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日本ユニセフ協会

プレスリリース

紛争下の子ども4億7,300万人
今や6人に1人超、1990年代の倍に
ユニセフ事務局長「2024年はユニセフ史上最悪の年」

2024年12月28日ニューヨーク

ユニセフ(国連児童基金)が入手可能な最新データと世界的な傾向を分析したところによると、2024年に武力紛争が世界中の子どもたちに及ぼした影響は非常に深刻であり、過去最悪のレベルに至ったと考えられることが明らかになりました。

紛争下の子ども4億7,300万人

紛争や暴力が原因で、紛争地域に暮らすか家を追われる子どもはこれまでになく増えていると推定されています。紛争の影響を受けている子どもは、命を落としたりけがをしたりする[1]、また学校に通えない、命を守るワクチンを接種できない、重度の栄養不良に陥るなどの権利の侵害を受けており、その数は過去最多を記録しています。そして、その数は増えるばかりと予想されています。 世界中で必要とされる人道支援のうち紛争が要因となっているものは約80%であり[2]、安全な水、食料、保健医療ケアなど、生活に不可欠な物資やサービスへのアクセスを妨げています。

ヨルダン川西岸地区の自宅から避難する子どもとその家族。戦闘が激化する中、ジェニン難民キャンプの破壊された道路や建物のがれきの中を歩く(パレスチナ、2024年9月1日撮影)

© UNICEF/UNI648520/Badarneh
ヨルダン川西岸地区の自宅から避難する子どもとその家族。戦闘が激化する中、ジェニン難民キャンプの破壊された道路や建物のがれきの中を歩く(パレスチナ、2024年9月1日撮影)

現在、世界で6人に1人以上に当たる4億7,300万人を超える子どもが、紛争の影響を受けた地域に暮らしています[3]。世界では今、第二次世界大戦後、最も多くの紛争が発生しています[4]。紛争地域で暮らす世界の子どもの割合は、1990年代には約10%だったのが、現在はほぼ2倍の19%近くとなっています[5]

2023年末までに、4,720万人の子どもが紛争や暴力により住処を追われ[6]、2024年には、ハイチ、レバノン、ミャンマー、パレスチナ、スーダンなどでの紛争の激化により、避難する人がさらに増えたという動向が見られます。子どもは世界の人口の30パーセントを占めていますが、難民の約40パーセント、国内避難民の49パーセントは子どもたちです[7]。 紛争の影響を受けた国々では、平均して人口の3分の1以上(34.8パーセント)が貧困下で暮らしているのに対し、紛争の影響を受けていない国々は10パーセント強です[8]

「ユニセフの歴史上最悪の年の一つ」

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「2024年は、ほぼあらゆる指標において、紛争の影響を受けた子どもの数と、彼らの生活への影響の度合いという両方の観点から見て、紛争下にある子どもたちにとってユニセフの歴史上最悪の年の一つとなりました。紛争地域で育つ子どもたちは、平和な場所で暮らす子どもたちと比べて、学校に通えない、栄養不良状態になる、あるいは家を追われる可能性がはるかに高く、しかも、その状況が繰り返し起こることが多いのです。これは決してニューノーマル(新たな日常)であってはなりません。子どもたちが、世界の無秩序な戦争の巻き添え被害を受ける世代となることを許してはなりません」

キーウで大規模なミサイル攻撃が始まり、4時間以上もの間、地下鉄駅の通路に避難する子どもたち(ウクライナ、2024年8月26日撮影)

© UNICEF/UNI632168/Filippov
キーウで大規模なミサイル攻撃が始まり、4時間以上もの間、地下鉄駅の通路に避難する子どもたち(ウクライナ、2024年8月26日撮影)

入手可能な最新のデータによると、2023年には、国連が確認した子どもに対する重大な権利侵害は3万2,990件に上り、2万2,557人が被害に遭っています[9]。これは国連安保理で権利侵害のモニタリングが決議されて以来、最も多い数字です。重大な権利侵害の件数は全体的に増加傾向にあり、例えばガザ地区では何千人もの子どもが死傷しています。ウクライナでは2024年の最初の9カ月間に確認された子どもの犠牲者の数は、2023年1年間の数字をすでに上回っており[10]、さらに増加する可能性が高いでしょう。

特に女性と女の子の状況は憂慮すべきもので、紛争下での性的暴行や性暴力の報告が相次いでいます。ハイチでは、子どもに対する性暴力の報告件数が今年すでに1,000%増加しています[11]。紛争下では、障がいのある子どもも、不釣り合いに暴力や権利侵害にさらされる傾向があります。

