2024年7月18日中央ダルフール州(スーダン)発
マヤダ(13歳)はスーダンの中央ダルフール州ウム・ドゥフン地域北東部にあるアル・セリフ村で暮らしています。
ダルフール地方の他の地域と同様に、この地域の人々は水不足に悩まされており、しばしば枯渇する数少ない水源と、わずかな流出量しかない泉に頼って生活しています。そのうえ、これらの水源からとれる水は安全とはいえません。
この地域の多くの家庭では、水くみの負担は大抵、女の子や女性にのしかかっています。水源は遠く離れた場所にあり、特に女の子にとって、毎日水源まで通う道のりは危険と隣り合わせです。また、深い井戸から水をくむ際に怪我をするリスクも伴います。
危険と隣り合わせの水くみ
マヤダも一家の水くみを担っています。古くて深い井戸の底から湧き出る水をくむために、鉄の取っ手につかまりながら、壁に空いた小さな穴に足をかけて、井戸の底に降りていきます。とても慣れた身のこなしから、彼女がこうした水くみを繰り返し行ってきたことが分かります。
「水をくむために井戸の底に降りていくときは、いつも怖かった」と彼女は話します。
「以前、井戸の底へ降りようとしたときに怪我をしたことがあるの。弟も、同じように落ちて怪我をしたよ」
水を地上に引き上げるには、マヤダが井戸の底で水を容器にくみ、地上にいる誰かに、容器につないだロープを引っ張ってもらわなければなりません。ですが、誰の助けも得られないときもありました。そんなときは、ロープの先が井戸の中に落ちてこないように重石を置いた後、井戸の底に降りて水をくみ、地上に戻って、重い水の容器につながったロープを自力でなんとか引き上げます。水を得るには他に術がなく、このような危険で大変な方法を取らざるを得ませんでした。
ナジワ(8歳)は、コミュニティにある唯一の水源から30分ほど離れた場所に住んでいました。毎日、ロバに乗って水源まで行き、深さ20メートルの井戸から水をくんでいました。自分の体重の2倍もある水の容器を運ぶ作業は大変な重労働で、容器1杯分の水をくみ上げるのにも5分以上かかります。その作業を繰り返し行うのです。井戸に落ちる危険と常に隣り合わせでした。
ヌジョド(11歳)は、以前は水を求めて何時間も歩きまわっていました。水がなければ家に帰ることも許されませんでした。「道中で野犬に遭遇することがよくあって……。木に登って犬がいなくなるのを待っていたら、なかなか家に帰れなかったの」。
ムズダリファ(12歳)は、井戸の底で怯えた表情で、20リットルのタンクがいっぱいになるまで金属製の容器で水をすくって移していました。彼女は長い間、こうした恐怖と負担に耐えてきました。
水不足が深刻なアル・セリフ村では、得られるわずかな水を節約するため、人々は手洗いなどの衛生的な習慣も十分にできずにいました。水不足はまた、特に女性と女の子の健康リスクを高めることとなり、月経期間中の衛生管理にも影響が出ていました。これまでアル・セリフ村の多くの子どもたち、なかでも女の子たちは、十分な水にアクセスできないことにより、命さえ脅かされていました。
清潔でアクセスしやすい水源ができて安堵する子どもたち
2023年、ユニセフとパートナー団体はアル・セリフ村に総合的な給水施設を設置しました。それにより、人々は危険な思いをすることなく、清潔で安全な水を得られるようになりました。この給水施設は太陽光発電システムで稼働しており、人々が水をくむ給水場と家畜用の水飲み場が2カ所ずつあります。
新しい給水施設ができ、マヤダたちの嬉しそうな表情からは、水くみに伴う危険や負担に耐えてきた彼女たちの安堵感が伝わります。ここでは、井戸の底に降りることも、ロープを使うことも、重い容器を引きずることもありません。蛇口をひねるだけで、必要なときにいつでも清潔で安全な水が使えるのです。
「こんなに近くで水をくめるようになって、水くみが楽になったの。すごくうれしい」
今では、飲み水、洗濯、入浴に十分な水を家で使えるようになった、とマヤダは言います。
ヌジョドは給水施設ができたことによって、自由な時間を手に入れました。
「今は、水差しにさっと水を入れて家にまっすぐ帰れるの。家に帰ったら、友達と追いかけっこをして遊んでいるよ」
ユニセフは、中央ダルフール州のウム・ドゥフン地域の農村部の8つのコミュニティを対象として、6つの給水所を設置した他、2つの水源を修繕しました。その結果、マヤダやヌジュドのような女の子たちやその家族を含む、2万2,000人以上の脆弱な立場にある人々が、生活に不可欠な安全な水を手に入れられるようになりました。