2024年12月25日発
2024年、パレスチナ・ガザ地区、スーダン、ウクライナ、シリア、イエメンで戦争・紛争が長期化する一方、ハイチ、レバノン、コンゴ民主共和国でも人道危機が発生し、多くの子どもたちが傷つけられ、時には命さえも奪われました。
また、気候変動の影響で自然災害が激化・頻発しており、アフガニスタンでの大規模な洪水、バングラデシュやインドを襲った大型サイクロン、パプアニューギニアでの地すべり、東南アジアを直撃した台風などにより、世界各地で多くの子どもたちが被災しました。
こうした人道危機の中で、最も弱い立場に置かれるのはいつも子どもたちです。危機のさなかにある子どもたちと家族の命を守るために、ユニセフは世界各地で緊急・人道支援を続けました。
この1年間に起きた様々な危機と、ユニセフによる子どもたちへの支援を振り返ります。
2024年1月
ハイチ情勢激化、子ども17万人超が避難
ハイチ全土で武装暴力行為が激化し、国内で避難を余儀なくされる子どもが17万人に急増するなど深刻な人道危機が起きました。
ユニセフとパートナーは、家族と離ればなれになった子どもや暴力行為の影響下にある子どもを含め、被害を受けている地域で多方面にわたる支援を行いました。医療ケアや心理社会的支援を提供し、子どもたちが安心して過ごせる空間を確保するなど、命を守る支援を提供しました。
2024年2月
トルコ・シリア地震から1年
2023年2月6日にトルコとシリアに甚大な被害をもたらした地震から1年、この大災害の影響は今なお続いています。紛争による人道危機下に置かれているシリアの子どもたちにとって、その影響はさらに深刻なものとなっています。
被災直後からユニセフは、安全な水、衛生、保健、心のケアなどの緊急支援を続けてきました。シリアでは、560万人(うち子どもは320万人)の被災者に支援を届けました。トルコでは、政府や市民社会のパートナーと協力して、240万人の子どもを含む470万人の緊急および長期的なニーズに対応してきました。
「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」、つまり地震前よりも良い状況をつくることを目指して、ユニセフは緊急支援から、中長期的な視点を持った早期復興に向けての支援に移行しています。
■関連記事:「トルコ・シリア地震から1年、シリアの子どもは今~」根本巳欧 ユニセフ・シリア事務所副代表 報告
2024年3月
シリア危機13年
2011年3月に勃発し、13年間続く紛争は、シリアの子どもたちの未来と生活に壊滅的な影響を及ぼし続けています。
度重なる暴力と避難、破滅的な経済危機と極度の貧困、疾病の集団発生、昨年の大規模な地震により、何十万人もの子どもが長期にわたる身体的・心理社会的影響にさらされています。現在も約750万人の子どもが、人道支援を必要としています。
ユニセフは、2024年内に540万人の子どもを含む850万人に必要不可欠なライフラインを提供するために、4億170万米ドルの資金を必要としていると発表しました。最も資金が必要なのは水と衛生・保健・教育分野であり、また子どもの保護は引き続き優先課題です。
2024年4月
スーダンでの戦闘激化から1年
2023年4月15日にスーダンで暴力行為が激化してから1年が経過。危機が深まり続ける中、スーダンの子どもたちの生活、教育、将来が危機にさらされています。
ユニセフ事務局次長のテッド・チャイバンは、「この残忍な戦争と飢きんの可能性は、子どもたちの命が劇的に失われる不吉な状況を作り出しています。重度の急性栄養不良に苦しむ子どものほぼ半数は、戦闘で近づくことが困難な場所に住んでいるため、彼らが置かれている状況はより悲惨です」と述べています。
ユニセフは、最も弱い立場に置かれている子どもや家族に対し、子どもの保護、ジェンダーに基づく暴力、保健、栄養、水と衛生、教育に関する支援や現金給付などの、命を守るために極めて必要なサービスを提供しています。
スーダンでの戦闘激化から1年、重度の栄養不良に苦しむ子どもたち
2024年5月
パプアニューギニア 大規模地すべり
パプアニューギニア・エンガ州ラガイプ・ポルゲラ郡ヤンバリ村で、現地時間5月24日午前3時に大規模な地すべりが発生。
道路や通信、水道などの重要な社会インフラも破壊され、被災地へのアクセスが制限されるなど、極めて厳しい状況の下、ユニセフは、バケツや飲料水用ポリタンク、石けん、生理用ナプキンなどを含む衛生キットを即時に配布しました。
被災者の40%以上が16歳未満の子どもたちで、家族や家、生活そのものを失ったことで、心に深い傷を負う可能性がありました。ユニセフは、そうした子どもたちのために、避難所において心のケアなどさまざまな支援を提供しました。
2024年6月
アフガニスタン、相次ぐ洪水被害
