みなさま
国際社会が心を一つにすれば大きな変化を起こせる ——— インド洋沿岸の津波被災者への支援を通して、多くの方々がこう実感されたのではないかと思います。ユニセフの活動も、平素からのみなさまのご支援、また緊急募金へのご協力よって大きく前進し、心配された感染症の流行をも未然に防ぐことができたのです。
しかしその一方で、津波後の被災地と非常によく似た緊急事態が、今この瞬間にも世界30以上の国々で起こっていることは、ほとんど知られていません。
木の枠にビニールシートをかぶせただけの粗末なテントが、何百、何千と点在する難民・避難民キャンプ。灼熱の中で、子どもたちは水を求めて半日以上も列に並び続けています。診療所に担ぎ込まれた赤ちゃんの枯れ木のような体、膨れ上がったお腹。明らかに重度の栄養不良です。ここアフリカの子どもたちは、何ヶ月、あるいはもう何年も、この苦しみに耐え続けているのです。
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マラウイを5月に訪問し、コミュニティの子どもケアセンターのボランティアの方と話すベネマン事務局長。 |
紛争による人道危機に直面したスーダン・ダルフールでは避難民キャンプに人々があふれ、安全な水や薬などが大幅に不足し、乳幼児の死亡率が通常の10倍にも上昇しました。衰弱のあまり物を飲み込むことさえできなくなってしまった1歳のマイスーンを助けるために、保健員の一たちは毎日、脱水症状を和らげるORS(経口補水塩)を与え、栄養補給を続けました。傍らで必死に祈りつづけていた母親は言います。「紛争が始まり、危なくて畑に出られなくなりました。食べ物が底をつき、わが子がどんどんやせていくのに何もしてやれないのです。もしここにキャンプがなかったら、もしここで治療してもらえなかったら、この子の命はあきらめるしかなかったでしょう。」
マイスーンは幸運でした。140万人もの子どもが難民・避難民となっているスーダンでは、その多くがキャンプにもたどり着けず、飢えや病気、時には暴力によって、誰にも知られることなく命を落としています。こうした同じような悲劇がコンゴ民主共和国で、エチオピアで、あるいはハイチやネパールで毎日起きているのです。
干ばつに見舞われたジンバブエのトウモロコシ畑で茶色く枯れた作物を前に立ち尽くす少年。両親をエイズで亡くした彼には、もう守ってくれる人は誰もいません。
テレビカメラが回ることのない、世界で最も貧しい国々の、最も弱い立場にある子どもたち。こうした子どもたちを守るため、ユニセフは現地で地道な救援活動を行っています。どうかみなさまから、津波で被災した子どもたちに向けられたのと同様の、あたたかいお力添えをいただけないでしょうか。
天災、紛争、感染症の流行…緊急事態の背景にあるものはさまざまですが、そこに置かれた子どもたちの苦境は同じです。生死にかかわる救援はもとより、誘拐や人身売買からの保護、学校の災害、災害を体験した子どもや兵士にさせられた子どもたちへのトラウマ克服プログラムなど、ユニセフは世界のどこであろうと、子どもにふさわしい未来を築くために力を惜しまず人道支援を続けています。
世界が心を一にすれば、多くの子どもたちの命を救うことができます。緊急事態が起こっている国で、世界中で、1人でも多くの命を助けるため、私のもてる力のすべてを尽くしてまいります。どうかみなさまの引き続きのご支援を心からお願い申し上げます。
ユニセフ(国際連合児童基金)
事務局長
アン・M・ベネマン