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日本ユニセフ協会

ストーリー

世界各地で頻発した人道危機
紛争、台風、洪水、大規模な避難...
ユニセフが届けた子どもたちへの支援

2024年12月25日発

危機下で食べ物がなく、衛生状態が悪くて感染症も蔓延するなかで、妊娠期を過ごし、4つ子を出産した母親。「爆撃が続く中、地面の上で寝ているので疲れ果てています」と話す。 (ガザ地区、2024年6月撮影)

© UNICEF/UNI601736/El Baba
危機下で食べ物がなく、衛生状態が悪くて感染症も蔓延するなかで、妊娠期を過ごし、4つ子を出産した母親。「爆撃が続く中、地面の上で寝ているので疲れ果てています」と話す (ガザ地区、2024年6月撮影)

2024年、パレスチナ・ガザ地区、スーダン、ウクライナ、シリア、イエメンで戦争・紛争が長期化する一方、ハイチ、レバノン、コンゴ民主共和国でも人道危機が発生し、多くの子どもたちが傷つけられ、時には命さえも奪われました。

また、気候変動の影響で自然災害が激化・頻発しており、アフガニスタンでの大規模な洪水、バングラデシュやインドを襲った大型サイクロン、パプアニューギニアでの地すべり、東南アジアを直撃した台風などにより、世界各地で多くの子どもたちが被災しました。

こうした人道危機の中で、最も弱い立場に置かれるのはいつも子どもたちです。危機のさなかにある子どもたちと家族の命を守るために、ユニセフは世界各地で緊急・人道支援を続けました。

この1年間に起きた様々な危機と、ユニセフによる子どもたちへの支援を振り返ります。

 

2024年1月

ハイチ情勢激化、子ども17万人超が避難

首都ポルトープランスの中心部で激化する暴力により、多くの人が避難を強いられている。2週間のうちに約2,500人が避難し、そのほとんどが女性や子どもたちである。(ハイチ、2024年1月撮影)

© UNICEF/UNI519099/Joseph
首都ポルトープランスの中心部で激化する暴力により、多くの人が避難を強いられた。2週間のうちに約2,500人が避難し、そのほとんどが女性や子どもたちであった(ハイチ、2024年1月撮影)

ハイチ全土で武装暴力行為が激化し、国内で避難を余儀なくされる子どもが17万人に急増するなど深刻な人道危機が起きました。

ユニセフとパートナーは、家族と離ればなれになった子どもや暴力行為の影響下にある子どもを含め、被害を受けている地域で多方面にわたる支援を行いました。医療ケアや心理社会的支援を提供し、子どもたちが安心して過ごせる空間を確保するなど、命を守る支援を提供しました。

ハイチ情勢激化、首都では2週間足らずで新たに2,500人が退避

 

2024年2月

トルコ・シリア地震から1年

ハタイにある非公式な避難所で生活する子どもたち。(トルコ、2024年1月22日撮影)

© UNICEF/UNI508997/Karacan
ハタイにある非公式な避難所で生活する子どもたち(トルコ、2024年1月22日撮影)

2023年2月6日にトルコとシリアに甚大な被害をもたらした地震から1年、この大災害の影響は今なお続いています。紛争による人道危機下に置かれているシリアの子どもたちにとって、その影響はさらに深刻なものとなっています。

被災直後からユニセフは、安全な水、衛生、保健、心のケアなどの緊急支援を続けてきました。シリアでは、560万人(うち子どもは320万人)の被災者に支援を届けました。トルコでは、政府や市民社会のパートナーと協力して、240万人の子どもを含む470万人の緊急および長期的なニーズに対応してきました。

「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」、つまり地震前よりも良い状況をつくることを目指して、ユニセフは緊急支援から、中長期的な視点を持った早期復興に向けての支援に移行しています。

