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財団法人日本ユニセフ協会

国際協力人材養成プログラム

海外インターン体験記

東ティモールのエスコラ・フォウン(新しい学校)での取り組み

氏名:塚越 史枝
派遣先:東ティモール事務所(Education Section)
派遣期間:2010年 9月〜 12月

イギリスの大学院でコースワークと修士論文の提出を終えた後の9月から卒業までの3ヵ月半、東ティモール事務所の教育セクションでインターンをさせていただきました。

教育セクションでは、主にChild Friendly Schools(CFS/子どもに優しい学校)アプローチのもと行われている教員研修と学校修復の2つのプロジェクトに携わりました。大学院進学の前に教師経験があり、以前も他の国で教員研修に携わっていた経験があったことから、東ティモールではユニセフがどのような教員研修を現場でサポートしているのか非常に興味がありました。

首都のディリ市で行われたブラジル人講師による
首都のディリ市で行われたブラジル人
講師による研修の様子

私の主な業務は、各ドナーにユニセフ東ティモールでの取り組みの様子を知ってもらうために、フィールドでのモニタリングの結果をレポートやストーリーにまとめることです。運良く私がインターンを始めた9月13日から1週間、首都のディリ市でブラジル人講師たちによるティモール人研修員向けの研修が行われており、さっそく現場へ視察させてもらうことができました。

2010年、ユニセフ東ティモール事務所では、教育省と連携し、CFSの教員研修プロジェクトに39校の「エスコラ・フォウン」(現地語のテトゥン語で新しい学校の意味)を指定し、各学校で教員研修を行っています。その一環として、ディリ市で研修を受けた研修員たちは翌週地方へ戻り、自分たちがディリの研修で習得したことをもとに各学校の教師たちに研修を行います。私も地方の学校研修のモニタリングに数回同行させてもらう機会に恵まれ、ティモール人同僚の協力を得て、現場の校長先生や教師、保護者、子どもたちに「エスコラ・フォウン」の成果と課題について現場の声を聞き出しました。

現場での数々のインタビューを経て見えてきたのは、「エスコラ・フォウン」によって東ティモールの学校は、子どもの視点をより大切にした教育環境や学習内容の改善に非常に貢献しているということでした。学校ではPTAを中心に保護者たちが協力して学校修復を行ったり、教師たちは子どもが学習に興味関心をもてるように竹や木などを使ったローカル教材を作り、ゲームやアクティビティを授業に取り入れています。また、子どもたちも楽しそうに授業に積極的に参加しています。

その一方で僻地に暮らす子どもたちの中には、山道を片道約2時間かけて通学しなければならないということも珍しくありません。

山間部の僻地の小学校を視察(左が著者)
山間部の僻地の小学校を視察
(左が著者)

特に小さい子どもは自宅から遠く離れた小学校まで通うことが体力的に難しく、東ティモールでは6歳で入学できる子どもは全体の半分以下の人数にとどまっているのが現状です。また、雨季になると山間部では道路状態はさらに悪化し、退学せざるを得ない子どもも少なくありません。そのため、訪問した小学校6年生のクラスでは、13歳から17歳の子どもたちが一緒に机を並べて学習をしています。

また、東ティモールでは教室数が不足しています。インタビューした先生の中にはある地方の小学校の先生は、「エスコラ・フォウン」の研修で習った授業を実践したいけれど、1クラス80人の教室では非常に難しいと語ってくれました。自分が教師をしていた頃と比較してみても、東ティモールの先生たちが置かれている現状は非常に厳しく、視察を通して先生たちの現場での苦労と努力が実感できました。

インターンの当初は教育セクションの業務だけだったのですが、その後事務所内の各セクションの担当者からブリーフィングを受け、自分の興味関心などを伝えていくうちに、他のセクションのスタッフたちとも一緒にフィールド視察へ出かけるようになりました。特に、私が日本ユニセフ協会からのインターン派遣ということで、協会の支援で行われているネピア「千のトイレプロジェクト」の視察も水と衛生セクションのスタッフたちと一緒に行きました。また、修士論文の研究テーマーと関連してユースセクションのライフスキル教育研修の視察にも同行させてもらいました。

ネピア「千のトイレプロジェクト」のCLTSの活動視察
ネピア「千のトイレプロジェクト」
コミュニティ主導型の包括的衛生プログラム
(CLTS=Community Led Total Sanitation)を視察

結果的には、ドナーレポートやストーリー、パンフレットの作成といったコミュニケーションの仕事を軸に、様々な視点から東ティモールの教育問題の理解を深めることができました。インターン開始前には想像もつかなかった様な多岐に渡る業務内容となりましたが、東ティモールの教育に携わる援助機関や政府、NGO関係者などとも知り合うチャンスに恵まれ、非常に充実した3ヵ月半になりました。

最後に、ユニセフ東ティモール事務所と日本ユニセフ協会の方々のご協力のもと、ウェブサイト等を通して、東ティモールのユニセフの活動を多くの支援者の方々に伝える機会を得られたことを大変感謝しております。ありがとうございました。

