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日本ユニセフ協会

ストーリー

「Poems for Peace~平和の詩~」 紛争地の子どもたちが
自分の言葉で平和への願いを発信

2024年8月19日東京

「平和の詩」をノートに綴るサマルさん

© UNICEF/UNI547345/Elfatih
「平和の詩」をノートに綴るサマルさん(スーダン、2024年3月27日撮影)

世界には、紛争地域で暮らしている、または紛争地域から逃れようとしている子どもが、4億人います(2023年時点)。これは世界中の子どもの5人に1人にあたります。紛争の激化により、こうした子どもたちは故郷を追われて避難を余儀なくされたり、極度のトラウマを負っていたりします。また、医療や教育を受けることも困難な状況に置かれています。

ユニセフは2020年より、紛争下で暮らす子どもたちが自分の想いを詩に綴り、その声を届ける「Poems for Peace~平和の詩~」という取り組みを世界各地で行っています。この取り組みは、子どもたちや若者が、紛争が自分たちの生活に与えている影響や平和な未来への希望、そして夢について、自らの言葉で自由に表現する機会を提供しています。これまでに、ウクライナ、シリア、アフガニスタン、エチオピア、ミャンマー、ソマリアなどで、紛争や戦闘の影響を受けている8歳から24歳まで子どもたちや若者が、この取り組みに参加してきました。

Poems for Peace~平和の詩~

2021年に制作された「Poems for Peace~平和の詩~」の取り組みを紹介する短編動画です。動画には、紛争の影響を受ける国で暮らす、詩の作者である子どもたちや若者が登場します。
暴力や破壊への深い悲しみと、平穏な未来を望む強い意志を込めた自作の詩を朗読する姿をご覧ください。

子どもたちや若者たちが綴った数多くの平和の詩の中から、ここでは、スーダン、ウクライナ、ハイチから届いた3つの作品を紹介します。3人の詩から、紛争が子どもたちの日常に与える影響や子どもたちの願いに思いを馳せ、一人ひとりにとっての平和とは何かを一緒に考えていただけると嬉しいです。

 

「子どもらしく過ごす時間が奪われた」
サマルさん(11歳)スーダン

カッサラ州に避難してきた人々が集まる場所で宙を見つめるサマルさん(スーダン、2024年3月27日撮影)

© UNICEF/UNI547330/Elfatih
カッサラ州に避難してきた人々が集まる場所で宙を見つめるサマルさん(スーダン、2024年3月27日撮影)

祖国とは ただの土地のことじゃない
それは わたしたちを包み込む 大きな心のこと

その心をバラバラにするのが 戦争
戦争と避難の経験
わたしたちが味わった苦み

戦争の影響をいちばん受けるのは 子どもたち
1,400万人の子どもたちが支援を必要としている とユニセフがいう

だけど わたしたちは ただの数字じゃない
一人ひとりが夢をもった存在
なのに 子どもらしく過ごす時間が奪われた

学びや成長 変化 希望の機会を取り上げ
子どもたちの未来をおびやかすのが 戦争

終戦を願います
故郷や学校に戻れることを 願っています

わたしたちは スーダンの子どもたち
わたしたちは 未来

紛争が続くスーダン、バイオリンを取り戻す日を夢見て

この詩を書いたサマルさん(11歳)は、現在、スーダン東部・カッサラ州の小学校に避難しており、教室で寝起きをしています。以前は首都ハルツームで暮らしていましたが、2023年4月15日に武力衝突が激化したため、家族とともに逃れてきたのです。

戦闘が起こる前、サマルさんと家族の生活は、今とはまったく違うものでした。サマルさんは小学校6年生で、バイオリンを演奏するのが好きでした。けれども、戦闘の勃発によって、大好きなバイオリンと離ればなれになってしまいました。サマルさんは悲しみましたが、音楽とバイオリン演奏を愛する気持ちは今も変わりません。

「ハルツームを離れる前に家族で親せきの家に避難したの。すぐに家に帰れると思っていたから、バイオリンは持ってこなかった。だけど、その後は取りに帰れないまま」と、サマルさんは涙ながらに当時の状況を振り返ります。

戦闘はサマルさんのそれまでの日常を変えてしまいましたが、彼女の音楽への愛までも奪うことはできません。
「バイオリンは私の友達。絵を描いているときも、歌っているときも、踊っているときも、バイオリンが目に浮かぶの」。

サマルさんの願いは、戦闘が終わって自分のバイオリンを取り戻すことです。願いが叶うその日を心待ちにしながら、楽しかった昔の日々のように、父親が鼻歌を歌ったりリズムを取ったりするのに合わせてバイオリンを弾く真似をして、希望を失わないようにしています。

