2022年4月13日リヴィウ(ウクライナ)発
ウクライナで紛争が激化して6週間以上経ち、水道網と電力網の両方が破壊されたことで同国東部に住む140万人が水道水を利用できない状況になっています。さらに、ウクライナ全土で460万人が、水を入手できなくなる可能性があります。
東部で水インフラの被害
水インフラへの被害は、ウクライナ東部だけで、20件以上発生していると記録されています。東部での戦闘激化と、人口密集地での爆発性兵器の使用が拡大したことで、8年間にわたる紛争ですでに打撃を受けていた水システムは、完全に崩壊するリスクにさらされています。
停電によって、給水ポンプが停止しています。また、爆発により水道管が損傷したため、水の流れが断絶しています。
マリウポリでは、何千人もの人々が、やむを得ず汚れた水源を使用しています。ドネツク州とルハンスク州の主要都市でも、水の供給が断たれており、ホルリフカ(ドネツク州の都市)の貯水池が涸れることになれば、さらに34万人が水を入手できなくなります。
3月上旬には、同国北部のスーミとチェルニヒウで深刻な断水が発生し、北東部のハルキウの給水システムも深刻な影響を受けています。これらの都市を含め、戦闘の激しい地域における水へのアクセス回復と、緊急支援物資の供給が急務となっています。
水は命を左右する問題
2014年の紛争開始以来、ドネツク州とルハンスク州では、少なくとも35人の水道技術者が死傷していました。加えて、紛争が激化して以来、チェルニヒウで4人、ハルキウで1人、水道技術者が新たに負傷したと、WASH(水と衛生)クラスター*が確認しています。
1年前、国連安全保障理事会は決議第2573号を全会一致で採択し、すべての紛争当事者が、民間人、及び水道施設を含む民間インフラを保護する義務を持つという、国際人道法(IHL)の義務を再確認しました。しかし、ウクライナの紛争では、水、衛生、電力網などの民間インフラが破壊され、重要なサービスが利用できなくなっています。
WASHクラスターは、すべての当事者に対し、人口密集地での爆発性兵器の使用を止めるよう、かつ、民間インフラがある地域から、軍の装備と人員を遠ざけるよう要請しています。
ユニセフ・ウクライナ事務所代表のムラート・シャヒンは、「紛争地域に住む幼い子どもは、直接的な暴力よりも、安全ではない水に起因する下痢性疾患で死亡する可能性が20倍以上高くなります。どこに住んでいようと、紛争によって水へのアクセスが脅かされてはなりません。子どもにとって、それは命を左右する問題なのです」と述べました。
140万人が水道を使用できず
ユニセフが主導するWASHクラスターの活動は、以下の通りです。
・水ポンプに電力を供給し、スーミとチェルニヒウの水システムを稼動させるため、発電機や、修繕に必要な機器を提供しました。
・ハルキウ・ヴォドカナル水システム用に57.4トンの液化塩素を調達しました(3週間分の水を浄化可能)。また、ウジホロド・ヴォドカナル水システムを稼働させるため、液化塩素ガス4.5トンを調達しました。これにより、避難民が流入しているハルキウとウジホロドで、それぞれ140万人と14万人に安全な水を確保することができます。
・ドネツク州、ハルキウ州、ルハンスク州、スーミ州、ザカルパチア州を含む、安全な水が極めて入手しづらい場所で、給水車やボトル入り飲料水を活用し、18万4,500人以上に安全な飲料水を供給しました。
■ 注記
WASHクラスターについて
グローバルWASHクラスターは、水と衛生分野の調整と、人道支援活動を改善することを目的とする、32のパートナーからなるパートナーシップで、ユニセフがリード機関を務めています