2023年9月12日エチオピア発
世界には、経済的困窮によって、幼くして結婚を強いられる子どもたちがいます。「結婚しました。お母さんにお金がなかったから」と語るエチオピアの14歳の女の子、ベレイネシュもその一人です。
父親を亡くし、困窮する家族
「私が男の人と暮らすことで、お母さんの負担がなくなるのかな...」。壊れかけた古い家屋の裏に座っていた14歳のベレイネシュは、家を訪れていた人たちが母親に話していることを耳にして、こう言いました。
以前から何度か、その人たちが家に来ているのを、ベレイネシュは目にしていましたが、その日初めて、彼らが来ている理由を知りました。見知らぬ男性と自分を結婚させるよう、母親に要求していたのです。
母親のファンティエさんにとって、当初、彼らの要求は、受け入れがたいものでした。「娘はまだ14歳で、学校に通っていました。どうして彼女を嫁がせることができるでしょう?」
ファンティエさんは、子どもたちの父親である夫を亡くし、厳しい生活を送る中で、すでに、ベレイネシュの姉である長女を、若くして嫁がせてしまっていたため、またしても幼い娘を嫁がせることを決して望んではいませんでした。
けれども、後に、ファンティエさんは、彼らの要求を受け入れました。経済的に困窮するなかで、他に選択肢がなかったのです。ベレイネシュは新学年度が始まる前に、家を出て嫁いでいきました。
新学期に登校しない女の子に気付いて
9月に新学期が始まった時、学校にベレイネシュの姿はありませんでした。そして、学校教員で、生徒のジェンダー問題担当のシニショー・ハイレマリアムさんが、ベレイネシュが新学年の就学登録さえしていないことを知りました。
「何かがおかしいと気づきました。学校に来ない理由を聞くためにベレイネシュの自宅を訪ねると、彼女が遠く離れた村の男性のもとに嫁いだことがわかりました」
シニショー先生と校長はすぐに地域の行政当局に連絡し、ソーシャルワーカーのジェブリマリアムさんが担当となり、すぐに解決に向けて動き始めました。
「私たちは、ベレイネシュがどこで暮らしているか探し出し、地元行政当局とともに救出することができました。そして、法的手続きを続ける一方で、緊急性があるととらえ、婚姻状態を直ちに中断させました。最優先事項は、彼女が安全に学校に戻れるようにすることでした」と、ジェブリマリアムさんは振り返ります。
「新しい夜明け」
新学期が始まって数週間後、ベレイネシュは学校に戻ることができました。友人のサムラウィットとティギストも、欠席していた期間の授業の内容を伝えるなど、ベレイネシュが再び日常を取り戻す手助けしました。そして、ベレイネシュが、自分の身に起きた困難な出来事を受け入れ、立ち直れるように、友人として支え続けました。
ジェブリマリアムさんの次の行動は、老朽化して今にも崩れそうなファンティエさんの自宅の建て直しを支援することでした。「雨が降るたび、家族は悲惨な状況に置かれます。ベッドをビニールシートで覆わなければならず、それは本当にみじめな暮らしでした」。
ジェブリマリアムさんの事例報告で、貧困にあえぐこの家族の状況が明らかとなり、女性・社会問題局が支援に乗り出すことになったのです。ジェブリマリアムさんが丁寧にフォローアップする中、ベレイネシュたちが暮らす新しい家が建設中です。
「私の家族にとって、これは新しい夜明けです。まるで奇跡のようです。古い家の横に新しい家が建っているのを見るたびに、希望が湧いてきます」。
「卒業して、仕事に就き、母を助けたい」
ベレイネシュは、学校に戻ることができて喜んでいます。
「私たちを養うために、母はとても苦労しています。このような状況でなければ、私は結婚をしなかったし、学校を辞めることもなかったでしょう。
学校を卒業して、仕事に就き、母を助けたいーそれが私の願いです」と、ベレイネシュは前を向きます。
ユニセフの支援 ~ 子どもたちの普通の願いを叶えるために
児童婚は、子どもの権利の侵害であり、将来に取り返しのつかない負の影響をもたらします。女の子は低年齢での妊娠・出産によって妊産婦死亡リスクが高まるほか、暴力、虐待、搾取の被害も受けやすいのです。そして、学校を中途退学するリスクも高まります。
エチオピアのガンベラ州で、ユニセフは、ジェブリマリアムさんを含む47人のソーシャルワーカーの育成と派遣を支援しています。ユニセフの子ども保護担当官のフレヒウォ・メルカムは、「ソーシャルワーカーは、コミュニティが結束し、児童婚などの有害な慣行を防ぐための貴重な役割を担っています」と語ります。