2022年7月1日ウクライナ発
ウクライナ西部の小さな村、セレドニー村では、30人ほどの子どもたちがみんなでサッカーを楽しんでいます。
お互いにボールをパスしあったり、コーンの間を通してみたり…大勢の子どもたちが、新しく友達をつくるチャンスに心を躍らせています。
紛争激化から半年が経ち、未だ収束が見えないウクライナでは多くの子どもたちが避難を余儀なくされ、多くの楽しみも奪われています。そのような状況下、ユニセフは、子どもたちの心のケア支援をおこなっています。
スポーツの力で、子どもたちの心のケアを
この子どもたちは、ポルーチ(PORUCH)という、ユニセフがウクライナ教育科学省と共同で実施する、心理社会的支援プログラムに参加しています。紛争により大きな影響を受けている6歳から18歳の子ども・若者と親が対象で、心理士のサポートとスポーツの力を活用して、子どもたちがトラウマを克服し、新たな対処法を見出すことを支援するものです。ポルーチプログラムは、トランスカルパチア・サッカー協会の協力も得ています。
今日の試合が終わった後、子どもたちは心理士を交えたグループをつくり、好きなことを話したり、お絵かきをしたりする予定です。
「友達ができた!」
お母さんと一緒にキーウから避難してきたナスティアさん(12歳)は、「サッカーが大好き!」と元気いっぱいに言います。「キーウでは、毎週サッカー教室に通っていたんです。ここでも通い始め、新しい友達ができました!今日はコーチからヘディングやパスを習いました!」と教えてくれました。
今では明るさを取り戻したナスティアさんも、2月24日に紛争が始まった時は、恐怖に怯えていました。
「ミサイルが家に落ちるのではと、とても怖かったです。ミサイルが落ちた場所では、私のような子どもが亡くなっているのだと実感しました。私たちはたくさんの人たちと一緒に地下に隠れていましたが、それでもとても恐ろしかったです。
誰かが大きなマットレスを持ってきてくれたので、妹はそこで他の子どもたちと一緒に寝ました。私はその隣の折り畳みベッドで、母は椅子の上で寝ていました。そこには、2月24日の直前に生まれた赤ちゃんも一緒に避難していました」(ナスティアさん)
ナスティアさんのチームメイトのヤロスラフさん(12歳)は、親戚や近所の人たちと地下室に10日間も避難をしていました。その後、安全な場所を求めてハルキウの自宅から避難をしました。
「親戚みんなのことがとても心配でした。私たちも、無事に避難をできるかどうか分からない状態でした。飼っていたハムスターのことも心配でした。けれど、小動物は心臓が弱いので、ミサイルによる爆音で死んでしまいました。クラスメイトに会えないのはとても寂しいですが、ここでも友達をつくることができました。」
安全な環境で、安心して過ごせるように
ベロニカちゃん(9歳)は、母親と祖母と一緒にキーウ郊外から避難をしました。
「すべてが始まったとき、とても怖かったです。銃声と爆弾の音が聞こえました。もしもの時にすぐ逃げられるように、服を着たまま寝たりもしました。あまり眠れず、爆発の音で目が覚めることもありました。
私は、紛争が終わって家に帰れることを夢見ています。ここは良い所だし、今日は楽しかったので、今の状況を一時的に忘れることができました。けれど、自分の家に帰りたいです」と、切実に語ります。
心理士のダイアナ・センバーさんは、そんな子どもたちが再び安心して暮らせるように手助けをしています。
「安全な環境のなかで、子どもたちが安心して友達をつくったり、コミュニケーションを取ったりできるようになってもらうことが目標です。」とセンバーさんは言います。「子どもたちはそれぞれ、ウクライナが直面している現実に自分なりの反応を示しています。ポルーチプログラムは、そんな子どもたちがトラウマを克服できるようにつくられました。活動やグループワークが上手く組み合わされていることにより、良い成果につながっています。」
■ユニセフ「ウクライナ緊急募金」ご協力のお願い
東部ヨーロッパに位置するウクライナで、2022年2月に武力紛争が激化して半年。
今すぐに人道支援を必要としている子どもの数は、ウクライナ国内で300万人、避難先の難民受け入れ国で220万人以上にものぼっています。
ユニセフはウクライナ国内に留まり、子どもたちと家族のための支援活動を継続するとともに、周辺国に避難しているウクライナ難民支援も強化しています。
その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ウクライナ緊急募金」を受け付けております。
避難を余儀なくされ、教育の機会を奪われ、恐怖におびえ心身ともに影響を受けている子どもたちとその家族に、人道支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。