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日本ユニセフ協会

プレスリリース

世界最悪の人道危機の一つ
紛争10年のイエメン
5歳未満児の半数が急性栄養不良
記者ブリーフィング 3/28(金) 14時~15時開催
根本巳欧 ユニセフ・イエメン事務所副代表

2025年3月25日ジュネーブ/ニューヨーク/ワシントンD.C.

イエメンで紛争が勃発して10年が経過した25日、ユニセフ(国連児童基金)イエメン事務所代表のピーター・ホーキンスは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見で、子どもたちの状況を報告しました。


記者ブリーフィングのご案内

3月28日(金)14:00~15:00(日本時間)より、
ユニセフ・イエメン事務所副代表の根本巳欧(ねもと・みおう)による
オンライン記者ブリーフィングを以下の通り開催します。

詳細・お申込 > https://www.unicef.or.jp/news/2025/0043.html

世代を超えた負の連鎖

ホデイダにあるユニセフ支援の移動診療所で、上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された子ども(イエメン、2024年11月27日撮影)

© UNICEF/UNI708796/ALfilastini
ホデイダにあるユニセフ支援の移動診療所で、上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された子ども(イエメン、2024年11月27日撮影)

イエメンの紛争は悲劇的な節目を迎えました。10年以上にわたってほぼ間断なく戦闘が続き、一時的に敵対行為が弱まったのはごくわずかな期間だけでした。この紛争により、子ども時代が奪われ、未来が打ち砕かれ、あらゆる人が生き残るために必死な状況に陥りました。

私は本日、数字やデータを共有するためだけではなく、世界最悪の長期化した人道危機の一つに苦しむ何百万人もの子どもの声を代弁するためにここにいます。これは、飢餓、剥奪、そして今や懸念される紛争激化に代表される危機なのです。

5歳未満の子どもの2人に1人が急性の栄養不良状態にあります。そのうち53万7,000人以上が、苦痛を伴い、命にかかわる、しかし十分に予防可能な重度の急性栄養不良に陥っています。栄養不良は免疫力を弱め、発育阻害(スタンティング)を引き起こし、子どもたちの潜在的な可能性を奪います。イエメンでは、これは単なる健康上の危機ではなく、何千人もの子どもたちにとって死を意味するものなのです。

同様に憂慮すべきことに、140万人の妊娠中および授乳中の女性が栄養不良状態であり、世代を超えた負の連鎖が永続する状況となっています。

この大惨事は天災ではありません。人災です。10年以上にわたる紛争は、イエメンの経済、保健医療制度、インフラを壊滅させました。暴力が一時的に沈静化しても、紛争の構造的な影響、とりわけ子どもたちにとって深刻な状況は続きます。人口の半数以上が、生きるためには人道支援を必要としています。2015年以降、食料価格は300%上昇し、高騰しています。食料や医薬品のライフラインである主要な港と道路は、損傷を受け、あるいは封鎖されています。

ホデイダの移動診療所では、重度の急性栄養不良の子どもたちに、栄養治療食のプランピー・ナッツを提供している(イエメン、2024年11月27日撮影)

© UNICEF/UNI708780/ALfilastini
ホデイダの移動診療所では、重度の急性栄養不良の子どもたちに、栄養治療食のプランピー・ナッツを提供している(イエメン、2024年11月27日撮影)

支援継続に、持続的な資金が必要

このような非常に困難で危険な状況にもかかわらず、ユニセフは子どもたちのために活動を続けています。

ユニセフは2025年、3,200カ所の保健施設、栄養不良の子ども60万人の治療、70の巡回チーム、4万2,000人の地域保健スタッフ、そして、栄養治療食を提供するセンター27カ所を支援する予定です。これらの支援を継続するためには、持続的な資金が必要です。そうでなければ、イエメンの760万人の人々がプライマリ・ヘルスケアを受けられなくなる恐れがあります。

イエメンにおけるユニセフの2025年の人道支援活動の資金要請に対し、集まったのはわずか25%です。ニーズが高まる中、緊急の資金援助がなければ、私たちが提供できる最低限の支援でさえ維持することができません。

重度の急性栄養不良の53万7,000人の子どもにとっては一分一秒が大切なのです。重度の急性栄養不良の子どもは、健康な子どもに比べて死亡する確率が11倍も高いのです。治療しなければ、彼らは静かに命を落とすことになります。生き延びた子どもたちでさえ、認知機能の発達障がい、慢性疾患、経済的可能性の喪失など、生涯にわたって影響を受けることになります。これはイエメンだけの損失にとどまりません。人類全体にとっての敗北なのです。

子どもの将来のために今、行動を

先月、イエメン南部のタイズで、3歳のアミーナちゃんに会いました。彼女の母親は、骸骨のように痩せ細ったアミーナちゃんを抱いて、ユニセフの栄養クリニックまで12キロの道のりを歩いてきました。アミーナちゃんは現在、回復途上にありますが、彼女の将来は、私たちが支援を継続できるかどうかにかかっています。

アデンの保健センターで受け取った栄養治療食を、母親から食べさせてもらう2歳半の女の子(イエメン、2024年5月23日撮影)

© UNICEF/UNI585231/Hayyan
アデンの保健センターで受け取った栄養治療食を、母親から食べさせてもらう2歳半の女の子(イエメン、2024年5月23日撮影)

つまり、以下の点にかかっているのです。一つは、支援に必要な資金を全額集めること。イエメンにおけるユニセフの2025年の支援活動には、追加で1億5,700万米ドルが必要です。あらゆる形態の栄養不良や病気、教育の欠如、そしてイエメンの子どもたちが強いられているその他の苦しみと闘うためには、持続的な投資が必要です。

二つ目は、人道アクセスの保障です。イエメンの紛争に関わるすべての当事者は、支援物資の妨げのない輸送を認め、命を守る支援を人道支援従事者が届けられるようにしなければなりません。拘束された国連スタッフやその他の人道支援従事者の解放を求めます。そして重要なことは、紛争を終結させることです。

イエメンの子どもたちは、あと10年も待つことはできません。彼らには平和が必要です。彼らには正義が必要です。しかし何よりも、子どもたちには今、私たちの行動が必要なのです。彼らを失望させることのないように。

* * *

 

注記: 2024年のユニセフのイエメンへの支援実績には以下が含まれます。

  • 重度の急性栄養不良の5歳未満児への治療、約43万2,000件を支援
  • 約3,200カ所のプライマリ・ヘルスケア施設を支援し、5歳未満児58万人を含む760万人へ命を守るプライマリ・ヘルスケアサービスの提供を支援
  • 120万人に緊急および持続的な水と衛生に関する支援サービスを提供
  • 4万9,600人以上の教員が学校教育に従事し続けられるよう、奨励金の支給を支援
  • 脆弱な立場に置かれているイエメン全土の960万人以上の人々に、無条件での現金給付支援を2回実施

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