2024年10月23日ガザ(パレスチナ)発
2023年10月以来、約190万人が避難生活を送っているガザ地区では、砲撃や爆撃によって、浄水場や下水処理場などの水関連施設の約3分の2が破壊あるいは損壊し、安全な水の製造能力が激減しています。その結果、子どもたちやその家族は安全な飲み水を手に入れるため、毎日飲み水を探し求めなければなりません。水くみの仕事を担う多くが子どもたちです。
ヤナさん(12歳)は、「水を手に入れるのは一苦労で、そのために長い距離を歩かないといけないの」と言います。ユニセフが支援する給水車が運んできた水を容器に入れながら、「長い距離を歩かないですむように、給水車が毎日ここに来てくれたらいいなと願っています」と話します。
12歳のオマールさんは、水を載せた押し車を押しながら、「1日4回以上、水を容器いっぱいに入れて運んでるけど、それでも家族みんなのためには足りません。毎日、水をくむために遠くまで行っています」と話します。「でも今日は、給水車が来てくれたから、水くみに行かなくていいんだと安心しました」
ヘバさん(11歳)も、ユニセフの給水車が来てホッと胸をなでおろした一人です。「給水車が来なかったら、炎天下を長い道のりを歩いて、水をくみに行かなければならないから」
不衛生な生活状況で、感染症の蔓延も
水の不足がもたらす、もう一つの重要なリスクは、病気の蔓延です。衛生状態が劣悪なため、疾病に苦しめられている子どもも多くいます。
「からだを洗うきれいな水がなくて、いつもかゆいの」と話すアフマドさん(8歳)。身体に出ている発疹を怖がって、ほかの子どもたちは一緒に遊んでくれないと言います。
「アフマドは、身体中がかゆくて十分に眠れていません。水は汚くて、シャンプーやせっけんのような衛生用品も入手が難しいのです」と母親のファティマさんは嘆きます。
ワヒッドさん(7歳)も同じような状態に苦しんでいます。「足にぶつぶつができて、いたいの」。ワヒッドさんの母親は、発疹が体中に広がるのではないか、歩こうとするだけでも我慢できないほど痛いのではないか、と心配しています。
多くの人の命をつなぐ、ユニセフの水支援
きれいで安全な水を子どもたちと家族に届けるため、ユニセフは、水道システムの修繕とメンテナンス、および浄水処理資材の提供などを支援してきました。また、水の供給網がない国内避難民の避難地域には、緊急の給水車を派遣し、安全な水を供給しています。ガザ地区の避難所への給水車による水供給や衛生分野の支援など、ユニセフは現在までに、80万人以上の子どもたちを含む推定200万人に支援を提供しました。
それでもなお、ニーズは山積みです。ガザ地区各地の避難所では、子どもたちと家族が、時には何百人も長い列に並んでトイレを待っており、中にはバケツに排泄せざるをえない場合もあります。ユニセフはパートナーとともに安全な水の供給の支援はもとより、衛生キットや生理用ナプキン、折り畳み式水容器など、水と衛生の支援物資を家族に提供しています。
しかしそれだけでは十分ではありません。ガザ地区の子どもたちは日ごとに新たな恐怖に直面しています。暴力と困窮が、子どもたちのこころと身体に一生消えない傷跡を残しています。ユニセフは、紛争に関わるすべての当事者に対し、民間人と重要なインフラを守るよう求めています。これには、水、食料、避難所、保健医療など、生きていくために不可欠なインフラや社会サービスを人々が入手あるいは利用できるように、安全で妨げのない人道支援活動を保障することも含まれています。