられていることを高く評価します。その上で、以下を提案いたします。

13頁 こどもや社会全体への周知に関する記述に、以下要素を加える。
・条約の趣旨や内容の周知
・こどもが権利の主体であって、権利を守る義務はおとなにあること
理由)「権利の主体であること」のみを周知するように読めるが、それに加えてこどもの権利条約の趣旨や内容、権利を守る担い手はおとなであることも周知すべきであるため。

13頁「学校教育において」以下を下記のとおり修正する。
「学校教育においてこどもが自らや他者の権利について学び、自らを守る方法や他者の尊重…」
理由)権利を学ぶ目的は「自らを守ること」のみではなく、自らと同様に他者にも権利があることを学び、他者の尊重、協調を育むことも重要であるため。

14頁「こどもまんなかまちづくり」に以下の要素を加える。
子どもの権利の周知、地域で子どもを育てる機運の醸成、こども・若者のまちづくりへの参加、まちづくり全般への「こどもまんなか」視点の取り入れ、困難な状況にあるこどもの支援
理由)こどもの生活に最も密接に関わるまちづくりについて、遊び場や交流機会の創出にとどまらない、より包括的な記述にすることが望ましいため。

18頁 (6)「児童虐待防止対策と社会的擁護の推進…」を「あらゆる暴力からこどもを守る取組」の項目とし、児童虐待防止対策に加えて、学校での体罰防止、(7)にある性暴力対策等をまとめて記載(ヤングケアラーについては他のより適切な箇所に移動)する。
理由)38頁のとおり日本は「子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ」のパスファインディング国として「子どもに対する暴力撲滅行動計画」を作成しこの問題に積極的に取り組んでいる姿勢を明確にするため。また、3大綱の一元化に際し新たに打ち出すべき観点の一つであるため。

20頁(7)「こども・若者の自殺対策、犯罪などからこども・若者を守る取組」を、自殺対策を含むより広い「こども・若者のメンタルヘルスへの支援」とし、25頁「心身の健康についての情報提供やこころのケア」等の内容もまとめて記載
する。犯罪からの保護は「暴力からの保護」の項目に移動させる。
理由)自殺対策と犯罪からの保護は性質の異なる取組であり、自殺対策についてはメンタルヘルスの問題の最も顕著な表れとしてより包括的な記述が望ましいため。

20頁「こどもが安全に安心してインターネットを利用できる環境整備」における「インターネット」を「デジタル技術」とする。また、デジタル技術の正の側面である「子どもの成長を助けるデジタル技術の開発と活用」についても言及する。
理由)スマートフォンなどの機器やAIなども含むより広義の用語とするため。デジタル技術にはリスクと同時に、成長や権利の実現を助ける側面もあるため。

34頁「子ども・若者に関わる人材の確保・育成・支援」において、キャリア形成やメンタルケアに加えて、働き方改革の推進や処遇の改善についても言及する。また、幼稚園、保育所、学校、その他こどもの育ちを支える施設における質の向上・確保(こどもの権利が守られた環境、職員の配置基準の改善等)についても記載する。
理由)処遇の改善を含む人材の支援、および保育や教育等の質の向上については、ライフステージ別の事項のみでなくこども施策の共通の基盤としてもまとめて記載すべきため。

38頁 (4)国際的な連携・協力における「ビジネスと人権」に関する行動計画について、横断的事項として「子どもの権利の保護・促進」が含まれること、言及されているユニセフ等の「子どもの権利とビジネス原則」には、ビジネスが子どもの権利の尊重・推進に重要な役割をもつことが示されていることに言及する。関連して、12頁の「関係省庁(中略)等との連携を重視する」に「企業」を加え、29頁の「共働き・共育ての推進」において企業・組織の役割により明確に言及する。
理由)「共育て」の推進を含め、企業セクターが本大綱の実施に重要な役割を有することをより明確に示すため。

「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なヴィジョン(仮称)」の策定に向けて(中間整理)〜すべてのこどもの「はじめの100か月」の育ちを支え生涯にわたるウェルビーイング向上を図るために〜に関する御意見の募集について

本案において、ウェルビーイングおよびこどもの権利が中心に据えられていること、ウェルビーイングが身体的・精神的・社会的な面から一体的にとらえられていること、こどものウェルビーイングを中心において保護者やこどもに接する人、地域、広く社会全体まで捉えるアプローチが用いられていることは、いずれもユニセフ(国連児童基金)の考え方と共通するもので、高く評価します。その上で、以下を提案いたします。

