2024年12月4日ウクライナ発
ウクライナで2022年2月に戦闘が激化してから、2年9カ月が経過しました。今も、戦争が終結する見通しは立っていません。ウクライナ全土でインフラが攻撃の標的にされるなか、水道やガス、電気の供給網も深刻な打撃を受けています。寒さが厳しい地域において、暖房のない生活は命に関わる問題です。
安心して過ごせる場所であるべき学校も、停電が頻繁に起きたり、暖房設備が備わっていなかったりすることで、特に気温が低くなる時期に教室が閉鎖され、子どもたちは学校で過ごすことができませんでした。
冬は教室で授業を受けられない
2023年の冬、ウクライナのキロヴォフラード州ノヴホロドカにある学校では、児童500人以上がリモート授業や家庭学習を余儀なくされていました。
ディミトロ・ミドニコフ校長は、「校内が寒いので、暖房が必要な間はオンラインでの授業に切り替えざるを得ませんでした。でも、社会にふさわしい価値観や態度を習得していく過程において、教室で子どもたちが共に学ぶことはとても重要です。リモート授業や学習では、それを十分に育むことはできません」と課題を語ります。
この学校に通う9歳のプラトンさんは、「暖房がないと教室がとても寒くて、去年は半年以上、授業がオンラインになりました。でも、友だちに会いたかったし、学校で勉強したかった」と振り返ります。
暖かくなった教室、戻ってきた子どもたち
子どもたちが学習を続けられるよう、ユニセフは学校に設置する固形燃料ボイラーと発電機の購入を支援しました。
ディミトロ校長は、「ユニセフが固形燃料ボイラーを届けてくれて、暖房を稼働させることができました。今では天候に関係なく、校舎は暖かく快適な環境を保っています」と、安堵の表情で語ります。
固形燃料ボイラーによる暖房のおかげで、教室や廊下の気温は、外が凍えるような日でも22℃を下回ることはありません。 さらに発電機があることで、停電中も授業を続けられるようになりました。
高校2年生のカテリーナさんは、対面式の学習はとても大切で、大学進学に向けた学習環境がより良いものになっていると話しています。
「これまで冬の間は、学校が休校になるか遠隔学習に切り替わるかしかありませんでした。今は暖房が効いているので、学校内で勉強できます。学校での対面式での授業は、オンラインで授業を受けるよりもずっと楽しく、勉強の成果も上がります」(カテリーナさん)
子どもたちの学習の機会を守るために、700校を支援
戦争が続くウクライナでは、空襲を知らせるサイレンが鳴るたびに、子どもたちや教師、学校職員は地下のシェルターにすぐに避難し、時には長時間の待機を余儀なくされます。
じめじめとして寒かったシェルターも、ユニセフが設置を支援した高性能の暖房システムのおかげで、乾いた暖かい環境が保たれています。飲料水タンクも設置され、子どもたちが、飲み水に困ることなく長い時間過ごすこともできるようになりました。
ユニセフは、ウクライナ政府との協力のもと、700校の学校に対する設備充実のための資金支援を通じて、子どもたちの教育を支えています。この支援は、校舎の暖房や給水などの設備を整え、食堂や厨房を修繕することで、子どもたちが寒い時期も含めて年間を通じて学校に通えるようするとともに、発電機を提供することで、停電時やシェルターに避難している間も安全に過ごせることを目的としています。