【2020年9月3日 フィレンツェ/ニューヨーク発】
日本の結果について(概要)※ 本報告書の日本に関する結果の詳細は、こちらでご覧いただけます。
日本の「子どもの幸福度」の総合順位は20位でした(38カ国中)。 この総合順位は、以下の3つの分野を総合した順位です。 〇精神的幸福度:37位(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率) 〇身体的健康:1位(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合) 〇スキル:27位(読解力・数学分野の学力、社会的スキル) 上記の順位は、それぞれの( )内の指標を用いて分析しました。PDFファイルもご覧ください。
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本日、ユニセフ(国連児童基金)・イノチェンティ研究所が発表した「レポートカード」シリーズの最新報告書は、自殺、不満、肥満、低い社会的スキルや学力といったことが、先進国の子どもたちに共通に見られる特徴になっていることを明らかにしました。
20年続くレポートカードシリーズは、各国の比較可能なデータを元に経済協力開発機構(OECD)または欧州連合(EU)に加盟する国々の子どもの状況をランキングで示しています。
今回発表された『レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か(原題:Worlds of Influence: Understanding what shapes child well-being in rich countries)』は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生前のデータを用い、子どもたちの精神的、身体的な健康と、学力・社会的スキルについてランキングしています。
これらの指標によれば、オランダ、デンマーク、ノルウェーが、子どもが住む場所として、最も順位の高い国々、という結果が示されました。
「世界で最も豊かな国々の多くは、すべての子どもたちに良い子ども時代を提供するリソースを持っていながら、それが果たせていません」と、イノチェンティ研究所所長のグニラ・オルセンは述べます。
「政府がパンデミックへの対応の一環として、子どもたちの幸福度(wellbeing)を守るための迅速で確固たる行動をとらなければ、子どもの貧困率が上昇し、精神的・身体的健康状態が悪化し、スキルの格差が広がり続けるかもしれません。COVID-19関連の子どもや家庭へのサポートはひどく不十分です。子どもたちに安全で幸福な子ども時代を提供するために、より多くのことをしなければなりません。そしてそれは今です」
© UNICEF/UNI360385/ |
レポートカード16の主な結果は以下のとおりです。
精神的健康
多くの国で、生活に満足していると答えた子どもは5人中4人以下でした。その割合が53%と最も低かったのがトルコで、続いて日本(62%)、英国(64%)でした。反対に最も高かったのがオランダ、次いでメキシコ、ルーマニアでした。家族からのサポートがより少ない子どもたち、いじめに遭っている子どもたちは、あきらかに、精神的健康がより低い結果になりました。
自殺で亡くなる若者の割合が最も高いのはリトアニアで、ニュージーランドとエストニアがそれに続きます。自殺は、先進国の15~19歳の子ども・若者の死亡の主要な要因となっています。
身体的健康
肥満や過体重の子どもたちの割合は近年増加しています。ほぼすべての国でおよそ3人に1人の子どもが、肥満または過体重の状態にあり、ヨーロッパ南部ではその割合が急増しています。先進国の1/4以上の国で、いまだ乳幼児死亡率が1,000人中1人以上です。
スキル
OECD、EU諸国において、平均して40%の子どもが、15歳時点で読解力と数学の基礎的学力を身につけていません。ブルガリア、ルーマニア、チリがその割合が最も低い3カ国でした。最も高かったのはエストニア、アイルランド、フィンランドです。ほとんどの国で、少なくとも5人に1人の子どもは、新しい友達を作るという社会的スキルに自信をもっていません。チリ、日本、アイスランドの子どもたちが、この分野で最も自信のない子どもたち、という結果でした。
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報告書には、子どもの幸福度の向上が明確に見られた分野のデータも含まれています。平均して、就学前教育年齢の子どもの95%が、現在体系的な学習プログラムに参加しており、15~19歳の若者のうち、教育や雇用、職業訓練に参加していない人の数は、37カ国中30カ国で減少しています。しかし、こうした重要な前進は、COVID-19の影響により後退する恐れがあります。
また、子どもの幸福度を支える政策と、経済、社会、環境面の状況についても各国を順位付けしています。ノルウェー、アイスランドとフィンランドは、政策と状況の面で最も高い順位となりました。家族や子どもに関する政策への支出は、平均するとGDPの3%以下でした。
COVID-19の発生により、2020年前半には、報告書の対象国のほとんどが100日以上学校を休校にし、厳しい外出制限政策をとりました。報告書は、家族や友達を失うこと、不安、外出制限、サポートの欠如、学校の休校、仕事と家庭のバランス、保健サービスへのアクセスの不足は、パンデミックによる経済的損失と合わさり、子どもたちの心身の健康や成長、そして幸福度にとって、大きな影響があると指摘します。
COVID-19以前の子どもの貧困率は41カ国の平均で20%でした。これらの国のほとんどで、2年間にわたってGDPが減少すると予想されているため、政府が早急に改善策を講じない限り、子どもの貧困は増加するでしょう。
© UNICEF/UNI361460/ |
「パンデミックによる経済、教育、社会への影響が続く中、一致して取り組まなければ、今の子どもたちの幸福度、その家族や社会への影響はさらに悪化し、破壊的なものになるでしょう。しかし、今各国政府が、子どもたちの幸福度を守る確固たる行動をとれば、これらのリスクは現実にならずに済むのです」(オルセン)
本報告書を通じてユニセフは、子どもの幸福度を改善するために以下のことを求めています。
ユニセフ・イノチェンティ研究所が、2000年以降ほぼ毎年1冊の割合で発行している、先進国の子どもに関する『レポートカード』シリーズ(レポートカードは通信簿の意)の最新刊。レポートカード11(2013年)やレポートカード7(2007年)で行った子どもの幸福度の分析・ランキングの手法に基づき、さらに、子どもたち自身の行動や人間関係、保護者がもつネットワークやリソース、各国の政策や条件も含めて、包括的に子どもたちの幸福度を分析しています。
※「レポートカード16」の日本語版は後日、公表予定です。(2020年内予定)
イノチェンティ研究所は、ユニセフのリサーチ部門です。子どもの課題に関する調査研究を行うことで、ユニセフおよびパートナーの戦略的方向性、政策およびプログラムを支え、子どもの権利や発達に関する世界的な議論を促し、すべての子どもたち、特に最も弱い立場にある子どもたちのための調査や政策課題の形成を支えています。
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