教育、栄養、保健医療、メンタルヘルスなどの課題

激しさを増すアレッポの戦闘から逃れて、ラッカ市の一時避難施設にたどり着いた家族(シリア、2024年12月4日撮影)

© UNICEF/UNI701426/Aldhaher
激しさを増すアレッポの戦闘から逃れて、ラッカ市の一時避難施設にたどり着いた家族(シリア、2024年12月4日撮影)

紛争地域では教育が深刻な打撃を受けています。紛争の影響を受けている国々では、5,200万人以上の子どもが学校に通えていないと推定されています。ガザ地区の子どもたちやスーダンの多くの子どもたちは、1年以上も学校に通えていません。ウクライナ、コンゴ民主共和国、シリアなどの国々では、学校が損傷したり、破壊されたり、別の用途に転用されたりしたため、数百万人の子どもが学習の機会を失っています。教育インフラの破壊と学校周辺の治安の悪化により、これらの地域の子どもたちの教育は、すでに悲惨な状況にさらに拍車がかかっています。

紛争地域における子どもの栄養不良もまた、憂慮すべきレベルにまで悪化しています。紛争や武装暴力が依然として多くの紛争地域における飢餓の主な要因となっており、食料システムを破壊し、住民を強制的に移動させ、人道アクセスを妨げているためです。 例えば、スーダンでは、2017年以来初めて、北ダルフールで飢きんが宣告されました。2024年には、紛争の影響を受けた5カ国において、50万人以上がIPCフェーズ5の状態にあると推定されています。これは、最も深刻な食料不安の状況です[12]

カッサラ州に新しく設置された避難民キャンプでは、紛争から逃れてきた5,000以上もの家族が生活している(スーダン、2024年12月2日撮影)

© UNICEF/UNI698571/Nakibuuka
カッサラ州に新しく設置された避難民キャンプでは、紛争から逃れてきた5,000以上もの家族が生活している(スーダン、2024年12月2日撮影)

紛争は、子どもたちが重要な保健医療サービスを受けることにも壊滅的な影響を与えています。予防接種を受けていない、あるいは接種が不十分な子どもの約40%が、紛争の影響を部分的にまたは全面的に受けている国々に暮らしています[13]。こうした子どもたちは、安全な環境、栄養、保健医療サービスへのアクセスが途絶えたり、欠落したりしているため、はしかやポリオなどの疾病の集団発生に対して最も脆弱な立場に置かれています。

子どもたちのメンタルヘルスへの影響も甚大です。暴力や破壊にさらされ、愛する人々を失うことで、子どもたちは、うつ状態、悪夢や不眠、攻撃的または内向的な行動、悲しみや恐怖などの反応を示すことがあります。

また2024年は、これまでで最も多い281人の人道支援従事者が世界各地で犠牲になり、支援従事者にとっても最悪の年となりました[14]

2025年に向け、紛争下の子どものためにできることを

空爆を受け、避難していた多くの人が命を奪われたガザ地区デルバラハにあるルファイダ学校で、涙を流す子ども(パレスチナ、2024年10月1日撮影)

© UNICEF/UNI676929/El Baba
空爆を受け、避難していた多くの人が命を奪われたガザ地区デルバラハにあるルファイダ学校で、涙を流す子ども(パレスチナ、2024年10月1日撮影)

「紛争地域の子どもたちは、日々生きるのに必死で、子ども時代を奪われています。学校は爆撃され、家は破壊され、家族は引き裂かれています。安全や、命を維持するための基本的な必需品へのアクセスがなくなるだけでなく、遊んだり、学んだり、ただ子どもでいたりすることさえできません。世界はこうした子どもたちを裏切り続けているのです。2025年に目を向けるにあたり、私たちは状況を好転させ、子どもたちの命を守り、生活を良くするために、より多くのことをしなければなりません」(ラッセル事務局長)

ユニセフは、紛争のすべての当事者、および当事者に影響力を持つ人々に対して、子どもたちの苦しみを終わらせ、彼らの権利を確実に守り、国際人道法に基づく義務を遵守するための断固とした行動を取るよう求めます。

 

■注記

紛争下の子どもたちについてはこちらをご覧ください。

「武力紛争下にある子どもを保護するためのユニセフの変革アジェンダ(UNICEF’s change agenda for protecting children in armed conflict)」についてはこちらをご覧ください。

総合的食料安全保障レベル分類(IPC)は、食料と栄養危機を分類する世界的な尺度です。IPCに関する詳細は、こちらをご覧ください。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

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