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日本ユニセフ協会

プレスリリース

「子どもの権利」、児童・生徒と教員の意識に差
小中学校81校、13,573人のアンケート結果 学校で「子どもの権利」を学ぶことの大切さを示唆

2024年6月30日東京

日本ユニセフ協会は、ユニセフ(国連児童基金)が提唱する「子どもの権利を大切にする教育(Child Rights Education:CRE)」の普及に取り組んでいます。その活動の一環として、本年1~3月、兵庫県立大学環境人間学部の竹内和雄教授の協力と監修の下、児童・生徒と教員の双方に、「子どもの権利」の視点から学校生活を自己評価するアンケートを実施。主旨に賛同した81の小中学校の児童・生徒と教員から、1万3,573件の回答が寄せられました。

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「子どもの権利」、児童・生徒と教員の意識に差

「ユニセフ『子どもの権利』学校アンケート」は、各自治体の子ども施策や各学校の取り組みに役立てていただくことを目的として、広く学校や自治体に呼び掛けて実施されました。設問は、「体の健康」、「心の健康」、「学校での学び」、「安心な環境」、「意見表明」、「子どもの権利」の6つの分野ごとに2問ずつ、計12問で構成されています。児童・生徒と教員双方が、同じ質問に回答する手法を採用し、「質問や分野、あるいは学年などによって回答に有意な差が生まれるか?」「児童・生徒と教員との間で何らかの差が生まれるか?」などの視点で分析しました。

アンケート結果を分析すると、いくつかの分野において、児童・生徒と教員との間に認識の差があることが見えてきました。たとえば、「体の健康」「学校での学び」の分野では、教員よりも児童・生徒の評価の方が高く、子どもたちの方がポジティブに捉えていることがわかりました。一方、「心の健康」「安心な環境」「意思表明」の分野では、児童・生徒の評価は教員ほど高くはありませんでした。学校での心の健康のためのサポートが十分ではないことを示唆している可能性があります。先生と子どもたちが話し合い改善していくことができる、いわば「伸びしろ」が残されている分野といってもよいかもしれません。

アンケート結果を受け、協力と監修を行った竹内教授は以下のような考察をしています。「今回の調査は、日本のこれからの教育を考える上で、2つの意味で画期的な調査です。1つ目は、『子どもの権利』について、真正面から問うた調査であることです。この種の調査は、他の何かの調査と一緒に問われることはあっても、『子どもの権利』に絞って調査されたことは珍しいことです。(中略)2つ目は、先生と児童生徒、両方に同じ質問をしたことです。学校は、先生と児童生徒がいて、それぞれがそれぞれの立場で日々、活動しています。教育は相互作用ですので、お互いがもちろん、影響され合います。先生の『つもり』と児童生徒の『受け取り』は異なることがあって当然です。もっと書けば、先生の『つもり』を児童生徒が正確に『受け取り』できている保証はどこにもありません。(中略)今回、81校が参加し、実態がある程度わかりました。2つの意味で画期的なこの調査の結果を真摯に受け止めて、これからの教育活動に活かしていくことができれば、我が国の教育の流れを根本的に変えるだけのインパクトがあります」

 

学校で「子どもの権利」を学ぶことの大切さを示唆

昨年の「こども基本法」の施行や生徒指導提要の改訂などを背景に、学校現場でも「子どもの権利」を推進する取り組みが求められています。今回のアンケート結果は、子どもたちと先生が共に「子どもの権利」を正しく理解し、その権利が実現される環境を一緒に作っていくための手がかりになると考えられます。「子どもの権利」の視点を学校での生活や学びに取り入れることは、子どもたちの自己肯定感を育み、安心して生き生きと過ごせる教育環境をつくり、子どもたち一人ひとりが可能性を伸ばして成長する力につながります。

今回、質問文や回答の選択肢の設定の仕方に改善の余地があることも確認できました。当協会は、引き続き竹内教授とも連携しながら、国内の多くの自治体や学校が「子どもの権利」を大切にする環境づくりに取り組むことができるよう、本アンケートをはじめ、研修の実施やツールの開発などを通じて、「子どもの権利を大切にする教育」を推進していきます。

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