2024年5月に大規模な洪水が発生したアフガニスタンでは、少なくとも12人の子どもを含む350人近くの命が奪われました。家屋への被害も甚大で、7,800棟以上の家屋が一部損壊または全壊し、5,000世帯以上が住処を失いました。さらに、6月には北部のバグラン州とバダフシャン州、西部のゴール州で、鉄砲水による被害が発生しました。
ユニセフは直ちに安全な水をトラックで運び、石けん、バケツ、飲料水用ポリタンク、歯ブラシなどが入った衛生キットを配布しました。さらに、傷病人の治療ケアのために衛生・栄養分野の巡回チームを派遣し、家財を失った家族のために暖かい衣類や毛布、日用品や調理用品を届けました。
2024年8月
ロヒンギャ難民危機7年
暴力と迫害から逃れるため、何十万人ものロヒンギャの人々が、ミャンマーから国境を越えて隣国バングラデシュに流入した危機発生から7年。
2017年当時、難民としてバングラデシュにやってきたロヒンギャの人々の数は、それ以前に同国に逃れていたロヒンギャの人々と合わせると、およそ100万人に上りました。7年が経過した現在、約50万人のロヒンギャ難民の子どもたちがこの世界最大の難民キャンプで成長し、その多くはこのキャンプで難民として生まれました。
難民として暮らす人々はすべてを人道支援に頼り、非常に過密な難民キャンプの仮設の避難所で生活しています。ユニセフは、バングラデシュの暫定政権やパートナーとの協力の下、水と衛生設備を設置し、下痢治療センターを設立し、子どもや妊婦のための保健・栄養サービスや質の高い教育へのアクセスを可能にし、暴力や虐待、ネグレクトの影響を受けた子どもたちの保護やサポートを提供しています。
2024年9月
台風11号「ヤギ」が東南アジアに襲来
9月初旬、過去数十年間で最大級の勢力を持った台風11号「ヤギ」がフィリピンの東で発生。これによりベトナムやラオス、タイ、ミャンマーなど東南アジア各地で長時間の大雨、洪水、地すべりなど深刻な災害が発生しました。
被災した子どもたちと家族の切実なニーズに応えるため、ユニセフは緊急支援として、安全な水の提供、トイレの設置、保健・栄養などの命を守る物資の提供を展開しました。
この甚大な災害により、東南アジアの130万の子どもが学習の機会を失いました。これを受けてユニセフは、各国政府やパートナーと協力し、損傷した学校の修復を支援し、子どもたちの一刻も早い学びの再開と、心のケアの提供に取り組みました。
台風11号「ヤギ」襲来から1カ月、東南アジアの130万の子どもに学習損失
■関連記事:気候変動は子どもたちの危機
2024年10月
「ガザは子どもにとって地上の地獄そのもの」
2023年10月の戦闘の激化から1年。連日の空爆や軍事行動、劣悪な環境での長引く避難生活により、パレスチナ・ガザ地区の子どもたちを取り巻く人道状況は悪化しています。
厳しい状況下でも、ユニセフは子どもたちや家族への支援を続けています。例えば、トイレ5,000基以上を設置し、86万人以上に現金給付を行い、子ども30万人以上に栄養支援を届けました。
またユニセフは他の国連機関とともに、戦争下の極めて困難な状況のなか、9月から11月にかけて、幼い子どもの命を守るポリオワクチンの集団接種を行いました。10歳未満の約56万人が2回の予防接種を受け、2歳から10歳までの子ども44万8,425人がビタミンAの投与を受けました。
ガザ地区のすべての家族が、生活を取り戻し、再建し始められるためには平和が必要です。ユニセフをはじめとする国連諸機関は、長期的で持続可能な停戦を求め続けています。
2024年12月
バヌアツ地震 ユニセフ、緊急支援を展開
12月17日にバヌアツでマグニチュード7.3の大地震が発生。その後も大きな余震が続いています。人道支援を必要としている子どもは4万人に上るとみられています。
病院を含む多くの建物が深刻な被害を受けたほか、島内各地で地すべりが発生し、空港と主要な港を結ぶ幹線道路や橋も同様の被害を受けていると報告されています。また、通信網もほとんどの地域で不通となっているか、つながりにくい状況です。
「当面の優先事項は、子どもたちとその家族に命をつなぐ支援を届けることです。ユニセフは、現地政府や市民社会をはじめとするさまざまな団体や組織と協力し、対応しています」と、ユニセフ・バヌアツ事務所代表のエリック・ドゥルペールは述べています。
子どもたちのための緊急・人道支援
紛争や自然災害などの緊急事態下において、子どもは常に最も弱い立場に置かれます。こうした子どもたちと家族に命を守る支援を届け続けているユニセフは、来年の目標として、世界146の国と地域で暮らす1億7,200万人(うち1億900万人は子どもたち)に支援を届けることを掲げました。
すべての子どもの命を守り、健やかな成長を支えるために、2025年もユニセフは活動を続けてまいります。