2022年3月7日ニューヨーク/ジュネーブ発
ウクライナ危機によって国外へ避難する子どもたちに関して、ユニセフ(国連児童基金)事務局長キャサリン・ラッセルは、国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏とともに、以下の共同声明を発表しました。
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家族と離れ離れになった子も
この1週間で、100万人以上の難民が、安全と保護を求めてウクライナから避難することを余儀なくされました。そのうち、子どもたちの数は何十万人にものぼります。避難している子どもの中には、おとなの同伴者がいない、あるいは親や家族と離れ離れになった子どももたくさんいます。
親による保護のない子どもたちは、より一層、暴力、虐待、搾取の危険にさらされます。こうした子どもたちが国境を越えて移動する場合、リスクは倍増します。また、緊急事態下では人身売買のリスクも急上昇します。
ユニセフとUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、すべての近隣諸国および影響を受けている国に対し、ウクライナから逃れてきた同伴者のいない子どもや、家族と離れ離れになった子どもたちの自国領内への入国を認め、その後直ちに彼らの身元確認と登録を行うことを求めています。
関係国は、国境を越えた子どもとその家族に対し、ただちに安全な空間を提供し、彼らを自国の子ども保護システムへ組み込むべきです。また、現在の緊急事態においては、緊急ケアと審査を受けたケアスタッフの手配、ジェンダーに基づく暴力からの保護を含む、子どもの保護のために不可欠なサービス、そして子どもの家族を捜し出し再会させるためのメカニズムを、急速に拡大することが求められています。
子どもと家族に安全な空間を
家族の同伴なしで国境を越えて避難してきた子どもたちに、政府が一時的な里親制度やコミュニティレベルでのその他のケアを提供することは、彼らにとって非常に重要な保護を与えることになります。養子縁組は、緊急事態の最中や直後に行われるべきではありません。家族との再会が子どもにとって最善の利益となる場合には、可能な限り、そのためのあらゆる努力を行わなければなりません。
ウクライナでは、10万人近くの子ども(その半数は障がいのある子ども)が、児童養護施設などの施設や寄宿学校で暮らしています。これらの子どもたちの多くには、親族や法定後見人がいます。私たちは、こうした施設が子どもたちを近隣諸国や国外の安全な場所へ避難させようとしているとの報告を受けています。特定の状況下では、人道的な避難が命を救うことになることは確かであり、子どもたちを安全な場所へ避難させようとする試みは歓迎しますが、その場合には、子どもたちの最善の利益のために特別な措置を講じること、そして彼らの親または養育に責任を負う人の同意を得ることが、非常に重要です。どのような状況にあっても、移動や避難の結果として家族が引き離されるべきではないのです。
最善の利益の解決策を
ウクライナの施設にいる子どもに対して法的責任をもつ人々は、各国当局の指示通りに子どもの避難が行われるようにしなければなりません。子どもの移動は、国境を越えた時点で直ちにウクライナと近隣諸国の管轄当局に報告されなければならず、可能な限り、子どもたちには身分証明書と関係書類を持たせて避難させるべきです。
ユニセフとUNHCRは、同伴者のいない子どもや家族と離れ離れになった子どもたちを、最終的な移住計画を通じて支援するために各国が示した連帯と準備態勢に感謝しています。しかし同時に、これらの子どもは特に脆弱な立場にあり、短期的には、彼らが現在いる場所での差し迫ったニーズを満たし安全を守ることを優先するべきこと、そして中長期的には、彼らの最善の利益に基づく解決策を見つけなければならないことを、忘れてはなりません。
ユニセフとUNHCRはともに、子どもたちの安全と保護が緊急事態対応の中心となるよう、子どもを保護する各国当局を支援することを、約束します。
■ユニセフ「ウクライナ緊急募金」ご協力のお願い
8年にわたって続く東部地域の紛争や、昨今の武力行為の激化の影響を受けるウクライナの子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ウクライナ緊急募金」を受け付けております。
水や電気を絶たれたり教育の機会を奪われたり、避難を余儀なくされるなど、紛争による直接的・間接的な影響を受ける子どもたちをはじめ、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。