6頁 注17を以下のように修正する:
例えば、ユニセフ(国連児童基金)は、途上国はもとより先進国においても、就学前までの期間が重要であるとの考え方をとり、中でも胎内にいる時から2歳の誕生日までの「最初の1000日」に着目している。これに基づき、栄養やケア、教育や子どもの保護を含め多面的にこどもやその養育者を支援するプログラムや、法律や政策への働きかけ等を行っている。また、概ね8歳までを発達において重要な「Early Childhood」と位置づけている。
理由)原案ではこの時期を重視した取組は途上国のみ、特に発育阻害の割合が高い等特定の国々でのみ推進されているように読めるが、実際にはその考え方は先進国を含むすべての国に共通のものとして打ち出されているため。
参考)ユニセフ「Early Childhood Development: UNICEF Vision for Every Child」(2023年)

19頁(3)「「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える」、または他の適切な箇所において、日本の低出生体重児の割合が国際的に見て一貫して高いこと、その要因や取組等に言及する。
理由)出生体重はこどもの成長を予測する重要な要素とされ、ユニセフは低出生体重児の割合を先進国も含めて保健政策の指標の1つとしている。日本の低出生体重児の割合が高いことの要因分析と取組については、国連子どもの権利委員会の最終見解(2019年)においても指摘されているため。
参考)ユニセフ「レポートカード16」PDF. 42・43頁

こどもの居場所づくりに関する指針(素案)に対する意見公募について

13頁(5) 災害時におけるこどもの居場所づくりに関し、以下をコメントいたします。
・「災害時において」以下を次のように修正する:
災害時においても当然にこどもの権利が守られるために、こどもが安心して過ごすことができる居場所を確保し、遊びや学び等「日常」を過ごすことができるよう配慮することが重要である。またそれは、平時における他の居場所と同様に、子どもの声が聴かれこどもとともにつくっていくことが不可欠である。
・「今後」以下を次のように修正する:
国内においては、東日本大震災に際して、またそれ以降、民間団体等によって災害時にこどもの居場所を提供する多くの取組が行われてきている。今後の施策の推進にそれらの知見を生かすため、まずはそれらの取組に関する十分な実態把握を行う。そうした実態を十分に踏まえ、避難所等におけるこどもの居場所の設置・運営に関する指針を提供することが求められる。さらに、子ども支援や子どもの居場所に関わる者が平時から連携することによって、緊急時に迅速に対応できる体制をつくることも必要である。
理由)特に東日本大震災以降実施されてきた、災害時にこどもの居場所を提供する取組は、国内における重要な知見であり、今後の施策の推進に十分に活用することが重要であるため。
参考)
・日本ユニセフ協会は、東日本大震災時、ユニセフ(国連児童基金)の知見に基づきユニセフの応援を得て「子どもにやさしい空間」を提供する支援活動を実施し、その取組を元に、国内専門家とともに、日本の災害現場の事情を考慮した日本版「子どもにやさしい空間」ガイドブック(マニュアル)と研修プログラムを作成した。これらは多くの市民団体において活用されている。
・「こどもにやさしい空間」は、こどもにとって安心・安全な環境、こどもを支える環境、地域の特性への配慮、こども自身の参加、遊び・教育・福祉など様々な活動・支援の提供、誰にでも開かれていることの6つを柱としている。
(詳細:日本ユニセフ協会ホームページ「子どもにやさしい空間」

15頁(3)どんなこどももつながりやすい居場所づくりに記載されている「オンラインの居場所」について、14頁の(1)ないし(2)でも言及する。
理由)オンラインの居場所のもつ可能性は、特別なニーズを持つこどもや地域性を忌避する傾向にあるこどもに限らないため。

17頁~「環境の変化に対応した居場所づくり」に関して、SNSやオンラインゲームのもつ「リスク」を最小化し「有用性」を最大化するための、それらサービスを提供する事業者の役割や事業者との協力の重要性について、この項目内または第5章推進体制等の中で言及する。
理由)オンラインの居場所に関しては、サービスを提供する事業者の役割が大きくその協力が不可欠であるため。
参考)ユニセフとITUは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」ならびに「子どもの権利とビジネス原則」(ユニセフ他)に基づき、子どもに安全・安心なデジタル世界を提供するために民間事業者の役割と責任を示すガイドライン(Guideline for Industry on online child protection)を作成している。

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