サマルさんが暮らすスーダンでは、2023年4月に武力衝突が激化して以来、460万人の子どもたちが家を追われ、避難を余儀なくされました。学校に通えない子どもの数は1,900万人近くに上り、殺傷、徴兵・徴用、性暴力などの、重大な子どもの権利侵害の件数は、以前と比べて5倍に増えています。ユニセフはパートナーとともに、戦闘の影響を受ける600万人以上の子どもとその家族に人道支援を提供しています。

 

「緑いっぱいの 原っぱを歩くのが好き」
ティムールさん(9歳)ウクライナ

自分で作った詩を読み上げるティムールさん(ウクライナ、2023年3月21日撮影)

© UNICEF/Video
自分で作った詩を読み上げるティムールさん(ウクライナ、2023年3月21日撮影)

緑いっぱいの 原っぱを歩くのが好き
花を摘み 鳥のさえずりが聞きながら

明るく輝く太陽と 降ちる雨粒の中
わたしは跳ねる ボールのように

パパと 魚釣りをするのが好き
鯉がかかることを いつも期待しながら

大切な家族と 海に行くのが好き
泳いで 遊んで 魂が透き通る

秋になれば いよいよ学校が始まる
先生に会うために 友達と遊ぶために

平和が戻ってほしい
わたしの好きなすべてのものが 戻ってくるから

紛争が長期化するウクライナ

ティムールさんが暮らすウクライナでは、2022年2月に激化した戦闘が長期化し、現在も330万人以上の子どもたちが支援を必要としています。子どもたちは暴力や破壊を目の当たりにし、トラウマや喪失感、そして避難の苦しみに晒され続けています。

ユニセフは、現在の戦争が勃発する以前からウクライナの子どもたちや家族への支援を続けており、2023年にはウクライナ国内の約500万人に保健・医療サービスを提供したほか、国外に避難した子どもたちも含めて257万人以上の子どもたちが教育へのアクセスできるよう支援しました。また、387万人の子どもたちや保護者にメンタルヘルスや心理社会的支援を届けました。

 

「何よりもほしいのは ハイチが元の姿に戻ること」
ロニアリッサさん(17) ハイチ

「平和への願い」と題した詩を書いたロニアリッサさん(ハイチ、2024年2月22日撮影)

© UNICEF/UNI546818/Joseph
「平和への願い」と題した詩を書いたロニアリッサさん(ハイチ、2024年2月22日撮影)

ハイチよ わたしの心は あなたのために脈打つ
平和を歌うドラムのように
あなたへの愛で ドラムをたたく
憎しみが広がる世界で

安全などない国にいて
毎日 この国がどこに向かうのか問いかける
この国に 喜びはない

あぁ ハイチよ
私の小さな祖国よ あなたはどこに行ってしまったの?
おじいちゃんが教えてくれた
美しかったあなたの姿を

何よりもほしいのは ハイチが元の姿に戻ること
すべての不安は飛んで行って
幸せな日々に 戻ってきてほしい
心配も悲しみもなくなるように

あなたは変わると信じている
希望をもっている
神様が あなたが変わるのを見せてくれると

人道危機が深刻化するハイチ

ロニアリッサさんが暮らすハイチでは、2021年以降の政情不安や大地震、ハリケーンなどの自然災害、2022年以降の武力集団による暴力拡大などにより、人道危機が急激に深刻化しています。人口の90%が貧困にあえぎ、コレラの再流行など公衆衛生状況も悪化するなか、300万人の子どもたちが人道支援を必要としています。また、50万人以上の子どもが武装集団の支配する地域に住んでおり、暴力や徴用の危険に晒されています。

こうした問題に対して、ユニセフはパートナーとともに、家族と離ればなれになったり、暴力行為の危険に晒される子どもを含め、影響を受けている地域のすべての子どもたちのために、医療ケアや心理社会的支援など命を守るための幅広い支援を行っています。

©日本ユニセフ協会/2024

企画展「Poems for Peace~平和の詩~」
開催中!(2024年10月中旬まで)

10月中旬まで「Poems for Peace~平和の詩~」の取り組みにちなんだ企画展を開催しています。展示では、ウクライナ、南スーダン、イエメンなど、紛争下にある8カ国12人の子どもと若者が「平和」をテーマに綴った詩を、作者のポートレート写真や朗読動画とともに紹介しています。皆さまのお越しをお待ちしています。

企画展について詳しくはこちら>

ユニセフハウス来館案内  
開館時間:10:00~17:00
開館日:月曜日~金曜日、第2・第4土曜日
(祝日、年末年始を除く)
利用料金:無料

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

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※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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