トルコ・シリア地震から1年、支援を必要とする子どもたち

■関連記事:「トルコ・シリア地震から1年、シリアの子どもは今~」根本巳欧 ユニセフ・シリア事務所副代表 報告

 

2024年3月

シリア危機13年

2年前に栄養不良と診断されたが、ユニセフの支援で治療を受けることができ、回復した3歳のアブドちゃん。長引く紛争や避難生活、貧困により家族は困難な状況にある。(シリア、2024年2月12日撮影)

© UNICEF/UNI532596/Deeb
2年前に栄養不良と診断されたが、ユニセフの支援で治療を受けることができ、回復した3歳のアブドちゃん。長引く紛争や避難生活、貧困により家族は困難な状況にある(シリア、2024年2月12日撮影)

2011年3月に勃発し、13年間続く紛争は、シリアの子どもたちの未来と生活に壊滅的な影響を及ぼし続けています。

度重なる暴力と避難、破滅的な経済危機と極度の貧困、疾病の集団発生、昨年の大規模な地震により、何十万人もの子どもが長期にわたる身体的・心理社会的影響にさらされています。現在も約750万人の子どもが、人道支援を必要としています。

ユニセフは、2024年内に540万人の子どもを含む850万人に必要不可欠なライフラインを提供するために、4億170万米ドルの資金を必要としていると発表しました。最も資金が必要なのは水と衛生・保健・教育分野であり、また子どもの保護は引き続き優先課題です。

 

2024年4月

スーダンでの戦闘激化から1年

アトバラを訪れ、母親と話すユニセフ事務局次長のテッド・チャイバン。(スーダン、2023年7月撮影)

© UNICEF/UNI418608/Mohamed
アトバラを訪れ、家族で避難してきた母親と話すユニセフ事務局次長のテッド・チャイバン(スーダン、2023年7月撮影)

2023年4月15日にスーダンで暴力行為が激化してから1年が経過。危機が深まり続ける中、スーダンの子どもたちの生活、教育、将来が危機にさらされています。

ユニセフ事務局次長のテッド・チャイバンは、「この残忍な戦争と飢きんの可能性は、子どもたちの命が劇的に失われる不吉な状況を作り出しています。重度の急性栄養不良に苦しむ子どものほぼ半数は、戦闘で近づくことが困難な場所に住んでいるため、彼らが置かれている状況はより悲惨です」と述べています。

ユニセフは、最も弱い立場に置かれている子どもや家族に対し、子どもの保護、ジェンダーに基づく暴力、保健、栄養、水と衛生、教育に関する支援や現金給付などの、命を守るために極めて必要なサービスを提供しています。

スーダンでの戦闘激化から1年、重度の栄養不良に苦しむ子どもたち

 

2024年5月

パプアニューギニア 大規模地すべり

衛生用品などを含む、ユニセフの緊急支援物資を受け取る女の子。(パプアニューギニア、2024年5月26日撮影)

© UNICEF/UNI581525/Koka
衛生用品などのユニセフの緊急支援物資を受け取る女の子(パプアニューギニア、2024年5月26日撮影)

パプアニューギニア・エンガ州ラガイプ・ポルゲラ郡ヤンバリ村で、現地時間5月24日午前3時に大規模な地すべりが発生。

道路や通信、水道などの重要な社会インフラも破壊され、被災地へのアクセスが制限されるなど、極めて厳しい状況の下、ユニセフは、バケツや飲料水用ポリタンク、石けん、生理用ナプキンなどを含む衛生キットを即時に配布しました。

被災者の40%以上が16歳未満の子どもたちで、家族や家、生活そのものを失ったことで、心に深い傷を負う可能性がありました。ユニセフは、そうした子どもたちのために、避難所において心のケアなどさまざまな支援を提供しました。

パプアニューギニア 大規模地すべり、被災者の4割は16歳未満の子ども

2024年6月

アフガニスタン、相次ぐ洪水被害

バグラーン州の村で被災した家族。洪水により子どもたちは怪我を負い、飼っていた羊はすべて流されてしまった。(アフガニスタン、2024年5月16日撮影)

