2024年11月12日スリア州(ベネズエラ)発
4年前、ユニセフの現地パートナー団体の職員で、地域の児童福祉相談員のマリベル・フェルナンデスさんは、深刻な状況にあったアニータさんを目にして、栄養治療プログラムを受けさせるべきだと判断しました。マリベルさんの上司であるジャネット・マケンガ所長は、当時のアニータさんの状態について、「体重はわずか6キロで、やせ細って骨と皮だけでした。すぐに医師の元に連れていきました」と話します。
栄養治療プログラムを受けられるようになったアニータさんは、処方された栄養補助食とビタミン剤を摂り、地域の児童福祉相談員が毎日アニータさんの経過を確認しました。その結果、1カ月後には体重は800グラム増え、アニータさんは体を起こして座ったり、少しずつ歩いたりできるようになりました。その後も治療と児童福祉相談員による日々のフォローアップのおかげで、アニータさんは十分な回復を遂げ、短期間のうちに元気な姿を見せるようになりました。
包括的・継続的な支援が支える、子どもの健やかな成長
しかし、アニータさんの健やかな成長に影を落としている問題は他にもありました。アニータさんの暮らす集落では、子どもたちが、出生登録されていないことで身分証明書がなかったり、保健サービスや教育を受けられなかったり、暴力にさらされたりするなど、さまざまなリスクに直面しています。
アニータさんの場合、そうしたリスクはさらに大きいものでした。まだ赤ちゃんだった頃に、母親が集落を出て行ったからです。「アニータの母親は『午後に迎えに来るから、しばらくこの子の面倒を見ていて』と私に言って出かけたきり、帰ってきませんでした。その後、近所の人が、母親はコロンビア行きのバスに乗っていたと教えてくれました」と、おばのオルガさんはアニータさんを預かった日のことを話します。「それから私がアニータを育て、今では法的にも私の娘です。アニータには教育を受けてほしいです」とオルガさんは言います。
エトニア・グアヒラ集落が直面する数々の課題に対して、ユニセフと現地パートナー団体は、包括的な支援を行っています。1,800人の子どもたちの身分証明書の取得を支援したほか、集落や近隣に住む1万人以上を対象に、子どもの保護やよりよい養育環境などについて、研修や啓発活動を実施しました。また、1,200人の生徒が通う地域の学校において、補習プログラムの実施や給水施設の修繕などの支援を行っています。
アニータさんもこうした包括的な支援の恩恵を受けた一人です。先の栄養治療にはじまり、ユニセフと現地パートナー団体の支援によって身分証明書を取得し、現在はユニセフが支援する学校に通っています。継続した支援がアニータさんの健やかな成長を支えています。「学校も好きだし、遊ぶのも好き」と、アニータさんは母語のワユ語とスペイン語を混じえた言葉で話します。
小学1年生になったアニータさんを見て、マリベルさんは言います。「彼女の変化が私たちに教えてくれるのは、問題意識を持ち、正しい知識を得て、物事は改善できると知れば、私たちはさまざまな困難を乗り越えられるということです」。
ユニセフは、すべての子どもの命と権利を守るため、最も支援の届きにくい子どもたちを最優先に、約190の国と地域で活動しています。皆さまからのあたたかいご協力が、アニータさんのような子どもたちへの包括的・継続的な支援につながっています。