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日本ユニセフ協会

ウクライナ緊急募金

ウクライナ緊急支援
モルドバに避難した母親
ユニセフの支援で、子どもたちの笑顔と日常を取り戻す

2022年12月26日モルドバ

ウクライナのオデーサから、4人の子どもたちとともにモルドバに避難している、母親のオレナさん。ウクライナで教師をしていた経験を活かして、ユニセフが支援する教育プロジェクトに携わっています。

「聞いて、戦争が始まった」

戦闘が激化した当時の様子を語るオレナさん。

© UNICEF/UN0714993/Orehov
戦闘が激化した当時の様子を語るオレナさん

戦闘が激化する前、オレナさんは、オリガ(14歳)、イアロスラバ(9歳)、アリシア(4歳)、グリゴレ(生後10カ月)の4人の子どもたちに囲まれて、慌ただしくも充実した日常を送っていました。そして、オレナさんはオデーサで、幼稚園など子ども関連の施設をつくることを夢見ていました。

2022年2月24日、オレナさん夫婦は、他の多くのウクライナの人々と同じように、早朝に爆撃の音で目を覚ましました。

「夫が窓を開けて言いました。『聞いて、戦争が始まった』って」。

オレナさんは、頭が真っ白になり、起こっていることを信じたくなかったと言います。「子どもたちには、今何が起きているのか、時間をかけて説明したかったのですが、その必要はありませんでした。子どもたちはわかっていたのです。娘のアリシアは、家の中を走り回りながら「ごっこ遊び」を始めました。『ママ、見て。部屋のこことあそこに爆弾があるの。触ったらだめだよ!危ないからね』と私に向かって話すのです」

当時のことを思い出しながら語るオレナさんは、目からあふれる涙が頬をつたわないよう、顔を上に向けました。

隣国モルドバに逃れて

© UNICEF/UN0714982/Orehov
ユニセフが支援する教育プロジェクトの一環で、アートの教室に参加する子どもたち

4人の子どもたちとともに、オデーサを離れてモルドバに避難しようとするとき、オレナさんは子どもたちの安全のため、わずかな荷物しか持ちませんでした。それに、モルドバでの避難は2週間ほどで終わると信じていたのです。

モルドバでの最初の2週間は、とても大変だったとオレナさんは振り返ります。「子どもたちはとても怖がり、外に出たがらなくなり、新しい友達をつくるのも嫌がりました」

ウクライナの自宅や学校、友人たちから離れ、モルドバで避難生活を始めてから2カ月近くたった頃、オレナさんは、戦争がすべてを変えてしまったとしても、人生は続けていかなければならない、と理解したと言います。

「ストレスが原因で、乳児の息子に母乳をあげられなくなるのではと心配でした。なので、子どもたちの健康を最優先に考え、冷静になろうと努めました。そして、子どものための教育活動を探し始め、ユニセフが支援するこのプロジェクトを知ったのです」。

 

ユニセフが支援する教育プロジェクト

© UNICEF/UN0714989/Orehov
娘のイアロスラバ(9歳)、アリシア(4歳)と話す、オレナさん

オレナさんは15年近く、ウクライナで教師をしてきました。幼い頃から先生になるのが夢だった彼女は、両親からいつも「簡単ではない仕事を選んだね」と言われながらも、教えることを心から愛していると言います。

そして現在、モルドバの首都キシナウで、ウクライナやモルドバの子どもたちの発達と教育のための活動を続けています。

「ここにいる子どもたちは、ウクライナでの生活とのつながりをほとんど失ってしまいました。でもこの活動に参加することで、自分たちが属しているコミュニティに戻ることができるのです」と、この居場所の意義を語ります。「ここに来て、とても温かい気持ちになって、希望をもらいました。長女はルーマニア語を学び始め、次女にもたくさんの友達ができました。娘たちの笑顔を取り戻すことができました」(オレナさん)

そしてオレナさんは、ウクライナの子どもたちが、さまざまな活動に参加できるこのようなプロジェクトによってサポートされる必要があると訴えます。ここではダンスを学ぶ機会もあり、英語やルーマニア語の学習をすることもできます。

「長女と次女の娘たちは、前の学期はオンライン授業を受けていましたが、ウクライナ国内および避難している多くの教師や子どもたちが、インターネットへのアクセスに大きな問題を抱えていることを知りました。それに、多くの子どもたちは、インターネットで教育を続けるための機器を持っておらず、親もそれを買うお金を持っていないのです。けれども、ウクライナの子どもたちは教育を受け続けなければなりません。このユニセフが支援するプロジェクトのおかげで、避難してきた子どもたちも、ウクライナで受けていた教育課程を継続することができ、基本的な知識や心理的なサポートも得ることができています」とオレナさんは語ります。

教師として、一人の母親として

「教師であると同時に、私は母親でもあります。母乳育児は今、私が一番下の息子のためにできる最善のことです。これによって、私たちはお互いがつながっていると感じられていますし、互いの力にもなっています」

そしてオレナさんにとって、避難先で仕事を続けられていることも、日常を生きる上で良い影響をもたらしています。「この教育プロジェクトによって、私は、教師であること、働くこと、そして子どもたちの良き母であること、すべての面で充実感を得ることができています。私にとってこれ以上ない機会に、とても感謝をしています」と、息子を胸に抱きながら、嬉しそうに語ります。

© UNICEF/UN0714983/Orehov
授業の合間に、生後10カ月の息子グリゴレに授乳するオレナさん。

 

© UNICEF/UN0714984/Orehov
息子を抱っこしてあやしながら、「仕事を続けられてとても感謝をしている」と話す母親のオレナさん

 

 


ウクライナ緊急支援

2022年2月に武力紛争が激化したウクライナ。今すぐに人道支援を必要としている子どもの数は、ウクライナ国内で330万人、避難先の難民受け入れ国で約390万人にものぼっています。

ユニセフはウクライナ国内に留まり、子どもたちと家族のための支援活動を継続するとともに、周辺国に避難しているウクライナ難民支援も強化しています。

例えばモルドバでは、ウクライナ紛争が始まって以来、ユニセフとパートナー団体「ステップ・バイ・ステップ」が、首都キシナウの人形劇場「Licurici」敷地内で、さまざまな非公式教育活動を実施しています。

これまでに、3歳から17歳までの1万5,000人以上の子どもたちが、10名のウクライナ人教師のもと、ルーマニア語、数学、アートセラピー、ダンスなどの授業に参加しました。さらに、ウクライナから避難している22人を含む1,600人以上の教師が、危機下で必要とされる子ども中心の指導法や社会的結束を高める方法などのスキル研修を受けました。