塚越さんのレポート
『10月15日世界手洗いの日東ティモールでの取り組み』
詳しくはこちらから >>

『「子どもにやさしい学校」づくりをめざして
日本のユニセフ支援者にむけた東ティモールからのメッセージ』
詳しくはこちらから >>

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紛争地で子どもの保護に取り組む

氏名:大島 里絵
派遣先:ユニセフフィリピン・マニラ事務所(Child Protection Section)
派遣期間:2010年8月〜10月

夏休みを利用して、フィリピン事務所の「子どもの保護」部署でインターンをさせていただきました。主な業務は、武力紛争の影響を受ける子どもたちを保護するプロジェクトの運営補助です。日本ではあまり知られていませんが、フィリピン南部・ミンダナオと呼ばれる地域では、政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)という反政府勢力との間で40年にもわたる紛争が起きています。紛争の影響を真っ先に受ける子どもたちを保護するため、ユニセフは宗教コミュニティと協力し、試験的にミンダナオでプロジェクトを行っています。私は大学院でミンダナオ紛争を研究していたので、今回のインターンは「まさにピッタリ!」という内容でした。

MILFとの会談(手前右側がMILFのムラド議長)

上述の通り、ミンダナオ紛争は今なお続く紛争で、政府との間に和平合意は結ばれていません。せっかくピッタリのプロジェクトに携われても、現場には行けずオフィスワーク中心のインターンになるだろうなぁ、と残念に思っていたのですが、私の予測は良い意味で裏切られました。インターン第一週目からミンダナオへの出張が決まったのです。ミンダナオはオフィスのあるマニラよりも危険度が高く、上級のセキュリティー研修を受けなければ訪れることが出来ません。つい数日前まで東京で呑気に暮らしていた私は、「道端で武装勢力に襲われ、ドライバーも殺されてしまいました。さて、あなたはどうしますか?」という研修内容に震え上がり、現地訪問への期待が、一気に恐怖へと変わりました。

しかし実際にミンダナオを訪れてみると、人々は温かく、自然は豊かで食べ物も美味しく、恐怖心はあっという間になくなってしまいました(とは言ってもやはり紛争地ですし、行動の自由は制限され、警備も厳重です)。8月中の出張は、MILF含む重要ステークホルダー(関係者)と会合を持ち、プロジェクトの趣旨説明や協力要請を行うことが目的でした。停戦合意を監視する国際停戦監視団(IMT)との会合では、日本政府から派遣されている要員の方に積極的にIMTの活動内容をヒアリングし、上司に伝えるということをしました。また、プロジェクト・サイトの候補地視察もしました。

大雨の影響で床下浸水した避難民キャンプにあるCFS

訪れた避難民センターは、大雨の影響で床下浸水しており、辺り一帯が広く浅い湖のようになっていました。ユニセフはChild Friendly Space(子どもに優しい空間)という、子どもたちが子どもらしくいられる空間を同センターに提供しているのですが、洪水の影響でアクセスが制限されていました(写真)。子どもたちは、トイレに行くにも水に浸からなければならない状態です。最初の方の出張では、基本的には上司について紛争地を見て回るだけで、その中で自分が出来ることを模索していました。

インターンも終盤に差し掛かった頃、①PCAの締結、②ステーク・ホルダー・ミーティングの開催、という最後の大仕事が与えられました。この頃になると、仕事も丸投げされることが多くなりました。PCAとはProject Cooperation Agreementのことで、この契約書が署名されない限りプロジェクトを始められません。PCA締結には予算書や計画書などの書類が必要なのですが、なかなか書類が出揃ない状況が続いていました。最初は書類提出の催促に奮闘していましたが、いざ書類が揃っても、社会人経験のない私は予算書や計画書を作成出来るはずもなく、引き続き苦労しました。ミーティングの開催も同様です。誰を呼ぶ、いつどこで行う、何を話し合うなど、すべてが白紙の状態から、私が中心となり運営しなければなりませんでした。自分の仕事の出来無さにいら立ちや悔しさも覚えましたが、周囲の助けもあり会議が無事終わった時には、達成感でいっぱいになりました。同時にプロジェクトに対する責任感も芽生え、途中で帰国することが非常に残念で仕方ありませんでした。

CFS内で元気いっぱいに歌っている子どもたち

10週間という短い期間でしたが、本当に充実したインターンとなりました。生活面や人間関係でも困ることはなく、沢山の人に助けられながら楽しく過ごすことが出来ました。前述したように、私は基本的なビジネススキルも無く、専門性も乏しいただの学生です。事務所ではもちろん最年少です。最初は、自分と職員との間の圧倒的な実力差に愕然とし、何も出来ない自分は、上司に更なる負担をかけているだけではないか、と申し訳ない気持ちでいっぱいでした。しかし「人を育てることも私の仕事。それに君にはインターン生として学ぶ権利がある。」との上司の言葉に目一杯あまえ、気長に頑張ることが出来ました。インターン終了間際には「君が去ったら、このプロジェクトはどうなってしまうの?!」と言ってもらえるまでの信頼が生まれ、本当に嬉しかったのを覚えています。今後はこの経験を修士論文に反映し、大学院を修了した後は、経営コンサルティング会社で働く予定です。まずは社会にもまれ、ビジネススキルを磨き、その後またユニセフの活動に携われたらと願っています。

最後に、私のように日本の大学院に所属しており、社会人経験のないインターン志望の方にメッセージです。経験の浅さに臆することなく、まずは応募してみてください。チャレンジも多いですが、日本ユニセフ協会並びにユニセフの方々の協力があれば、絶対に乗り越えることが出来ます。私は仕事をするうえで、分からないことがあれば、常に誰にでも質問をしていました。振り返ってみると、こうした自分の未熟さが人とのコミュニケーションを促し、「ユニセフとパートナーの間に立って連絡・調整を行う」というミッションに役立ったのではないかと思います。

貴重な機会を頂いた日本ユニセフ協会、ユニセフ東京事務所、ユニセフフィリピン事務所の方々に、この場を借りて深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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