2021年6月18日イノチェンティ(イタリア) 発
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ユニセフ(国連児童基金)は本日、経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)加盟国を対象に、各国の保育政策や育児休業政策を評価し順位付けした新しい報告書『先進国の子育て支援の現状(原題:Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)』を発表しました。
日本の子育て支援策の順位
同報告書で報告された日本の子育て支援策の総合順位は21位で、項目別では、
- 育児休業制度: 1位
- 就学前教育や保育への参加率: 31位
- 保育の質: 22位
- 保育費の手頃さ: 26位
という順位でした(保育の質のみ33カ国中、ほかは41カ国中の順位)。また、父親に認められている育児休業の期間が最も長いこと、取得率は低いものの改善に向けた取り組みが進められていること、保育従事者の社会的立場の低さなどが言及されています。
日本の結果について、本報告書の著者でユニセフ・イノチェンティ研究所のアナ・グロマダは以下のコメントを寄せています。
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父親の育休取得促進を
ユニセフの子育て支援策ランキングで、日本は41の先進国の中で21位に位置しています。しかし、この中位という結果の後ろには、父親の育児休業が世界で最も長いにも関わらず取得率が低く、手頃な料金の保育サービスへのアクセスが限られているという逆説的な落差があります。無償の保育・幼児教育へのアクセスの拡大、父親の育休取得の促進、保育従事者への正当な社会的評価などに、改善の余地があると言えるでしょう。
日本は、父親の育児休業が世界で最も長いことから、育休に関するランキングでトップになっています。平均で賃金の58%の給付が支払われる育休が52週間あり、それは賃金が全額支給された場合に換算すると30週間に相当します。父親のための育休が父母の育休を合わせた期間の3分の1以上を占めているのは、日本、アイスランド、韓国、ポルトガルの4カ国のみです。また日本は、父親と母親に認められた期間がほぼ同じ長さである唯一の国です。
日本では当初、育休を利用する父親は非常に少ない状況でしたが、年々利用者が増加しています。父親による育休の利用は、育児は母親の仕事であるという文化的な違いやジェンダーに関する社会通念を反映しますし、政策が導入されてからどれだけの時間が経ったかも反映しています。2007年に導入されたときは、日本の父親の1.6%しか利用していませんでした。2019年には5倍(7.5%)に増え、その年公務員の取得率は過去最高の16.4%でした。2021年6月には、日本はより柔軟な育児休業制度を導入し、2025年までに父親の育休取得率を30%にすることを目指しています。
保育従事者の社会的地位にも課題
育児休業が終了すると、一部の子どもたちは組織的な保育に参加します。ユニセフは、すべての親が利用しやすく、柔軟性があり、手頃な料金で質の高い保育サービスを利用できるようにすることを推奨しています。それが可能になれば、家族は、収入と様々な保育サービスの間で自分たちにより良い方法を選択することができます。また、保育サービスを育児休業の終了に合わせて利用できるようにすることで、親が仕事に復帰する際に子育て支援の空白が生じないようにする必要があります。
日本では、保育従事者は、学士号または一定の高等教育を修了していることが求められています。1人が担当する子どもの数は平均14人です。しかし、こうした保育の専門職の社会的地位は低く、質の高い保育を行うために求められる複合的なスキルや子どもの発達に対する理解の高さとは相反するものとなっています。
私は日頃から日本のデータ動向をチェックしていますが、最近、驚いたことがあります。保育士の3人に2人以上が、日本社会が自分の仕事を評価していないと感じているのです。これは調査された8カ国の中で最悪の結果であり、評価されていると感じている人の割合は、北欧の国などと比較すると2分の1以下です。保育は、社会に深く長く影響を与える仕事です。こうした仕事は多くありませんので、残念なことです。保育士の仕事に対する世間の認識は、労働条件とともに、どのような人がその仕事を志願し、留まるかに影響を与え、それが保育の質につながるからです。