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日本ユニセフ協会

ストーリー

「初めて話を聞いてもらえたと感じた」 障がいのある子どもたちと家族を支える
ユニセフの取り組み

2024年10月18日ジャララバード州(キルギス)

ザミラさんと11歳になる娘のカリマさん

© UNICEF Kyrgyzstan
ザミラさんと11歳になる娘のカリマさん(キルギス、2024年撮影)

「ママ、私も学校に行ってもいい?」キルギス南西部に暮らすカリマさん(11歳)は、毎年新学期が始まる時期になると、訴えかけるような目で母親のザミラさんにたずねます。生まれつき脳性麻痺があるカリマさんは、他の子どもたちと同じように授業を受けることができません。毎年、カリマさんの切実な訴えがある度に、ザミラさんは胸を突かれるような思いをし、娘の夢を叶えてあげられていないことを痛感します。

娘のカリマさんに勉強を教えるザミラさん

© UNICEF Kyrgyzstan
娘のカリマさんに勉強を教えるザミラさん(キルギス、2024年撮影)

学校に通えない娘のために、ザミラさんは自宅でカリマさんに懸命に勉強を教えています。ザミラさんの教育により、カリマさんは地図上での国々の位置や数字のほか、動物の名前も知っています。しかし、新学期が始まると、カリマさんが他の子どもとは違う状況に置かれているという現実が、痛いほど鮮明になります。

ザミラさんたちは、キルギス南西部ジャララバード州のスザク地区に住んでいます。カリマさんが療育を受けるために親子はさまざまな場所に足を運びましたが、継続した専門的なケアに行きつくことができずにいました。また、地方からの遠出にはお金がかかります。

そうしたなか、ザミラさんのような親たちにとって希望となるニュースが飛び込みました。ユニセフと地方政府によるプロジェクトで、もうすぐ近くに障がいのある子どものためのケアセンターが開設される、というのです。それは、使用されていなかった施設を改修し、障がいのある子どもたちが質の高いケアと支援を受けられる場を開設するものでした。新しいケアセンターでは、授業や療育、保護者支援のためのグループ活動が行われる予定です。

「私たちは長い間、このような場所ができることを夢見ていました。ここで娘のカリマは療育を受けられるし、私も家でカリマにやってあげられるマッサージの仕方を学べるのでは、と思っています」とザミラさんは話します。

 

「初めて話を聞いてもらえたと感じた」
障がいのある子どもの親たちによる自助グループの活動支援

ユニセフはまた、現地のNGOと連携して、スザク地区で暮らす障がいのある子どもの保護者が集まる場づくりも行っています。親や介助者が自助グループを立ち上げ、それぞれが直面している問題を話し合って共有し、政府による支援を呼びかける活動を後押ししています。

ユニセフは、エミリアちゃんのような子どもが必要なケアとサポートを受けられるよう支援している

© UNICEF Kyrgyzstan
ユニセフは、エミリアちゃんのような子どもが必要なケアとサポートを受けられるよう支援している(キルギス、2024年撮影)

ナズグーリさんも自助グループのメンバーの一人です。脳性麻痺のため歩いたり座ったりすることが難しい娘のエミリアちゃんと一緒に、定期的に集まりに参加しています。夫は、エミリアちゃんの脳性麻痺の診断を知るとすぐに去ってしまったため、ナズグーリさんは、ひとり親としてエミリアちゃんを育てています。残念ながら、障がいのある子どもを持つ家族において、こうしたケースは少なくありません。

エミリアちゃんには、常時ケアが必要です。ナズグーリさんは障がいのある子どもの保護者による自助グループの集まりに参加して、ようやく肩の力を抜くことができました。支援スタッフに見守られながら子どもたちが歌ったり絵を描いたりしている部屋の隣で、こうした集まりに参加できることは精神的な支えになっている、とナズグーリさんは言います。

「初めて話を聞いてもらえたと感じた」とナズグーリさんは話します。「エミリアの治療に全財産を費やしてきました。一日一日が苦労の連続でした。一時は、娘と外出することさえ怖くなったことがあり、この世界で自分たちは孤独な存在なのだと感じていました」。

ナズグーリさんはまた、エミリアちゃんが専門的なケアを無料で受けられること、そして、必要としてきたにも関わらず、これまで経済的負担の大きさから諦めていたケアサービスを受けられるようになることを期待しています。ナズグーリさんはもう一人で全てを抱え込まなくていいのです。自助グループに参加する他の親や介助者が悩みを理解してくれ、互いに支え合える、そんなつながりの場ができているのです。

自助グループの集まりは、喜びに包まれています。子どもたちは遊んだり、絵を描いたり、笑ったりして過ごします。それは、周りから孤立しがちな障がいのある子どもたちとその家族にとって、つながりを持てる貴重な時間となっています。

冒頭に登場したザミラさんの娘のカリマさんは、久しぶりに他の子どもたちに交じって机に向かい、表情を輝かせています。
「夢が叶ったね。やっと学校に行けたね」。ザミラさんは優しくささやきながら、娘のうれしそうな様子を見ていました。ここでは、子どもたちが他の子どもと対等であると感じます。それは、障がいのある子どもたちの家族が望みながらも、なかなか得られない経験です。

 

すべての子どもに教育を――インクルーシブな教育システムの実現に向けて

カリマさんやエミリアちゃんのような障がいのある子どもたちのための新しいケアセンターは、2024年末までにオープンする予定です。このセンターは、専門的・個別的ケアを提供するだけではなく、障がいのある子どもたちが成長し、学び、可能性を伸ばせる場となることを目指しています。そして、子どもたちの親にとっては、必要な支援を得られ、仲間との親交を深め、ほっと一息つける、そんな拠り所となることでしょう。

ナズグーリ さんとエミリアちゃん親子

© UNICEF Kyrgyzstan
ナズグーリさんとエミリアちゃん親子(キルギス、2024年撮影)

障がいのある子どもたちが一般の教育システムに参加できずにいる背景には、アクセスが悪いことに加え、専門的なリソースや教員への研修の不足など、さまざまな課題があります。また、差別や偏見は、障がいのある子どもたちをさらに疎外し、同世代の子どもたちとともに学び、成長する機会を妨げています。こうした課題を前に、ユニセフは新しいケアセンターの開設や保護者の自助グループの立ち上げといった取り組みとともに、障がいのあるなしに関係なく、すべての子どもが一緒に学べるインクルーシブな教育システムの実現に向けた提言活動をキルギス国内で行っています。

ケアセンター開設の日を指折りで数えている、というナズグーリさん。「エミリアは必要な療育を受けられるようになり、私も娘と一緒に学び成長することができます」と期待を込めて語りました。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

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※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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