© UNICEF/UNI577384/Khayyam
バグラーン州の村で被災した家族。洪水により子どもたちは怪我を負い、飼っていた羊はすべて流されてしまった(アフガニスタン、2024年5月16日撮影)

2024年5月に大規模な洪水が発生したアフガニスタンでは、少なくとも12人の子どもを含む350人近くの命が奪われました。家屋への被害も甚大で、7,800棟以上の家屋が一部損壊または全壊し、5,000世帯以上が住処を失いました。さらに、6月には北部のバグラン州とバダフシャン州、西部のゴール州で、鉄砲水による被害が発生しました。

ユニセフは直ちに安全な水をトラックで運び、石けん、バケツ、飲料水用ポリタンク、歯ブラシなどが入った衛生キットを配布しました。さらに、傷病人の治療ケアのために衛生・栄養分野の巡回チームを派遣し、家財を失った家族のために暖かい衣類や毛布、日用品や調理用品を届けました。

アフガニスタン 大洪水、5,000世帯が家を失う 

2024年8月

ロヒンギャ難民危機7年

コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにある、ユニセフが支援する栄養センターで、重度の急性栄養不良の治療を受ける1歳のリファちゃん。(バングラデシュ、2024年7月16日撮影)

© UNICEF/UNI622137/Njiokiktjien
コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにある、ユニセフが支援する栄養センターで、重度の急性栄養不良の治療を受ける1歳のリファちゃん(バングラデシュ、2024年7月16日撮影)

暴力と迫害から逃れるため、何十万人ものロヒンギャの人々が、ミャンマーから国境を越えて隣国バングラデシュに流入した危機発生から7年。

2017年当時、難民としてバングラデシュにやってきたロヒンギャの人々の数は、それ以前に同国に逃れていたロヒンギャの人々と合わせると、およそ100万人に上りました。7年が経過した現在、約50万人のロヒンギャ難民の子どもたちがこの世界最大の難民キャンプで成長し、その多くはこのキャンプで難民として生まれました。

難民として暮らす人々はすべてを人道支援に頼り、非常に過密な難民キャンプの仮設の避難所で生活しています。ユニセフは、バングラデシュの暫定政権やパートナーとの協力の下、水と衛生設備を設置し、下痢治療センターを設立し、子どもや妊婦のための保健・栄養サービスや質の高い教育へのアクセスを可能にし、暴力や虐待、ネグレクトの影響を受けた子どもたちの保護やサポートを提供しています。

ロヒンギャ難民危機7年: ミャンマーで続く暴力、国内避難民も増加

 

2024年9月

台風11号「ヤギ」が東南アジアに襲来

学用品の詰まったユニセフのスクールバッグを、学校で受け取った子どもたち。ここラオカイ省では、台風11号「ヤギ」による壊滅的な洪水と土砂崩れで甚大な被害を受け、教材や学用品を失った子どもたちも多くいる(ベトナム、2024 年 9 月 29 日撮影)

© UNICEF/UNI655265/Le Lijour
学用品の詰まったユニセフのスクールバッグを、学校で受け取った子どもたち。ここラオカイ省では、台風11号「ヤギ」による壊滅的な洪水と土砂崩れで甚大な被害を受け、教材や学用品を失った子どもたちも多くいる(ベトナム、2024 年 9 月 29 日撮影)

9月初旬、過去数十年間で最大級の勢力を持った台風11号「ヤギ」がフィリピンの東で発生。これによりベトナムやラオス、タイ、ミャンマーなど東南アジア各地で長時間の大雨、洪水、地すべりなど深刻な災害が発生しました。

