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日本ユニセフ協会

プレスリリース

欧州・中央アジア、はしか感染急増
12万7,350件と過去25年で最多
ユニセフら緊急対策を呼び掛け

2025年3月13日ジュネーブ/コペンハーゲン

ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)が本日発表した新たな分析によると、2024年に欧州・中央アジア地域で報告されたはしかの症例数は12万7,350件に上り、2023年の2倍、1997年以降で最多の数となっています。ユニセフは、集団感染が発生している国の政府に対し、集団予防接種など緊急の対処をするよう呼び掛けています。

欧州・中央アジア、はしか感染急増

キーウにある保健センターで、予防接種を受ける生後8カ月のオレストちゃん。この保健センターでは、すべてのワクチンが、停電時でも適切な温度を保つ専用の冷蔵庫に保管されている(ウクライナ、2024年5月22日撮影)

© UNICEF/UNI601118/Vashkiv
キーウにある保健センターで、予防接種を受ける生後8カ月のオレストちゃん。この保健センターでは、すべてのワクチンが、停電時でも適切な温度を保つ専用の冷蔵庫に保管されている(ウクライナ、2024年5月22日撮影)

ヨーロッパおよび中央アジアの53カ国からなるこの地域で、報告された症例数の40%以上を5歳未満の子どもが占めました。報告された症例の半数以上が入院を必要とし、2025 年3月6日時点で得られた暫定的なデータによると、2024年に合計38人が亡くなったと報告されています。

この地域におけるはしかの症例数は、1997年に21万6,000件が報告されて以降、概ね減少傾向にあり、2016年には4,440件にまで減りました。しかし、2018年と2019年には増加に転じ、それぞれ8万9,000件と10万6,000件が報告されました。2023年と2024年には、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)による予防接種率の低下により、症例数が再び大幅に増加しました。多くの国で、予防接種率が未だパンデミック前の水準に戻っておらず、集団感染のリスクが高まっています。

2024年に、欧州・中央アジア地域のはしかの症例数は世界全体の3分の1を占めました。2023年だけでも、この地域全体で50万人の子どもが、定期予防接種で受けるべき麻しん含有ワクチンの1回目(MCV1)の投与を受け損なっています。

予防接種率の課題を浮き彫りに

ドゥシャンベの保健センターに、予防接種を受けに来た6歳の男の子 。父親は「子どもが病気にならないように予防したい」と話す(タジキスタン、2022年3月16日撮影)

© UNICEF/UN0635915/Babajanyan VII Photo
ドゥシャンベの保健センターに、予防接種を受けに来た6歳の男の子 。父親は「子どもが病気にならないように予防したい」と話す(タジキスタン、2022年3月16日撮影)

ユニセフ・欧州・中央アジア地域事務所代表のレジーナ・デ・ドミニチスは次のように述べています。「ヨーロッパと中央アジアにおけるはしかの症例は、過去2年間に急増しており、予防接種率の課題を浮き彫りにしています。この致死性が高く体を衰弱させる病気から子どもを守るには、保健スタッフへの持続的な投資を含む、各国政府の緊急対策が必要です」

はしかの原因となる麻しんウイルスは、最も感染力の強いウイルスの一つです。肺炎、脳炎、下痢症、脱水症などの合併症により入院が必要となったり、命を落としたりするほか、失明などの長期にわたり衰弱を伴う健康障害を引き起こすこともあります。また、はしかは感染と闘うための免疫記憶を“消去”することで免疫システムを損傷することがあるため、はしかを克服した人々は他の病気に対して脆弱になる可能性があります。予防接種は、このウイルスに対する最善の防御策です。

2023年にボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニア、ルーマニアでは、接種対象の子どものうち、MCV1の投与を受けたのは80%未満でした。これは、集団免疫を維持するために必要な接種率の95%を大きく下回っています。ボスニア・ヘルツェゴビナとモンテネグロでは、MCV1の接種率は過去5年以上、それぞれ70%と50%を割り込んでいます。

2024年にこの地域で症例数が最も多かった国は、3万692件のルーマニアで、次いで2万8,147件のカザフスタンでした。

昨年、世界中で35万件以上の症例

キーウにあるユニセフ支援拠点で、予防接種を受ける男の子(ウクライナ、2023年4月27日撮影)

© UNICEF/UN0841001/
キーウにあるユニセフ支援拠点で、予防接種を受ける男の子(ウクライナ、2023年4月27日撮影)

はしかは依然として世界的に大きな脅威となっています。2024年には、世界中で35万9,521件のはしかの症例が報告されています。国境や大陸を越えたウイルスの伝播は日常的に起きており、この感染力が強い病気の集団感染は、ワクチン未接種または接種が未完了の人々、特にそういった子どもがいるような場所であればどこでも起こるでしょう。

ユニセフ等は各国政府と協力しながらパートナーの支援を受け、コミュニティとの連携、保健スタッフの研修、予防接種プログラムと疾病監視体制の強化、はしか予防接種キャッチアップ(遅れの取り戻し)キャンペーンの立ち上げなどを通して、集団感染の予防と対応に取り組んでいます。

ユニセフ等は、集団感染が発生している国の政府に対し、症例発見や接触者追跡を早急に強化し、緊急集団予防接種を実施するよう呼び掛けています。国が集団感染の根本的な原因を分析し、保健医療制度の弱点に対処し、疫学データを戦略的に活用して予防接種率の穴を特定し埋めることが不可欠です。ワクチンを躊躇している親や社会的に疎外されたコミュニティへの働きかけ、ワクチンへの不公平なアクセスの改善は、すべての取り組みの中核に置かれなければなりません。

はしかの集団感染が現在起きていない国々は、免疫に関する課題を特定しそれに対処すること、ワクチンに対する国民の信頼を築き保つこと、そして強力な保健医療体制を維持することなどを通じて、準備を整える必要があります。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

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