2024年11月6日東エルサレム/アンマン/ジュネーブ/ニューヨーク発
ユニセフ(国連児童基金)などが、ガザ地区でここ数週間、3フェーズに分けて実施していたポリオワクチンの2回目の集団予防接種が昨日完了し、 10歳未満の子ども55万6,747人がポリオワクチンの2回目の接種を受け、2歳から10歳までの子ども44万8,425人にビタミンAが投与されました。
2回目の接種が完了、94%に投与
管理データによると、ガザ地区全体で、接種対象である10歳未満の子ども59万1,714人のうち、約94%が新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)の2回目の投与を受けたことが確認されました。この集団予防接種が極めて困難な状況下で実施されたことを考えると、これは特筆すべき成果です。接種率は、ガザ中部で103%、南部で91%を達成しました。
しかし、アクセスが困難なガザ北部では、速報値によると、接種率は約88%でした。ジャバリア、ベイトラヒヤ、ベイトハヌーンなどのアクセスできない地域では、推定7,000人から10,000人の子どもが予防接種を受けられず、ポリオウイルスに感染する危険にさらされたままです。これはまた、ガザ地区および近隣諸国におけるポリオウイルスのさらなる感染拡大のリスクを高めることにもなります。
2024年9月に開始したポリオワクチン集団予防接種事業は、この2回目の接種完了によって終了となりました。2回目の接種も、地域ごとの戦闘の人道的休止期間を挟みながら、ガザの中部、南部、北部において3つのフェーズに分けて実施されました。
最初の第1・2フェーズは計画通りに進行しましたが、ガザ北部での第3フェーズは、激しい砲撃や大規模な住民避難、また戦闘の人道的休止の保証および人道的アクセスの確保がされないため、10月23日に一時的に延期されました。ユニセフおよびパレスチナ保健省、世界保健機関(WHO)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)で構成される専門委員会が状況を慎重に評価した後、接種事業は11月2日に再開されました。
しかし、戦闘の人道的休止が保証された対象地域は1回目に比べて大幅に縮小され、ガザ市内に限られる形となりました。戦闘により15万人以上の人々がガザ地区北部からガザ市へと避難を余儀なくされたことから、想定を上回る数の子どもたちに接種することができました。多くの困難にもかかわらず、ガザ北部での第3フェーズが完了したのは、親や子どもたち、地域社会、保健スタッフの熱心な取り組みと勇気によるものです。
戦闘の人道的休止によって達成
ガザにおけるポリオウイルス株の広がりを食い止めるには、各コミュニティで少なくとも2回の予防接種を行い、90%以上の予防接種率を達成する必要があります。今後は、機能している保健施設で定期的に予防接種を行うことで免疫レベルを高めるとともに、ポリオウイルスを迅速に検出(感染した子どもまたは環境中サンプルにおいて)するための疾病監視体制を強化していきます。今後の疫学上の展開により、ポリオ集団発生へのさらなる対応が必要になるかどうかが決まります。
ポリオだけでなく、ワクチンで予防可能なすべての疾患に対する監視と定期予防接種を完全に実施するために、ユニセフなどは停戦を呼び掛け続けています。プライマリ・ヘルスケア施設への攻撃があったことは別として、今回の集団予防接種は、戦闘の人道的休止によって何が達成できるのか、が明らかになりました。現地における深刻なニーズに応えるため、今回のポリオ緊急対応の一連の取り組みは、他の保健・人道支援にも体系的に適用されなければなりません。
注記
パレスチナ保健省がユニセフ、WHO、UNRWAおよびその他のパートナーと協力して実施しているポリオワクチン集団予防接種は、2024年7月16日にガザ地区で確認されたポリオの集団発生を食い止め、ポリオウイルスのさらなる感染拡大を防ぐための緊急対策の一環です。
ガザ地区では伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型が、2024年7月には11の環境サンプルから、8月には身体にまひを起こした生後10カ月の乳児から確認されています。
「世界ポリオ根絶計画」に関する詳細情報およびポリオ集団発生に対する取り組みの最新情報は、Global Polio Eradication Initiativeのサイトでご覧いただけます。