被災した子どもたちと家族の切実なニーズに応えるため、ユニセフは緊急支援として、安全な水の提供、トイレの設置、保健・栄養などの命を守る物資の提供を展開しました。

この甚大な災害により、東南アジアの130万の子どもが学習の機会を失いました。これを受けてユニセフは、各国政府やパートナーと協力し、損傷した学校の修復を支援し、子どもたちの一刻も早い学びの再開と、心のケアの提供に取り組みました。

台風11号「ヤギ」襲来から1カ月、東南アジアの130万の子どもに学習損失

■関連記事:気候変動は子どもたちの危機

2024年10月

「ガザは子どもにとって地上の地獄そのもの」

ユニセフが支援するクリニックで、高エネルギービスケットを受け取る1歳のラムジーちゃん。(ガザ地区、2024年6月撮影)

© UNICEF/UNI601741/El Baba
ユニセフが支援するクリニックで、高エネルギービスケットを受け取る1歳のラムジーちゃん(ガザ地区、2024年6月撮影)

2023年10月の戦闘の激化から1年。連日の空爆や軍事行動、劣悪な環境での長引く避難生活により、パレスチナ・ガザ地区の子どもたちを取り巻く人道状況は悪化しています。

厳しい状況下でも、ユニセフは子どもたちや家族への支援を続けています。例えば、トイレ5,000基以上を設置し、86万人以上に現金給付を行い、子ども30万人以上に栄養支援を届けました。

またユニセフは他の国連機関とともに、戦争下の極めて困難な状況のなか、9月から11月にかけて、幼い子どもの命を守るポリオワクチンの集団接種を行いました。10歳未満の約56万人が2回の予防接種を受け、2歳から10歳までの子ども44万8,425人がビタミンAの投与を受けました。

ガザ地区のすべての家族が、生活を取り戻し、再建し始められるためには平和が必要です。ユニセフをはじめとする国連諸機関は、長期的で持続可能な停戦を求め続けています。

「ガザは子どもにとって地上の地獄そのもの」ユニセフ広報官、子どもたちの惨状を訴え

■関連記事:ガザでのポリオ集団予防接種 極めて困難な状況下、2回目を完了 94%の10歳未満児に投与

2024年12月

バヌアツ地震 ユニセフ、緊急支援を展開

17日に発生した地震の被災地域にあるヴィラ中央病院に安全な水を供給するため、ユニセフ緊急支援の貯水タンクが運び込まれる様子(バヌアツ、2024年12月19日撮影

© UNICEF/UNI706472/
17日に発生した地震の被災地域にあるヴィラ中央病院に安全な水を供給するため、ユニセフ緊急支援の貯水タンクが運び込まれる様子(バヌアツ、2024年12月19日撮影)

12月17日にバヌアツでマグニチュード7.3の大地震が発生。その後も大きな余震が続いています。人道支援を必要としている子どもは4万人に上るとみられています。

病院を含む多くの建物が深刻な被害を受けたほか、島内各地で地すべりが発生し、空港と主要な港を結ぶ幹線道路や橋も同様の被害を受けていると報告されています。また、通信網もほとんどの地域で不通となっているか、つながりにくい状況です。

「当面の優先事項は、子どもたちとその家族に命をつなぐ支援を届けることです。ユニセフは、現地政府や市民社会をはじめとするさまざまな団体や組織と協力し、対応しています」と、ユニセフ・バヌアツ事務所代表のエリック・ドゥルペールは述べています。

バヌアツ地震 推定4万人の子どもが被災

 

子どもたちのための緊急・人道支援

紛争や自然災害などの緊急事態下において、子どもは常に最も弱い立場に置かれます。こうした子どもたちと家族に命を守る支援を届け続けているユニセフは、来年の目標として、世界146の国と地域で暮らす1億7,200万人(うち1億900万人は子どもたち)に支援を届けることを掲げました。

「子どもたちのための人道支援2025」はこちら

すべての子どもの命を守り、健やかな成長を支えるために、2025年もユニセフは活動を続けてまいります。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

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※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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