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ミャンマー:子ども兵士を解放へ
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© UNICEF Myanmar |
解放にあたって行われた式典を終え、社会復帰への準備をする少年たち。 |
ロンジーと呼ばれるミャンマーの伝統的な民族衣装と糊のきいた丸襟の白シャツを身につけた若者たちが、整然と並べられた椅子座って式の開会を待っています。ほとんどの若者が静かに着席する中、何人かはそわそわした様子で何度も椅子に座りなおしたり、首を伸ばしてこれから開かれる式典の準備の様子を伺っています。
この式典に参加した80人全員が、ミャンマー軍に徴用されていた子どもや若者です。解放が決まった子どもたちにとって、これが最後の点呼確認です。2012年6月にミャンマー政府が軍への子どもの徴用や使用の廃止と防止に関する行動計画に署名をしてから、子ども兵士の解放はこれで8回目です。
19歳のチョー・トゥーさんも、解放された子ども兵士のひとりです。18歳未満の子どもを軍隊に徴用することは法律で禁止されていますが、チョーさんは2013年、17歳のときに軍に入隊しました。
チョーさんはミャンマー南西部にある人里離れた地域の高校を最高点で修了し、優秀な成績を収めていました。軍の雇用担当者が村にやってきたのは、高校の卒業試験が終わった頃のことです。
給料のよい仕事に就け、貧困から抜け出すことができるという話は、チョーさんにとってとても魅力的でした。軍に入る前に施設の見学に来るように雇用担当者に薦められ、母親と一緒にヤンゴンにある研修施設を訪問することにしました。
「訓練場を見学し、家に帰りたくなりました。でも、このままここで働かないなら母親と私の交通費を払うように、と言われたのです」と、チョーさんが語ります。
「でも、母も私もお金がありませんでした。軍で働く以外、私に選択する余地はありませんでした」
海軍での生活は、厳しい日々でした。チョーさんは1年間雑用係として、船のさびを掃除する仕事にあたっていました。家族と離れて暮らしたことがなかったチョーさんは、家族が恋しくてたまらなかったといいます。
既に軍から解放されていた友達を通して、チョーさんも解放の機会を手に入れました。友達から教えてもらったホットラインに電話をかけ、国連が率いる監視・報告調査特別委員会(CTFMR)に、置かれている状況を説明したのです。
軍隊による子どもの徴用をなくすために設置されたこのホットラインは、ミャンマー軍によっても支持されており、国境警備隊を含むミャンマー軍の子どもの徴用や使用を報告できるよう、24時間体制で運用されています。
ミャンマー政府は「子どもの徴用の廃止と予防に向けた行動計画」の取り組みを加速させるため、2013年11月から、CTFMRと共同の情報キャンペーンを開始しました。ミャンマー軍は、子どもたちを保護するための取り組みに加え、軍に身を置くすべての子どもの特定と解放、徴用基準の強化、違反者への罰則を約束しています。
CTRMRはチョーさんからの電話を受けてミャンマー政府に情報と支援を提供し、1カ月ほどで解放に至りました。
現在までに553人の子どもたちが軍から解放されており、そのうち2014年に解放されたのは376人です。
家出をきっかけに14歳で軍に徴用されたアウン・トゥラさんは、軍に入る時には自分の身に何が起ころうとしているのかまったく想像できなかったといいます。
「見習い兵は、家にいるよりずっと大変でした」と、自分はわがままな性格だと語るアウンさんが、その言葉とは裏腹に紳士的な態度でゆっくりと語り出しました。
現在19歳のアウンさんは、再び学校に通うことを望んでいます。しかし、アウンさんは教育や子ども時代を逃したことで、貴重な青春の時間がすっぽりと抜け落ちてしまったように感じています。
「もう年をとっているのに他の仕事に就けるように学校で勉強したいというのは、少し恥ずかしいです。車の運転もできるようになりたいです」と、にっこりと笑ってアウンさんが話します。
アウン・トゥラさんや解放された子どもたちは、CTFMRのパートナー団体から、個々のニーズにあった継続的な支援を受ける予定です。社会復帰にあたり、解放された子どもたちにはソーシャルワーカーからのインタビューが行われ、ソーシャルワーカーや現地のパートナー団体から、今後も継続した支援を受けます。このCTFMRの社会復帰プログラムは、再び教育を受けるための支援や職業相談や訓練を通して就職の手助けを行います。
子どもや若者たちがそれぞれの地域に戻ってからも保健ケアや医療へアクセスができるよう、ミャンマー保健省も支援を提供しています。
ユニセフ・ミャンマー事務所代表でCTFMR共同議長のバートランド・バンヴルは、ミャンマー政府や軍による子どもの徴用の廃止に向けた取り組みの強化を歓迎しています。
「戦場や軍隊に、子どもの居場所はありません。子どもの徴用を過去のものにするため、協力して取り組みを進めることが重要です」
*名前は仮名です
■「子どもは兵士じゃない」キャンペーン
子どもと武力紛争担当 国連事務総長特別代表のレイラ・ゼルーギ氏とユニセフ事務局長のアンソニー・レークが主導する「子どもは兵士じゃない」キャンペーンは、2016年までに紛争下の政府軍による子どもの徴用をやめさせるための取り組みです。
子どもを兵士として徴用している紛争当事者は、国連事務総長の「子どもと武力紛争」年次報告書の付録に記載されています。行動計画には、国連と当事国が署名します。国連事務総長の「子どもと武力紛争」年次報告書の付録に掲載された紛争中の国々が、そのほかの重大な侵害行為と同じく、子どもの兵士の徴用を停止・予防させるために、具体的かつ期限を定めた措置を実施するために国連が支援することを可能にします。
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