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日本ユニセフ協会

ストーリー

女性器切除(FGM)の慣習をなくすために
ユニセフのワークショップで学んだ大学生
女の子たちへ伝える「暴力にはNOを」

2024年2月14日スーダン

南コルドファンの村で、女性器切除(FGM)や児童婚のような伝統的な慣習が有害であることについて学んだ20歳のハリマさん。

© UNICEF/UNI511465/Awad
南コルドファンの村で、女性器切除(FGM)や児童婚のような伝統的な慣習が有害であることについて学んだ20歳のハリマさん。(スーダン、2023年11月撮影)

ハリマさん(20歳)は、スーダンの南コルドファン州の小さな村で、生まれ育ちました。

この地域では、女性器切除(FGM)や児童婚といった古くからの慣習が、現在まで続いています。ハリマさんも、他の何千人もの女の子たちと同様に、こうした有害な慣習によって傷つけられた一人です。

被害を受けた当時、幼かったハリマさんは、こうした慣習が女の子や女性に与えるダメージや影響に気づいていませんでした。しかし正しい知識を身につけた今の彼女には、その有害な慣習によって傷つく女の子を減らすための行動を起こし、正しい知識を他の人々に伝える力があります。

大学生活を奪われて

スーダンとの国境付近まで逃れたスーダン難民たち。(チャド、2023年4月27日撮影)

© UNICEF/UN0834339/Le Du
戦闘から逃れるためにチャド側の国境に逃れたスーダン難民たち。(チャド、2023年4月27日撮影)

2023年4月にスーダンで武力衝突が激化した時、ハリマさんは大学2年生として、首都ハルツームの大学に通っていました。奨学生として学び、明るい未来を夢見ていました。しかし戦闘が、ハリマさんが描いていた夢も人生計画も、根底から覆してしまいました。

「戦闘が続き、勉強を中断せざるを得なくなりました。そのことは、今思い返しても、とてもつらいです」とハリマさんは言います。

戦闘の危険から逃れるため、ハリマさんと家族は命からがら何とかハルツームを脱出し、現在は比較的安全な白ナイル州コスティで、30世帯以上の家族と身を寄せ合いながら暮らしています。

今も、爆撃や銃撃の記憶や、銃弾から身を守るためにベッドの下に潜んで過ごした日々の記憶が、時折、頭をよぎります。

ユニセフが支援するワークショップに参加

ワークショップで学んだ鍵編みをするハリマさん。(スーダン、2023年11月撮影)

© UNICEF/UNI511470/Awad
ワークショップで学んだかぎ針編みをするハリマさん。(スーダン、2023年11月撮影)

大学に通っていた時、ハリマさんはいくつかの社会的活動に参加していましたが、コスティに来てからは、そうした活動をする機会がありませんでした。

2023年11月、ハリマさんは他の若者たちとともに、ライフスキル(日常のさまざまな問題や課題に、健康的に対処するための技術や能力)の向上と、ジェンダーに基づく暴力(GBV)のリスク軽減のためのワークショップに参加しました。

このワークショップは、ユニセフがパートナーとの協力のもと、紛争に影響を受けた子どもたちや若者のために実施している子どもの保護支援のひとつです。思春期の女の子たちに、ジェンダーに基づく暴力のリスクを軽減するためのスキルと知識を身につけさせるとともに、自立のための経済的な力をつけることを目的としています。

「ライフスキルのワークショップで学び、身につけた技術のおかげで、これまで持て余していた時間を有意義に使うことができています。今はかぎ針編みで作った製品を販売しています。これが私と家族の収入源になっています」(ハリマさん)

ワークショップの成果はそれだけではありません。さらに素晴らしいことは、ジェンダーに基づく暴力や女性器切除(FGM)、児童婚に関する情報と知識を、ワークショップを通じてハリマさんたちが得たことです。機会さえ与えられれば、子どもや若者たちは、自分たちのウェルビーイングに悪影響を及ぼす問題に向き合い、その解決に向けて自分たちの力を発揮することができるのです。

「物事の見方が一変しました。児童婚と女性器切除(FGM)、そしてそれらがもたらす影響に対する見方が、大きく変わりました」(ハリマさん)

