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現地訪問レポート
FNSチャリティキャンペーンの活動の一環として、フジテレビの情報番組「とくダネ!」の制作チームとともに、2011年から起きている干ばつによる食糧危機と栄養危機の状況、そしてチャドで課題について取材するため、チャドを訪れました。 2012年6月、雨期に入ったものの降雨は少なく、焼けるような日差しが照りつける猛暑のなか、首都ンジャメナから東へ車でおよそ8時間。ゲラ州のモンゴにむかいました。 ユニセフ・チャドは、効率よく支援活動を行うため、モンゴに拠点オフィスを置いています。 外来栄養センター外来栄養センター(CNA)を訪れました。CNAでは、栄養状態の検査と合併症のない栄養不良の子どもの治療を行っています。このセンターの診察は週1回。朝9時にも関わらず、30人を超える人たちが来ています。
CNAでは、ちょうど、髄膜炎の予防接種も行われていました。チャドは、サハラ以南のアフリカの髄膜炎が流行する地域「髄膜炎ベルト」にある国のひとつで、なかでも非常に流行度の高い国です。ユニセフは、他の支援団体と共にチャド政府を支援し、全国的な髄膜炎予防接種キャンペーンを行っています。 栄養治療センター
モンゴ地域病院に併設された入院治療を行う、栄養治療センター(CNT)を訪れました。CNTには、栄養不良と診断された子どもで、合併症のある子どもが入院しています。 病室で、カディージャさん(35歳)とハバーバちゃん(11ヶ月)に出会いました。ハバーバちゃんは、栄養不良のうえ、高熱と鵞口瘡などの合併症があるため、CNTに入院していましす。母親のカディージャさんは、自身も栄養不良にもかかわらず、ぐったりとしたハバーバちゃんを背中に背負い、モンゴ市内から15キロ離れたオヨ村から、歩いて3時間の道のりをCNTまでやって来たそうです。 カディージャさんの家族は、14人の大家族です。彼女は13歳で結婚し、9人の子どもがいます。一番上の子どもは22歳、11ヶ月のハバーバちゃんには2歳の子どもがいます。一夫多妻制の家庭の第一夫人で、他に2人の夫人がいるそうです。第二夫人には子どもが1人いて、第三夫人には子どもはいません。 ユニセフは、免疫力が低下している栄養不良の子どもが、院内で他の病気に感染するのを予防するため、入院患者数を調整できるようにテントによる仮設病室を設置するプロジェクトを実施しています。さらに、深刻な急性栄養不良の子どもを治療するため、サヘル地帯でのCNAとCNTの設置数の増加と配置おける戦略的な栄養プログラムを進めています。
家庭訪問で見た問題栄養不良の子どもを抱える家族の生活状況を知るため、モンゴ市内から15キロ離れたベンダ村を訪れました。
外来治療にも課題があります。たとえば、栄養センターでは、治療用のプランピーナッツを渡す際、母親に対し、食べ方の指導を行っています。しかし、家庭では、栄養不良ではないけれど、お腹をすかせた他の兄弟たちにもプランピーナッツを与えてしまうことがよくあります。結果、栄養不良の子どもは適切な量のプランピーナッツを食べることができず、状態が悪化します。入院治療を受けなければならなくなるケースも多くあります。 また、「清潔で安全な水へのアクセス」も多くの家庭にとって難しいことです。家庭にある水がめには汚れた水が入っています。そして、その水を飲む子どもたち。焼け付くような日差しの酷暑のチャドで、のどを潤す水は汚れた水しかありません。
病気になってしまうと、保健施設にアクセスできるか、保健施設で十分な治療やケアを受けることができるか、親が子どものために通院を続けることができるか、などの子どもの命を守るために必要な様々な条件があります。しかしチャドにおいては、これらすべてが課題です。 早婚
複数指標クラスター調査の統計によると、チャドでは、20歳から49歳の女性の70パーセントが、18歳までに結婚しています。 栄養治療センターで出会ったカディージャさんが結婚した年は13歳。そして、彼女の娘のワジーラさんも結婚が決まっています。ワジーラさんは14歳です。母親がハバーバちゃんの入院に付き添って家を不在にしている間、彼女が一切の家事をしています。学校には通って教育を受けたことがありません。
家庭訪問で出会った他の女性たちもみんな10代で結婚し、その多くが10代前半で結婚していました。そしてその結婚の多くは、結婚する当事者の意思ではなく、親たちによって決められていました。 子どもの早婚は、教育を受ける機会を奪われたり、女子が妊娠・出産による妊産婦死亡のリスクにさらされたりするなど、子どもの基本的な権利の享受という点において、女子の立場は弱く、不利な状況にあります。 ユニセフ・チャドは、婚姻適齢を定める法律の制定について政府に働きかけており、現在、政府で審議が行われています。 武力紛争の影響
チャドでは、数十年にわたって武力紛争が続いてきました。武力紛争には子どもたちも巻き込まれ、子ども兵士として徴用された子どもたちが犠牲となりました。2008年以降、平和の定着にむけた取り組みが進行中で、国の情勢は落ち着いています。 元子ども兵士の少年に会って話を聞くことができました。
スーレマン君(14歳)は、2007年に軍隊に徴用され、2009年に支援を受けて復員しました。「内戦中、僕は東部の町に住んでいた。僕が暮らすコミュニティは孤立した。友だちから軍隊に行ったほうがいいと言われて、一緒にトラックに乗って軍隊のキャンプに入った。」まだ9歳だった彼は、10ヶ月の軍隊トレーニングを受けました。戦争について彼はこのように言っています。「死ぬ人や叫ぶ人、ケガをした人がいた。ケガをした人を治療するために医者も来ていた。とても怖かった。どうすることもできなかった。軍隊を離れることは不可能だった。」 スーレマン君は今、石けんやキャンディ、ペンなどを売る小さなお店を開いています。地元の政府機関と支援団体のサポートによって、この仕事を始めました。学校にも行っています。彼は、クラスでの成績は95人中13番目。将来の夢は医者になることです。スーレマン君は言います。「軍隊にはぜったいに戻らない」。 子どもの権利を定めた国際条約「子どもの権利条約」は、18歳未満の子どもが戦闘に関与することを禁じています。ユニセフは、この条約を活動の指針とし、武力紛争に徴用された子どもたちの動員解除、そして心のケアやリハビリを含む社会復帰を支援しています。 おわりにユニセフ・チャドのマーセル・ウッタラ副代表の言葉がとても印象に残っています。「チャドは、生まれてくる子どもにとって大変厳しい環境です。この国で成長して大人になることはチャレンジなのです。」 子どもたちが生きて、育つことが「チャレンジ」ではなく「当たり前」となり、さらに、安心して成長していける権利を享受できるよう、ユニセフ・チャドは活動を続けています。みなさまからのあたたかいご支援が必要です。 募金方法はこちらから クレジット表記のない写真はすべて:©日本ユニセフ協会 |