ウクライナ危機
「洪水は、僕の夢を奪った」
日常を奪われ続ける子どもたち

2023年7月8日ヘルソン（ウクライナ）発

ウクライナのヘルソンから人生初めての列車に乗ろうとする11歳のイリヤは、初めて乗る列車に心躍らせる一方で、故郷を離れる寂しさを感じています。

「街が浸水してしまったの。道路に水が溢れてくるのを見たんだ」（イリヤ）

ヘルソンの鉄道駅にあるユニセフ（国連児童基金）が設置した子どものための支援拠点「スピルノ・チャイルド・スポット」で、イリヤは避難するために乗る列車を待っています。カホフカ水力発電所が破壊され、周辺地域が洪水したため、イリヤと家族はウクライナ西部の親戚の家に身を寄せることになりました。

浸水したヘルソンに残る祖母の話になると、イリヤは泣き出しました。

「自転車に乗っておばあちゃんの家に行くことが夢だったんだ。おばあちゃんは別の地区に住んでるんだ。おばあちゃんの家はまだ水に漬かってないけど、道路は水で溢れてる。洪水は、僕の夢を奪った」とイリヤは言います。

「戦争のせいで、僕がしたかった色んなことができなくなった。爆撃があるときは外に出るのが怖かったし、家の近くに検問所もあったから…。近くにガソリンスタンドがあるから、爆弾の破片が飛んで、爆発して死んでしまうのかなといつも不安だった」

2022年2月に戦争が始まって以来、爆撃や銃撃はイリヤや弟のティモフィ（3歳）のような何百万人もの子どもたちの生活を一変させました。

「スピルノ・チャイルド・スポット」にあるパズルなどのおもちゃを手にするイリヤ。（ウクライナ、2023年6月撮影）

ユニセフの「スピルノ・チャイルド・スポット」で父親とともに列車を待つ3歳のティモフィ。

列車を待つ間、スピルノ・チャイルド・スポットで、イリヤとティモフィはパズルをしています。子どもたちにとって安心できる場所であり、友達と遊んだり学んだりして、家族と一緒にリラックスしながら過ごすことができます。また、ユニセフの総合的なサービスを受けられる場所でもあるのです。

「息子たちにとって、人がたくさんいて賑わっている場所に出かけるのは、久しぶりです。しばらくどこにも行けませんでしたから…」と、母親のリウバさん（38歳）は話します。

イリヤの家族は、激しい爆撃がある間もなんとかヘルソンに留まっていましたが、洪水により家を離れることになりました。飲み水なしでは、この夏を乗り越えるのは難しいと考えたからです。

「こんなにも水に囲まれているに、家に水供給がないなんて、皮肉な話です。断水は夏の間ずっと続きます」(リウバさん)

「Kherson is united（ヘルソンは団結している）」というメッセージを描いた絵を見せるイリヤの写真が、スマートフォンで映し出されている。

一家は状況が良くなれば、すぐに家に戻りたいと願っています。イリヤはリュックを背負い列車へ向かいました。イリヤにとって、列車に乗るのは、これが初めてです。

「絵の具と鉛筆を持ってきたんだ。親戚の家にいる間、ヘルソンの街と僕たちの家の絵を描きたいんだ」(イリヤ)

■ユニセフ「ウクライナ緊急募金」ご協力のお願い

2022年2月にウクライナで戦闘が激化してから500日。

子どもたちは今なお暴力にさらされ、家からの避難を余儀なくされ、恐怖や不安、悲しみの中で暮らしています。

ユニセフはウクライナや周辺国において、子どもたちと家族のために、保健ケア、予防接種、栄養、教育、水と衛生、心のケアなどの支援を続けています。

その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ウクライナ緊急募金」を受け付けております。

避難を余儀なくされ、教育の機会を奪われ、恐怖におびえ心身ともに影響を受けている子どもたちとその家族に、人道支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。

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