ハリマさんは、女性器切除(FGM)のネガティブな側面について学ぶとともに、「サリーマ・イニシアティブ」を紹介されました。サリーマ(Salema/Saleema)とは、「神から与えられた状態のまま。身体と心が健康で、傷つけられていないこと」などを示す現地の言葉です。ユニセフ・スーダン事務所とパートナーによって2008年に開始されたこのイニシアティブは、コミュニティの人々の間における女性器切除(FGM)に対する考えを変えること、そして、女の子たちをFGMの慣習から守ることを目指しています。

女性器切除(FGM)の慣習をなくすために

ポスターを使って、コミュニティの人々に有害な慣習について伝えるハリマさん。(スーダン、2023年11月撮影)

© UNICEF/UNI511469/Awad
ポスターを使って、コミュニティの人々に有害な慣習について伝えるハリマさん。(スーダン、2023年11月撮影)

大学に通えない一方で時間がある今、ハリマさんはすべてのエネルギーを、子どもたち、特に女の子の権利を守るための活動に注いでいます。市場や避難民の集まる場所、受け入れ先のコミュニティで、女性器切除(FGM)や児童婚に対する啓発活動やサリーマ・ワークショップを行っています。女の子や女性にジェンダーに基づく暴力に関する知識を広め、自身を守るために適切な決断をするよう促しています。

ハリマさんはまた、ポスターやリーフレットといった啓発資料を活用した、コミュニティのおとな向けの勉強会も開催しています。インタラクティブな勉強会は、とても活気があります。一緒に参加している子どもたちにも分かりやすく伝わるよう、ゲームや歌を活用しています。

避難する家族が集まる場所で、おとなたちを対象にした勉強会が終わると、ハリマさんはすぐに輪を作り、一緒にサリーマの歌を合唱します。

「ラララララ♪ サリーマの(健康な)女の子の サリーマの(健康な)身体 ラララララ♪」と、みんなが声を合わせて歌います。参加したおとなも子どもも、歌の中のメッセージを通して大切なことを学ぶことができます。

「暴力にはNOを」~女の子たちへのメッセージ

輪になって、サリーマの歌を合唱するハリマさんと子どもたち。(スーダン、2023年11月撮影)

© UNICEF/UNI511461/Awad
輪になって、サリーマの歌を合唱するハリマさんと子どもたち。(スーダン、2023年11月撮影)

ハリマさんが、戦闘で避難を強いられ大学にも通えないという困難な時に、このような活動をする原動力は何でしょうか?

「私は個人的にこれらの有害な慣習を経験したことがあり、私が経験したような苦しみを他の誰にも味わってほしくないのです。特に私より年下の女の子たちには。彼女たちは『サリーマ』のままでいるべきなのです」(ハリマさん)

ハリマさんは、そのような有害な慣習をいまだに子どもたちに強いている親たちに向けて、その慣習を完全に止めるよう単に助言するのではなく、「そうした慣習を続けることは重大な過ちであり、止めなければならない」ということを親たち自身がまず理解することを促しています。

ハリマさんは避難民キャンプにいる女の子たちに、「心を強くもって、毅然としていて。支えてくれるおとなたちがいるからね」と励まし続けています。「暴力にはNOと言おう。当局に相談できるホットラインがあるの。通報することを怖がらないで」とハリマさんは強調します。

自分の村から世界へ、変化をもたらすために

サリーマのメッセージが含まれたかぎ針編みのバッグ。

©UNICEF Sudan/2024
サリーマのメッセージが含まれたかぎ針編みのバッグ。

ハリマさんは、コミュニティにおける女性と女の子のための安全な空間づくりに貢献できる、自身の取り組みに誇りを持ち、何があろうともこの活動を続けることを誓っています。

「いつの日か、自分の村に戻って子どもたちを救いたい。その後は自分の村だけでなく、スーダンの他の地域、そして全世界に変化をもたらすことに貢献したいと思っています」(ハリマさん)

ハリマさんは仲間たちとともに、サリーマのメッセージが含まれたかぎ針編みのバッグも作っており、それをコミュニティ内で販売することで、必要な生活必需品を購入したり、家計を補ったりしています。このような製品も通して、サリーマ・イニシアティブは、より多くの人々に浸透しつつあります。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

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※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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