2023年12月12日発
世界各地で未曾有の人道危機に直面する子どもの数が憂慮される規模で急増していることを受け、ユニセフ(国連児童基金)は本日、「子どもたちのための人道支援2024(Humanitarian Action for Children:HAC)」を発表し、2024年に世界の155の国と地域で暮らす少なくとも9,380万人の子どもたちに支援を届けるため、93億米ドルの緊急資金を要請しました。
2024年には、残忍な紛争、貧困、社会の分極化、気候危機によってますます影響を受ける世界において、世界中の子どもたちに命を守るための人道支援が必要になると予想されます。そのためユニセフは、各国の子どもたちとその家族など約1億4,700万人に人道支援を届けることを目指します。
人道危機に巻き込まれ続ける子どもたち
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、次のように述べています。「無数の子どもたちが、複雑さと規模を増す人道危機に巻き込まれ続けています。予測可能で柔軟な資金があれば、ユニセフとパートナーは、緊急事態が発生したその瞬間より支援を必要としている子どもたちに迅速に手を差し伸べながら、同時に、将来のリスクに備えて、命を守り、生活を向上させるための活動も行えるのです」
93億米ドルの資金要請は、子どもたちが直面する多面的な課題の増加に取り組むことの緊急性を強調しています。
紛争地では、子どもたちは暴力と避難という過酷な現実に耐え、身体的危害、精神的トラウマ、教育や必要なサービスの中断という脅威に日々直面しています。同時に、暴力の影響を受けている地域の子どもたちは、不安定さによる心理的な打撃や、搾取や虐待のリスクの高まりに立ち向かいながら、彼ら自身のウェルビーイングを損なう広範な影響と闘っています。
気候変動もまた、緊急事態の規模と程度を悪化させています。その影響に苦しむ地域では、子どもたちが環境課題の矢面に立たされ、健康を害しています。これらの地域では食料や水の不安が発生し、教育へのアクセスも制限されています。
2024年の人道支援計画
2023年上半期には、緊急対応が必要な各危機において、寄せられた資金が一部の危機に集中したり、使途を指定あるいは制限するものであったりしたため、増大するニーズに対応する活動を困難なものにしました。寄せられた資金の50%が、アフガニスタン、ウクライナおよび周辺国のウクライナ難民対応、シリア、シリア難民受け入れ国、エチオピアの5つの緊急事態に集中しています。また、ガザ地区における敵対行為の激化がもたらしている悲劇的な結果に対する人道的対応では、3カ月間の活動に必要な資金額が12億米ドルに上っており、他の緊急事態の対応に影響をきたす可能性があります。
資金要請および支援計画を定めた「子どもたちのための人道支援2024」の一環として、ユニセフは以下を目標として活動を行います。
- 1,730万人の子どもにはしかの予防接種を実施する
- 760万人の重度急性栄養不良の子どもを治療する
- 1,930万人の子どもが公式または非公式の教育(就学前教育を含む)を受けられるよう支援する
- 2,670 万人の子ども、若者、養育者がメンタルヘルスと心理社会的な支援を受けられるよう支援する
- 180万世帯の家庭が、社会的保護などの目的でユニセフが資金提供する人道的現金給付支援を受けられるようにする
- 5,240 万人が安全で必要十分な量の飲料水、家庭用水を利用できるよう支援する
- 1,480万人の女性、女の子、男の子が、ジェンダーに基づく暴力を受けるリスクの軽減、予防、または対応のための支援を受けられるようにする
- 3,270万人を対象に、支援従事者からの性的搾取や虐待を通報するための安全で利用しやすい手段を提供する
資金不足が深刻な緊急事態の国も
「子どもたちのための人道支援2024」には、合計43件の資金要請が含まれています。内訳として、国単位の人道危機に対する要請30件、複数国にまたがる人道危機に対する要請5件、地域単位の人道危機に対する要請7件、世界規模の人道危機に対する要請1件です。
2024年の資金要請額の上位5件は、以下のとおりです。
- アフガニスタン 14億4,000万米ドル
- シリア難民危機 8億6,000万米ドル
- スーダン 8億4,000万米ドル
- コンゴ民主共和国 8億400万米ドル
- ウクライナ危機およびウクライナ難民対応 5億8,000万米ドル
資金不足が深刻な緊急事態には、スーダン、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国、ミャンマー、ハイチ、エチオピア、イエメン、ソマリア、南スーダン、バングラデシュが含まれます。
「ユニセフとパートナーは、紛争や気候変動、自然災害など、子どもたちに影響を及ぼす多くの人道的危機に対して、包括的な支援を提供することに尽力しています。子どもたちが自分たちの命や未来を犠牲にすることなど、あってはなりません。子どもたちは、保健ケア、安全な水、基本的な衛生設備、教育など、必要不可欠なサービスを継続的に利用する必要があるのです」(ラッセル事務局長)