取材をしたモンゴのあるゲラ州のウェダンジ・アッスウ知事に
栄養の問題についてインタビューしました。
今回の食糧危機の状況は、過去と比較して、どのくらい悪い状況にあるのですか?
今年のサヘル地帯における穀物生産量は、1660万トンでした。この数字は、過去5年間の穀物生産量と比較すると、およそ2パーセントの減少、昨年比ではおよそ25パーセントも減少しました。全国的に見てみると、過去5年比で23パーセントの減少、昨年比で50パーセントの減少となっています。
明確には、この状況は「飢餓」ではありません。これは栄養危機です。チャドは、通常時でも栄養不良率が高い国です。雨不足や作物の不作によって状況が悪化すると、子どもたちが深刻な急性栄養不良に陥るリスクが高まります。また、チャドでは毎年、はしかなどの感染症が相次いで発生しています。病気によって栄養不良の状態が悪化し、深刻な栄養不良のために命を落とす子どもの数が増加しています。
チャドの人びとの多くが、近年の度重なる食糧危機のショックから立ち直ることができないまま、今年の干ばつと食糧不足に直面することになりました。チャドは、子どもたちの命と発達に直接的な影響を及ぼす度重なる食糧危機の問題を抱えています。
今回の食糧危機は、2011年半ば頃、リビアの内戦によるチャド人9万人の帰還と重なりました。さらなる食料不足と雑穀を含む食糧の価格高騰を引き起こしました。穀物によっては、昨年比、2倍の価格です。世界食糧機構によると、特に、サヘル地帯に暮らす家庭が深刻な影響を受け、十分な食べ物を得られない家族が多くなっています。近年で最悪の危機です。
どうして食糧危機が起こったのですか?
先ほども申し上げましたように、穀物生産量の減少や慢性的な食糧不足による食糧の価格高騰が要因として挙げられます。当然ながら、家庭で得られる食料の減少や栄養面での質の低下は、子どもたち、特に幼い子どもたちに影響を及ぼします。さらに、脆弱な統治や保健制度、極度の貧困と政情不安といった国の構造的な問題もあります。要するに、干ばつ、高価格、送金の喪失、環境悪化、人口移動、そして貧困や脆弱性など、複合的な要因が存在しています。
今、最も必要なものは何かを教えてください。
5歳以下の重度の急性栄養不良児の治療には、即席の栄養治療食品の提供と医療的ケアが最も大切です。これを利用できさえすれば、子どもたちの命を守ることができます。私たちが直面している最大の課題は、これから数ヶ月のニーズが高まる時期に、子どもたちにとって重要なこれらの食料を十分に確保することです。
さらに、栄養不良児のマラリアや下痢性の病気などへの病気の予防も重要です。そのためには、安全な水へのアクセスの向上、適切な衛生設備の設置、教育(基本的な家庭習慣の向上など)が大切です。基本的な家庭習慣とは、たとえば、生後6ヶ月までの完全母乳育児を意味しています。
この危機に対する根本的な解決策は何でしょうか。
保健ケアのアクセス向上と適切な治療の提供です。そのためには、質が保たれた栄養センターの数を増やすことが必要です。また、国民の栄養状況をモニタリングすることも大切です。モニタリングによって、より良い保健ケア制度や社会サービスの確立、栄養不良の悪循環を断ち切る持続可能な解決策を見つけるために役立ちます。
また、長期的な解決策についても考える必要があります。たとえば、農業・家畜セクターへの支援が大切だと考えています。
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