2023年11月14日アフガニスタン発
地図が示すものは...?
アフガニスタンのラグマーン州東部にある小さな村で、30名ほどの子どもたちと保護者が集まり、足元を眺めています。
描かれているのは地図で、「小さな四角」は民家、「線」は道路や細い道を、「丸」は保健センターを示しています。
宝探しの地図ではありません。この地図は、村のどの家にトイレがあって、どの家にこれからトイレを造らないといけないかを示しているのです。
この村のように、ユニセフは、アフガニスタン全土の村々で、コミュニティの住民向けの研修を通して、屋外排泄をなくす取り組みを進めています。研修に参加したカマルディンさん(23歳)は、衛生習慣のことや、石けんを使った手洗いによって病気を防ぐことができることを学び、自宅に簡易なトイレを造ることで、姪や甥が健やかに育ち、家族全員にも尊厳をもたらすということを知りました。
トイレが健康を守る
カマルディンさんは、姪っ子たちの父親である兄が自宅にトイレを造る作業を手伝いましたが、それ以前は、姪のアスラちゃん(6歳)は屋外で用を足さなければならなかったと、言います。排泄物との接触が避けられないこうした習慣に加え、手を洗う設備もなかったので、アスラちゃんはよく体調を崩したり、下痢に苦しんでいたりしました。
「トイレができた今、兄の子どもたちは病気にもかからず、元気に育っています」とカマルディンさんは嬉しそうに話します。
ユニセフはアフガニスタンにおいて、2023年内に885のコミュニティの「屋外排泄ゼロ」を達成することを目指しています。カマルディンさんの村も、885の村々の一つです。
けれども、トイレは、パズルのほんの1ピースにすぎません。アスラちゃんが真に健やかに育つためには、トイレに行った後に手を洗う場所が必要なのです。村で開催されたユニセフの研修会に参加したカマルディンさんは、手洗い場を造るのが難しくないことを学びました。
手洗い場をつくることの大切さ
「水を入れた容器をトイレの横に置きました。私たちみんなが手を洗えるようにね」とカマルディンさんは言います。「ユニセフが、石けんを配布してくれて、それから私たち家族は具合が悪くなることはなくなりました」
固形石けんは、シャンプーやバケツ、タオル、洗濯用石けんとともに、ユニセフの衛生キットに含まれています。家族がこのキットを使うことで、衛生的な暮らしを送ることができます。
研修会で村のトイレの普及具合をカマルディンさんが地図で示したことで、より多くの近所の住民が自宅にトイレを造るようになり、村の「屋外排泄ゼロ」に一歩ずつ近づいています。
「私たちはかつて屋外で用を足していましたが、今は自宅のトイレを使っています。例えば、灰をトイレの中に撒くことで臭いを抑えるなど、より衛生的に暮らせる方法を学び、頻繁に手も洗っています」とカマルディンさんは嬉しそうに言います。
「家族にとっても、私自身にとっても、本当に前向きな変化になっています」
11月19日は世界トイレの日
11月19日は世界トイレの日。日本では自宅に当たり前にあるトイレですが、世界では4億1,900万人が自宅や家の近くにトイレがなく、屋外での排泄を余儀なくされています。
トイレがない暮らしは不衛生な生活環境を生じさせ、感染症が発生しやすい状態をつくり、幼い子どもたちが下痢で命を落とすこともあります。世界では、1日に1,300人以上の子どもたちが下痢性疾患で亡くなっています。そうした下痢による死亡の約60%は、トイレがない、あるいは手洗いなどの衛生習慣が普及していないなどの不衛生な環境と、安全でない飲み水に起因していると言われています。
ユニセフは、世界各地でトイレの設置方法を伝えたり、災害や危機発生時には簡易のトイレを設置したりしており、トイレの後の手洗いの普及など、衛生的な習慣についての知識を広める活動も展開しています。SDGsの目標6では、「2030年までに、すべての人が安全な水とトイレを利用できる状況を実現し、その持続可能な管理を確立する」と掲げられています。